
自動運転レベル3は、特定の条件下でシステムが運転を担う技術です。ホンダ「レジェンド」、メルセデス・ベンツ「Sクラス/EQS」、BMW「7シリーズ」へすでに搭載されています。今後、より多くの車種への展開が期待されています。
目次
「運転はクルマに任せて移動できたら……」。
そんな夢のような話が、一部のクルマではすでに現実となっています。
一定条件下なら公道でもシステムが運転を担う「自動運転レベル3」とは、いったいどんな車種に搭載されているのでしょうか?
主要車種と現状をQ&A形式でわかりやすくご紹介します。
自動運転レベル3の車種を紹介
それでは、自動運転レベル3を実現した、ホンダ、メルセデス・ベンツ、BMWの車種を、Q&A形式でわかりやすくご紹介しましょう。
■Q.ホンダ「レジェンド」が世界初って本当?
A.はい、本当です。
ホンダの「レジェンド」は、2021年3月に世界で初めて自動運転レベル3に対応し、100台限定、1100万円でリース販売されました。レジェンドは2022年1月に販売終了しています。

搭載された技術は「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート」と名付けられ、特に「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」は国土交通省から自動運行装置として型式指定を取得した自動運転レベル3(条件付自動運転車・限定領域)に適合する先進技術です。

ホンダ「レジェンド Hybrid EX」のHonda SENSING Elite フロント周り

ホンダ「レジェンド Hybrid EX」のHonda SENSING Elite リヤ周り
高速道路渋滞時など一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となりました。
現在は販売を終了していますが、今後のホンダ車への搭載認証に期待しましょう。
【参考】Honda SENSING Elite 搭載 新型「LEGEND」を発売
■Q.メルセデス・ベンツの「Sクラス」とBEVの「EQS」に搭載されたドライブパイロットとは?
A.2023年1月、アメリカで初の自動運転レベル3(SAE基準)を実現したのがメルセデス・ベンツです。

ドライブパイロットは、起動前に白色に点滅してシステムの可用性が表示される
同社のシステム「ドライブパイロット(DRIVE PILOT)」は、2023年モデルのフラッグシップセダン「Sクラス」と2023年モデルの電気自動車(BEV)の「EQS」に搭載されました。

「Sクラス」

「EQS」
LiDAR(ライダー)を含む多数のセンサーと独自のシステムにより、高い安全性を確保しています。

ラジエーターグリルに設置されたLiDAR
【参考】メルセデス・ベンツ、米国市場向けにSAEレベル3システムを認証した世界初の自動車会社
■Q.BMW「7シリーズ」はどう?
A.メルセデス・ベンツに続き、2023年11月にドイツ・ミュンヘンにてレベル3(SAE)の技術承認を受けたのが、BMWです。
BMWも「7シリーズ」(一部車種を除く)に自動運転レベル3機能「BMWパーソナル・パイロット L3(BMW Personal Pilot L3)」をドイツ国内向けでオプション設定しました。

ドイツ限定での提供ですが、時速60kmまでの走行時に利用できます。

オプションのパーソナルパイロット搭載車に高感度3Dライダーセンサーを搭載

レベル3の自動運転が利用可能な場合は、ステアリングホイール裏のディスプレイにシンボルを表示
【参考】レベル3の高度自動運転は来春から新型BMW 7シリーズで利用可能になる。
■Q.レベル4以上の車種ってあるの?
A.公道でのレベル4以上の自動運転機能を搭載した市販車は、まだ存在しません。
しかし、レベル4は特定の条件下であればシステムが完全に運転を担い、ドライバーの監視が不要になるため、次世代の自動運転技術として世界中で研究・開発が進められています。
日本でも、トヨタや日産、ホンダなどが公共交通や無人タクシーサービスを含めた実用化を目指しており、特定のエリアでのサービスや実証実験を重ねています。
また、ドイツやアメリカ、中国でも活発な開発が進んでいます。
改めて確認。自動運転レベル3って何?
レベル3の車種をご紹介しましたが、改めて自動運転レベル3とはどのようなことでしょうか? 確認してみましょう。
【参考】自動運転車両の呼称|国土交通省
ついに日本で走り出す! 自動運転“レベル3”の車が走行可能に|政府広報オンライン
■Q.自動運転レベル1〜5ってどういう基準?
A.自動運転レベルは、米国自動車技術会(SAE)が定めた国際的な6段階の指標です。
レベル1
アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを、部分的かつ持続的に自動化した状態です。自動運転ではなく、あくまでシステムは運転を「支援」する役割です。
レベル2(運転支援車)
アクセル・ブレーキ操作とハンドル操作の両方を、部分的かつ持続的に自動化した状態です。レベル2も自動運転ではなく運転支援で、運転の主体は常に運転者です。
レベル3(以下、自動運転車)
ODD(運行設計領域/限定領域)と呼ばれる、決められた走行場所などで、すべての運転操作を自動化した状態になります。
ただし、自動運転システム作動中も、運転者はただちに運転操作を代われる状態でなければいけません。
自動運行装置が運転操作の全てを代替する状態となるため、このレベル3から「自動運転車」と呼べます。
レベル3の車両は「条件付自動運転車(限定領域)」という名称になります。
レベル4
決められた走行環境条件を満たす限定された場所で、自動運行装置が運転操作の全部を代替します。
運転操作の主体は自動運行装置となり、レベル4の車両は「自動運転車(限定領域)」という名称になります。
レベル5
自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態になります。
運転操作の主体は自動運行装置となり、レベル5の車両は「完全自動運転車」という名称になります。
■Q.自動運転レベル3対応の特徴と機能を教えて
A.レベル3の最大の特徴は、システムが運転の主体となる点です。
しかし、システムが正常に作動しないおそれがある場合、運転者に運転操作を促す警報が発せられます。
この際、運転者はすぐに運転操作を引き継ぐ準備ができている状態でなくてはならず、適切に応答しなければなりません。
したがって、レベル3は完全にドライバーが不要になるわけではなく、「条件付き」で自動運転が実現されるものです。
自動運転レベル3の市場化に向けて、国土交通省は道路運送車両法の一部を改正。2020年4月1日より改正法(令和元年法律第14号)を施行しています。
【まとめ】
自動運転レベル3は、システムが運転の主体となり、一定の条件下でドライバーに代わって運転操作を行う画期的な技術です。
例えば、渋滞時などはハンドルから手を離しての自動運転が可能になります。
日本初のホンダ「レジェンド」、米国での認証を初めて取得したメルセデス・ベンツ「Sクラス」と「EQS」、そしてドイツで提供が始まったBMW「7シリーズ」らが、この先進技術の市販車採用を牽引しています。
しかし、システムが正常に作動しない場合は、ドライバーが即座に運転を引き継ぐ必要があります。
現在は高級車が中心ですが、今後はより多くの車種にこの技術が広がり、レベル4やレベル5の市販車の登場へとつながることに期待しましょう。
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文/中馬幹弘
ガジェット・MONO・マネー編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカンカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任。iPhone、iPad登場時よりスマホ実務に携わる