
生成AIの登場など、大きな変革期を迎えているIT業界。そんな中、ITフリーランス人材の需要にはどのような変化が生じているのか?
エン・ジャパンが運営するフリーランスエンジニア向け案件検索エンジン『フリーランススタート』はこのほど、ITフリーランスとして働く個人515人、およびITフリーランス人材を活用する企業515社を対象に「ITフリーランスに関する実態調査」を実施し、その結果を発表した。
ITフリーランスの動向(図1~7)
【図1】ITフリーランス業界の市場規模と人材動向
令和4年就業構造基本調査(※)に基づくフリーランス人口データ(図2)に、独自に算出した平均報酬額や成長シナリオを掛け合わせることで、ITフリーランス市場規模を推計した。その結果、2025年の市場規模は1兆1,849億円に達すると予測しており、2015年(7,199億円)と比べ約1.6倍に拡大すると想定している。
この10年間は、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進や、SaaS企業をはじめとする新興IT企業の台頭がIT人材への高い需要を牽引していた。特に2023年頃までは、新型コロナウイルス感染症の影響によるリモートワーク体制の急速な整備も相まって、企業のDX 対応が加速し、フリーランスとして活動するIT人材は着実に拡大してきた。
しかし近年、ITエンジニアを取り巻く環境には新たな変化の兆しが見られる。米国のMicrosoft やSalesforceといったグローバルリーダー企業でのエンジニア人員のレイオフや採用停止の動きが見られる一方で、創業わずか3年で企業価値が1.4兆円を超えるCursorやDevinのような開発支援AIの台頭が著しい状況。これらの変化は、求められるIT人材の定義が再構築されつつあることを示唆している。
IT人材活用の再定義が進む中で、高度なスキルを持つデジタル人材のフリーランス化は一層加速すると考えられる。自身のスキルを最大限に活かせる活躍の場を自己選択する動きが強まる結果、デジタル人材におけるフリーランス比率は2030年には15.3%を超え、市場規模は1兆3,619億円に到達すると予測している。 (エン・ジャパン独自試算)
【図2】ITフリーランスの人口予測
令和4年就業構造基本調査(※)に基づくフリーランス人口データに、独自に算出した成長シナリオを掛け合わせることで、ITフリーランスの人口を推計した。その結果、2025年のITフリーランスの人口は16万1,873人に達すると予測しており、2015年(9万9,985人)と比べ約1.6倍に拡大すると想定している。(当社独自試算)
【図3】ITフリーランスの主な職種
自身の職種について聞いた。上位5職種を見ると、最多は「システムエンジニア(SE)」(25.2%)で、以下「Webディレクター」(12.4%)、「プログラマー」(12.2%)が続いた。
【図4】案件獲得の手法(複数回答可/上位5つのみ抜粋)
案件獲得の手段として「知人紹介」(45.6%)がトップとなり、個人のネットワークや信頼関係が依然として重要であることがうかがえる。以下「ご自身での営業活動」(26.6%)、フリーランスエージェント(23.5%)が続き、人脈や個人の営業努力に加え、専門の仲介サービスも案件獲得において重要なチャネルとなっていることがわかる。
【図5】収入の増減
収入の変化について聞いた。フリーランスエンジニアとして働き始める以前と比較して「変化なし」と回答した人は56.5%と半数以上を占めた。一方で、31.5%が「増加した」と回答しており、収入アップを実現している層も一定数存在することが明らかになった。
【図6】就業先・案件を選ぶ際の基準(複数回答可/上位5つのみ抜粋)
就業先や案件を選ぶ際の基準で最も重視されているのは、「報酬が良い」(45.2%)となった。以下「人間関係のストレスがない」(31.8%)、「自らの知見やスキルを発揮できる」(24.9%)が続き、収入面だけでなく、良好な職場環境や自身のスキルを最大限に活かせる案件であるかどうかも、フリーランスが就業先を選択する上で重要な要素であることがわかる。
【図7】フリーランスを選んだ理由(複数回答可/上位5つのみ抜粋)
