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AIに仕事を奪われてしまうのか?一石を投じる「ケンタウロス・モデル」とは

2025.09.24
久我 吉史 (リスマネ部長 & 複業記者)

すでにAIを仕事の一部に組み込んでいる方は多いと思うが、実際にはどれほど〝使いこなせている〟だろう?

AIを単なるITツールとして使うのではなく、人間の思考・判断プロセスに組み込むことで、人間単独でも、AI単独でも到達できない品質にたどり着く「ケンタウロス・モデル」という考え方がある。

本記事では、「ケンタウロス・モデル」を活用することでAI時代を生き抜く、ビジネスパーソンに必要なスキルやマインドセットを解説しよう。

「ケンタウロス」の起源は、チェスの世界王者が見出した希望

いまから約20年前の1997年に、チェスの世界王者ガルリ・カスパロフ氏が、IBMのスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」に敗北した。AIが持つ圧倒的な計算能力に、最高知性を持つ人類が敗れたため、AIを脅威に感じる源流となった。

しかし、カスパロフ氏は、自身の著書「Deep Thinking」で述べているように、この敗北から新たな希望を見出した。それが「人間とAIとがタッグを組む『アドバンスト・チェス』という競技を提唱した。

その競技大会では、AI単独チームやトップクラスな人間のチェスプレイヤーを抑え、「一般的な人間のプレイヤー+一般的なPC」のチームが優勝する結果となった。

また、カスパロフ氏は、世界各国の知識人・著名人が講演するTEDトークで“弱い人間+マシン +良いプロセス は、強力な人間+マシン+劣ったプロセスよりも優れている”と述べ、AIの圧倒的な計算力と、人間の直感や大局観、戦略性を組み合わせることが、最強の知性を生み出すことが事実として分かった。

これがケンタウロス・モデルの考え方の基礎となっている。

人間とAIとの最適な役割分担とは?

ギリシャ神話に出てくる半人半馬の賢者「ケンタウロス」がモデル名の由来だ。

AIが持つ計算能力のスピードやパワーを馬に見立て、また、知性を持って戦略を考え判断を行なう人間を人に見立てているイメージである。

人馬のそれぞれが、得意領域を理解し、仕事を最適に分担することが、成功のカギとなる。

■AIの得意領域(馬の部分)

(1)データ処理・分析:大量の情報から人間では見過ごすようなパターンや相関関係を発見する。
(2)作業の自動化・高速化:議事録作成、翻訳、データ入力といったルーティンワークを瞬時に実行する。
(3)選択肢の生成:アイデアのドラフト版やデザインの案、文章の草稿などを大量に提案する。

■人間の得意領域(人の部分)

(1)目標設定・戦略立案:「何を達成すべきか」という、ビジネスやプロジェクトの大局的なゴールを設定する。
(2)ロジカルシンキング(創造性や批判的思考):AIの提案を評価し、仕事内容やブランドのイメージに照らした選択をし、独創的なアイデアを加えたりもする。
(3)共感・コミュニケーション:顧客やチームメンバーの感情や、暗黙の文脈を理解し、複雑な交渉や信頼関係を構築する
(4)倫理的判断・最終責任:複数の選択肢から最終的な意思決定をし、その結果に責任を負う。

「ケンタウロス・モデル」実践のために、何ができるのか?

AIを乗りこなす騎手であるビジネスパーソンには、これまでとは違うスキルセットが求められている。

世界経済フォーラムの「仕事未来レポート」によれば、“2030年までに最も需要が高まるスキルには、認知スキルやコラボレーションなどの「ヒューマン・スキル」に加え、テクノロジーに対応可能なテクノロジー・スキル”だという。

つまり、人間が持つ高次の認知能力の重要性が増しているといえる。当然、AIはITソリューションの一部としての側面もあるので、そのスキルも高めねばなるまい。

(1) AIを使いこなす質問力・指示力

AIから質の高いアウトプットを引き出すための「プロンプトエンジニアリング」のスキルが不可欠となる。曖昧な指示ではなく、「何を知りたいのか」「どのような制約条件があるのか」を明確に言語化し、的確な問いを立てる能力が求められる。

(2) AIの出力結果を鵜呑みにしない批判的思考力

AIは、時に誤った情報(ハルシネーション)や偏った見解を出力してしまう。その内容を鵜呑みにせず、自らの知識や複数の情報源と照らし合わせて検証し、真偽を見抜くリテラシーがこれまで以上に重要になる。また、最終判断の責任は常に人間にあり、人間中心の思想「Human in the Loop」はマストである。

(3) 専門性と創造性

AIは膨大な既存データの組み合わせでしか思考できない。自身の専門分野における深い知見や経験、そして複数の領域を横断するような独創的な発想は、人間でしか作れない付加価値になる。AIを使いこなす土台として、自らの専門性を磨き続ける努力が求められる。

リスマネ部長 & 複業記者
久我 吉史
金融・IT・ビジネス系の記者歴20年超で、現役のビジネスパーソンでもある”複業”記者です。最近のキャリアでは、持株会社での子会社リスク管理や投資M&A関連のリスク管理を行なうリスマネ部長を務めてます。  過去の金融機関や事業会社でのIT企画・経営企画の経験も活かし、”現役”品質と”部下に読んでほしい視点”を大切にした記事制作を心がけています。もちろん最近注目しているのはAI関連のリスクです。

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