あなたの仕事で実践すべきケンタウロス・モデルの例
言葉の名称や意味が浸透してなくても、ケンタウロス・モデルの考え方自体は、実際のビジネス現場に浸透し始めているだろう。
そのため、自身が仕事をする上で「何をAIに任せるべきか?」が重要な論点になる。
そこで、様々な仕事をケンタウロス・モデルに当てはめてみた場合の例を紹介するので、自身の仕事と照らし合わせ、より“知性あふれる仕事をする糧”としてもらいたい。
ケース1:企画・マーケティング職の場合
●AIの役割:
・市場の膨大なデータを分析してターゲット顧客のペルソナを作成する。ChatGPTに特定の役割を与えてペルソナ案を生成し、SEO/SEMツールなどで競合分析
・そのペルソナに向け広告コピーのA/Bテスト案を数十パターン生成するJasperやCopy.ai、Microsoft 365 Copilot in Excel/Wordが使える
・キャンペーン用のブログ記事やSNS投稿のドラフトを作成する。ChatGPTに広告コピー案をINPUTし、必要な文書の構成案を伝える
●人間の役割:
・AIの分析結果から本質的なインサイトを読み解き、ブランド全体の戦略を策定する
・生成されたコピーに、情緒的な価値や企業理念を書き込み、血の通った文書とし、最終的なキャンペーンを決定する
・複数の顧客チャネルを横断する全体最適なマーケティングプランを設計する。
ケース2:デザイナーや開発者の場合
●AIの役割:
・デザインのコンセプト案やムードボード用の画像を複数提示する。Midjourney, Stable Diffusion, DALL-E 3,nano Banana,Adobe Fireflyなど
・Webサイトなどのコーディングを補助させ、デバッグ作業を自動化するGitHub Copilot, Amazon CodeWhispererなどでコーディングが効率化できる。
UIデザインのプロトタイプ作成やコンポーネント生成を補助する。Figma AI,Uizard, Galileo AIなど
●人間の役割:
・プロジェクト全体のビジョンを定義し、AIが生成したパーツを取捨選択したり改良したりして、最終的なクリエイティブ(アウトプット)を完成させる
・ユーザー体験(UX)の核心部分を設計し、プロダクトに一貫性のある世界観や企業理念やプロジェクトの魂を込める
・コードの全体的なアーキテクチャを設計し、セキュリティや保守性を担保する
ケース3:ガバナンス・リスクマネジメント職の場合
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●AIの役割:
・膨大な国内外の法規制、判例、社内規定のデータベースを常に監視し、自社に関連する変更点を即座にアラートさせる。規制変更をモニタリングする専門サービス、ChatGPTやClaudeに特定のドキュメント群を読み込ませて要約・分析する
・契約書や利用規約をスキャンし、LegalForceやGVA assistなどのリーガルテックツール潜在的なリスク箇所や不利な条項を瞬時に色付けする。
・膨大な取引データやアクセスログを分析し、不正会計やサイバー攻撃の予兆といった異常パターンをリアルタイムで検知する。
●人間の役割:
・AIが「リスクの可能性」として提示した項目に対し、ビジネスの文脈、企業倫理、社会通念に照らして、その重要性と影響度を最終的に判断する。
・AIの分析結果に基づき、全社的なコンプライアンス体制や情報セキュリティポリシーを策定・改善する。
・グレーゾーンな事案や前例のない問題に対して、法的解釈を行い、経営陣や関連部門に対して具体的な対応策を提言する。監督官庁や監査法人との高度なコミュニケーションを担う。
AIは「脅威」ではなく、知性を拡張する「相棒」である
「AIに仕事を奪われるか」という問い自体が、もはや時代遅れなのかもしれない。いま考えるべきは「人間とAIの協業で、いかにして新たな価値を創造するか」である。
ケンタウロス・モデルは、AI時代における人間中心の働き方を示す羅針盤となる。
AIを恐れるのではなく、自らの知性と能力を拡張するための最強の「相棒」として受け入れ、乗りこなす覚悟を持つこと。それこそが、これからのビジネスパーソンに求められる姿なのである。