フリーランスを選んだ理由として最も多い回答は「希望の時間帯で仕事をしたいため」(44.9%)となった。以下「希望の場所で仕事をしたいため」(34.4%)、「希望の仕事量で仕事をしたいため」(32.8%)が続き、柔軟な働き方を求めてフリーランスを選択する人が多数いることがわかった。「収入を増やすため」も26.2%と回答が寄せられ、収入向上もフリーランスを選択する重要な動機の一つであることがうかがえる。
2:ITフリーランスを活用する企業の動向(図8~11)
【図8】ITフリーランス人材の活用状況
企業の約6割が「今後、活用を増やしたい」(59.8%)と回答。ITフリーランス人材の活用に対する企業の高い意欲がうかがえた。
【図9】ITフリーランス人材の活用満足度
ITフリーランス人材の活用満足度については77.1%が「満足している」と回答した(満足している:30.3%、やや満足している:46.8%)。
【図10】ITフリーランスの活用目的(複数回答可/上位5つのみ抜粋)
ITフリーランスの活用目的の最多は「特定の開発スキルを持ったエンジニアが見つかったため」(52.0%)となった。以下「特定の業界経験を持ったエンジニアが見つかったため」(37.5%)、「正社員での採用がうまくいかないため」(33.2%)が続き、専門性の高い人材の確保や、正社員採用の難しさが、企業がITフリーランスを活用する上での推進要因となっていると推察される。
【図11】採用・活用・発注しているITフリーランスの職種(複数回答可/上位5つのみ抜粋)
企業が採用・活用・発注しているITフリーランスの具体的な職種として、最も多いのは「クラウドエンジニア」(41.2%)となった。「エンジニアリングマネージャー」(39.6%)、「ITコンサルタント(34.8%)、「システムエンジニア(SE)」(34.4%)、「PdM(プロダクトマネージャー)」(33.8%)が続き、幅広い職種でITフリーランスが活用されていることが明らかになった。
3:ITフリーランスエージェントの動向(図12)
【図12】ITフリーランスエージェント 市場規模予測
令和4年就業構造基本調査(※)に基づくフリーランス人口データに、独自に算出したITフリーランスエージェント利用率、平均受注額、成長シナリオを掛け合わせることで、ITフリーランスエージェントの市場規模を推計した。ITフリーランスと企業を仲介するフリーランスエージェント事業を行なう企業数は増加傾向にあり、企業の豊富なIT人材需要と IT人材のフリーランス化を希望する人材の増加に伴い、市場は着実に拡大していると推察している。
2015年には787億円だった市場規模は、2025年には3,063億円(成長率389.1%)に到達すると推測している。さらに、2030年には4,579億円の市場規模となると予測されており、今後もITフリーランス人材におけるフリーランスエージェントの役割はますます拡大していくと見込まれる。(エン・ジャパン独自試算)
<調査概要>
1.ITフリーランスの動向
■調査期間:2025年6月12日~6月14日
■調査方法:マクロミル社によるネットリサーチ
■有効回答数:515名
■調査対象:ITエンジニアのフリーランサー ※(1)(2)を同時に満たす方
(1)フリーランス・個人事業主・自営業で働いている方
(2)職種が以下のいずれかで働いている方
PdM(プロダクトマネージャー)/エンジニアリングマネージャー/VPoE/クラウドエンジニア/バックエンドエンジニア/アプリエンジニア/CRE(Customer Reliability Engineer) /SRE/ITコンサルタント/ネットワークエンジニア/iOSエンジニア/データサイエンティスト/汎用機エンジニア/フロントエンドエンジニア/AIエンジニア(人工知能) /PM(プロジェクトマネージャー)/インフラエンジニア/機械学習エンジニア/Android エンジニア/PMO/サーバーエンジニア/ブロックチェーンエンジニア/社内SE/Webディレクター/データベースエンジニア/テスター・デバッガー・QA/セキュリティエンジニア/テクニカルサポート/プログラマー/システムエンジニア(SE)
2.ITフリーランスを活用する企業動向
■調査期間:2025年6月12日~6月14日
■調査方法:マクロミル社によるネットリサーチ
■有効回答数:515名
■調査対象:ITフリーランスを活用している企業に所属し、ITフリーランス活用の採用・導入・判断意思決定者
出典元:フリーランスエンジニア向け案件検索エンジン『フリーランススタート』
構成/こじへい