
市場の変化が加速し、競争が激化する一方で、経済と賃金の長期的な停滞が続く近年は、まさに「不確実性の時代」といえる。
一方、部署や部門、チームの成果を創出し続けることが求められる管理職に対して、報酬と負担が見合わないと感じる人は少なくない。
そこでALL DIFFERENT(オールディファレント)およびラーニングイノベーション総合研究所は、どんな管理職が、どんなことについて「管理職になって良かった」と感じているのか調査すべく5月20日~7月17日の期間で、管理職531名を対象に「管理職意識調査」を行った。
管理職になって良かったこと、1位は「意思決定に関与できるようになった」で半数以上
課長クラス以上の管理職(以下「管理職」と記載)に対し、管理職になって良かったと感じることについて質問したところ、最も割合が高かったのは「意思決定に関与できるようになった」(51.5%)であった。
次いで「仕事の裁量が増えた」(48.2%)、「収入が増えた」(46.8%)が続き、報酬面のメリットよりも、仕事の役割や幅が広がったことに対して喜びを感じる管理職が多い結果に。
「部下の成長や成功を喜べるようになった」が42.0%、「経営視点が養われた」が41.2%と、管理職ならではの視野の広がりや視座の高まりにやりがいを感じている人も一定数いた。
また、「良かったと感じることはない」と回答した人は5.0%で、95.0%が「なって良かった」と感じていることも判明。
男女別、管理職になって良かったことのトップ、男性は「意思決定に関与」、女性は「収入の増加」
管理職になって良かったことを男女で比較したところ、回答傾向に差があることがわかった。
男性の上位回答は、回答割合が高い順に、「意思決定に関与できるようになった」(53.2%)、「仕事の裁量が増えた」(49.5%)、「収入が増えた」(45.1%)。
女性は、「収入が増えた」(55.9%)、「意思決定に関与できるようになった」(44.1%)、「仕事の裁量が増えた」「部下の成長や成功を喜べるようになった」(ともに42.4%)であった。
男女で最も差が大きくなった項目は「新しい挑戦の機会を得られた」で、女性39.0%、男性26.3%で、女性が12.7ポイント高い結果に。また、「収入が増えた」も女性が10.8ポイント高くなっている。
男性の回答割合の高さが目立った項目は、「チームを先導できるようになった」で、女性の23.7%に対し男性は10.0ポイント高い33.7%。
また、「意思決定に関与できるようになった」は9.1ポイント、「仕事の裁量が増えた」は7.1ポイント、男性の回答割合がそれぞれ高くなっていた。
ステージ別、管理職になって良かったこと、全ステージ通じて「意思決定に関与」が上位
続いて、管理職になって良かったことについて、経験年数や役職などのステージごとに違いがあるのか調べた。
調査対象の管理職のうち、1~3年目の課長クラスを「新任管理職」、4年目以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と3つのステージに分類し、回答結果を比較。
新任管理職:1~3年目の課長クラス
ベテラン管理職:4年目以上の課長クラス
幹部候補:部長クラス
結果、新任管理職では「収入が増えた」(50.7%)が最も高く、半数以上が回答。2位は「意思決定に関与できるようになった」で44.9%、3位は「仕事の裁量が増えた」で42.6%であった。
ベテラン管理職は、「意思決定に関与できるようになった」が最高の52.0%。「仕事の裁量が増えた」が45.5%、「収入が増えた」が44.7%と続いた。
幹部候補は、「意思決定に関与できるようになった」が最も高く、60.2%。続いて、「仕事の裁量が増えた」が59.2%、「経営視点が養われた」「部下の成長や成功を喜べるようになった」がともに56.1%という結果に。
全ステージで「意思決定に関与できるようになった」が上位となり、幹部候補は6割を超えた。幹部候補は「経営視点が養われた」「仕事の裁量が増えた」「部下の成長や成功を喜べるようになった」の項目でも、新任・ベテランより10ポイント以上高い結果となっている。
