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7月の免税店売上が4割減の衝撃…インバウンド消費の風向きを変えた3つの要因

2025.09.12

インバウンド消費が曲がり角にさしかかっています。

日本百貨店協会が8月25日に発表した、2025年7月の免税総売上は前年同月比36.3%減の403億4000万円でした。一般物品売上高は40.1%、化粧品や食料品などの消耗品売上高は10.4%それぞれ減少しています。

海外の観光客数は増加する一方で、ラグジュアリーブランドなどの高級品の消費減退が鮮明になっています。

インバウンドの総消費額はおよそ2割も増加したが…

髙島屋の8月のインバウンド顧客は高額品がマイナスとなった影響が大きく、前年実績を下回りました。グループで大丸を運営するJ.フロント リテイリングも8月の免税売上はラグジュアリーブランドを含む一般品が前年実績を下回って客単価は低下しています。

観光庁がまとめた「インバウンド消費動向調査」によると、2025年4-6月の「買物代」は6623億円で、0.2%の伸びに留まりました。海外観光客の総消費額は2兆5250億円で18.0%増加しているにも関わらずです(いずれも前年同期比)。

宿泊費や飲食費は旺盛に伸びている一方、買物代のみが停滞しています。

高級品の売れ行きが低迷している要因は3つあると考えられます。1つ目は為替の影響。2つ目は世界的な景気の低迷。3つはモノ消費からコト消費へのシフトです。

2024年は円安が進行した年でした。6月のドル円相場は26日に37年半ぶりの一時160円台後半まで下落しました。

現在のドル円相場は148円台で推移しており、その差は7.5%。100万円の値段がついた商品を買うのに、160円であれば6250ドルで購入できますが、148円では6757ドルとなり、500ドル以上も多く支払うことになります。高額な商品であればあるほど、為替の影響は大きくなり、円高の進行とともに購買意欲が減退してしまうのです。

インバウンド消費の国別比率で最も高いのは中国で、全体の2割を占めています。中国では2024年ごろから、為替による価格差に注目が集まり、観光客による代理購入や転売が横行するようになっていました。昨年は百貨店の高級ブランドショップに多くの中国人観光客が押し掛けている姿をよく目にしました。

しかし、円高が進行すると旨味が失われます。2024年と2025年で、ドル円相場は1割近い差が生じました。特に転売勢にとって投資妙味が失われたのは間違いありません。

ルイ・ヴィトンの売上は1割減少

高級ブランドのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのステファン・ビアンキ副最高経営責任者は2025年5月28日の会見で、中国人顧客の支出が鈍化していることに懸念を示していました。LVMHの2025年1-3月の中国を含むエリアの売上高は11%減少。実は2024年通期も同程度減少していました。

中国の不動産市場は2021年をピークに悪化。2024年1月に不動産大手の中国恒大集団が香港の裁判所から精算命令を受けたことは、不況が深刻化していることを決定的に示すものでした。負債総額は50兆円にものぼると言われています。

景気の低迷、そしてコロナ禍からのリベンジ消費が一巡したことで、消費者は高級品の購入を控えるようになりました。中国における2025年7月の小売売上高は3.7%の増加で、6月から1.1ポイント鈍化しました。内需の低迷が鮮明になっています。

さらにトランプ関税の影響で、輸出産業も打撃を受けました。中国の消費マインドは冷え込んでいるのです。

日本におけるインバウンド消費の比率が14.1%で、中国に次ぐ2位のアメリカも綱渡りが続いています。

アメリカはAIの台頭によってテック系企業を中心に大量のレイオフが発生しました。2022年以降、3年間で40万人近くがレイオフされ、2025年も5月までで5万7000人以上が職を失ったと言われています。

また、2025年はイーロン・マスク氏の米政府効率化省(DOGE)が、連邦政府職員の大量解雇を進め、その影響でレストランの客離れが進行。周辺の飲食店の4割が廃業危機に陥るなど、深刻な事態となりました。

ただし、アメリカの消費動向は二極化しており、高級ブランドは強気の値上げで収益性を高めてきました。

しかし、それもトランプ関税によって先行きが見通せなくなりました。2025年に入り、シャネルはアメリカで70人を削減することを発表しています。

アメリカの消費マインドが悪化している兆候はないものの、雲行きが怪しくなっているのです。

富士登山を希望する観光客増もコト消費が主流になったことを示す証拠

そして海外観光客は経験を重視するようにもなっています。観光庁の「インバウンド消費動向調査」によれば、支出項目の2025年4-6月の「娯楽等サービス費」は1025億円で、24.2%増加しています。

2025年から富士山の登山者1人に対する入山料の値上げを行い、夜間の登山規制も行われるようになりました。こうした動きの背景にあったのが、富士山のオーバーツーリズムでした。特に外国人登山者が急増しており、知識不足の危険行為やマナー違反が目立つようになっていたのです。

見方を変えると、外国人観光客の富士登山の増加は、コト消費が重視されるようになったことを示しています。

そして、着物をレンタルしての街歩きをし、和菓子作りや伝統芸能の観賞、温泉地巡りをする姿もよく見かけます。かつて「爆買い」と呼ばれていた日本での観光のあり方は確実に変化しているのです。

美しい景観や繊細に作り込まれた食事、非日常的な体験をSNSに投稿し、多くの人の共感を集める環境が整ったこともコト消費を後押ししているでしょう。

インバウンド消費の傾向が変わったことで、百貨店や免税店が受ける打撃は大きいのは間違いありません。しかし、地方の観光地や飲食店、宿泊施設はコト消費の恩恵を得ることになるはずです。中小企業などはこの消費動向を巧みにとらえる必要があります。

文/不破聡

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