業務内容別、なって良かったことの回答割合、「プレーヤー業務寄り」に比べて、「マネジメント業務寄り」が高い傾向
さらに、担う業務内容によって「管理職になって良かったこと」に違いがあるのかを調査。
業務内容がマネジメント業務よりプレーヤー業務の割合が多い管理職を「プレーヤー業務寄り」、プレーヤー業務とマネジメント業務の割合が約半分の管理職を「中間タイプ」、プレーヤー業務よりマネジメント業務の割合が多い管理職を「マネジメント業務寄り」と分類し、それぞれの回答結果を比較した。
マネジメント業務寄り:プレーヤー業務の割合0~30%台*、マネジメント業務の割合が多いタイプ
中間タイプ:プレーヤー業務の割合40~60%台*、プレーヤー業務とマネジメント業務の割合が約半分のタイプ
プレーヤー業務寄り:プレーヤー業務割合70~100%*、プレーヤー業務の割合が多いタイプ
*「マネジメント業務とプレーヤー業務のうち、プレーヤー業務に費やしている、ご自身の時間の割合はどの程度ですか」という質問に対し、全てプレーヤー業務を100%、全てマネジメント業務を0%とし、10段階で回答。
プレーヤー業務寄りの「管理職になって良かったこと」のトップは「収入が増えた」(46.3%)。続いて、「意思決定に関与できるようになった」(45.7%)、「仕事の裁量が増えた」(42.9%)であった。
中間タイプは「意思決定に関与できるようになった」が最も高く、56.8%。「収入が増えた」(46.6%)、「チームを先導できるようになった」(45.5%)が続いた。
マネジメント業務寄りは、「仕事の裁量が増えた」が63.8%で最高。次いで、「意思決定に関与できるようになった」(57.4%)、「部下の成長や成功を喜べるようになった」「経営視点が養われた」(ともに54.3%)であった。
ほとんどの項目で、プレーヤー業務寄りの管理職よりもマネジメント業務寄りの管理職の方が、回答割合が高い結果に。
まとめ
近年では負担とやりがいが見合わないと思われがちな管理職だが、本調査の結果から、実際は様々な面で「なってよかった」と感じている管理職が多いことがわかった。
その理由について、管理職全体で最も回答割合が高かったのは「意思決定への関与」、2位が「裁量の拡大」、3位が「収入の増加」という結果に。
このことから、報酬面よりも自己決定権や影響力の高まりにやりがいを見いだす管理職が多いと推察される。さらに男女別、ステージ別、業務内容別といった切り口から比較したところ、それぞれ回答傾向が異なることがわかった。
男女別では、男性は「意思決定への関与」、女性は「収入の増加」がそれぞれ1位に。ステージ別では、新任管理職は「収入の増加」がトップで半数以上が回答。
ベテラン管理職と幹部候補はともに「意思決定への関与」が最高。新任管理職で半数以下だった「意思決定への関与」は、幹部候補では6割以上であった。
業務内容別では、プレーヤー業務寄りタイプは「収入の増加」がトップ、マネジメント業務寄りタイプは「裁量の拡大」がトップであった。
大半の項目でマネジメント業務寄りの回答割合が、プレーヤー業務寄りの回答割合より高い結果となり、マネジメント業務寄りの管理職の方がやりがいを強く感じている様子がうかがえる。
近年、負担の大きさに注目が集まることの多い管理職だが、本調査の結果から実際は多様なやりがいを感じており、担う業務内容などによって、やりがいをさらに高められる可能性が示唆された。
調査概要
ラーニングイノベーション総合研究所「管理職意識調査(管理職のやりがい編)」
調査対象者:ラーニングイノベーション総合研究所が提供する管理職向け研修の受講者
調査時期:2025年5月20日~7月17日
調査方法:Web・マークシート記入式でのアンケート調査
サンプル数:531名
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としている
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がある
関連情報
https://www.all-different.co.jp/topics/20250916
構成/Ara