『粛々と』には、『心を引き締める』『厳か』といった意味があります。ビジネスシーンでも使われ、例えば『粛々と進める』は、『心を引き締めて厳しく進める』ことを意味します。
目次
「粛々と」の意味は?
『粛々と』という言葉はビジネスシーンでも耳にしますが、正確な意味や適切な使い方を理解している人は意外に少ないものです。まずは、『粛々と』の本来の意味や、類似表現との違いについて見ていきましょう。
■心を引き締めるという意味
『粛々と(しゅくしゅくと)』は、『心を引き締めて』という意味を表す表現です。また、『慎むさま』『静かにひっそりしたさま』『引き締まったさま』『厳かなさま』という意味もあります。
単に静かに行動するということではなく、心を引き締めて、厳かな雰囲気や慎み深さを持って物事に向き合う様子を表す言葉です。
例えば、『粛々と進める』は緊張・規律を保ちつつ厳粛に進行するという意味合いがあり、『粛々と歩む』は格式・静けさを保ちながら落ち着いて歩く様子を表します。
ビジネスシーンでは、責任感を持って真摯に業務に取り組む姿勢を示す際に使えます。
■「淡々と」との違い
『淡々と』は、あっさりとしていて、物事にこだわらず感情を見せない様子を意味します。
例えば、法事の場で僧侶の読経に合わせて、参列者が静かに心を込める様子は『粛々と』ですが、感情を抑え必要な報告だけを簡潔に行う様子は『淡々と』です。
ビジネスシーンでは、重要な案件に取り組む際は『粛々と進める』と表現するのが適切です。『淡々と』を使うと、強い意志がなく、こだわりなく進めるニュアンスになります。
一見似ている言葉ですが、『粛々と』は真摯で緊張感のある姿勢を強調し、『淡々と』はこだわりや感情を交えない冷静さ、淡白な態度に重きが置かれています。
【例文付き】ビジネスシーンでの使い方

ビジネスシーンにおける具体的な使い方を、例文とともに紹介します。使用する際の注意点についても伝えるので、参考にしましょう。
■プロジェクト会議やミーティングでの使用例
ビジネスシーンにおける会議やミーティングは、『粛々と』という表現が効果的に使える場面です。特に重要なプロジェクトの進捗報告や、決定事項の伝達の際に適しています。
- 本日の会議では、新プロジェクトの進行状況について粛々と報告させていただきます
- 限られた時間内で粛々と議題を進めていきたいと思います
- 先日の経営会議で決定した通り、来月から組織改編を粛々と進めてまいります
『粛々と』を使用することで、参加者に対して物事の重要性を強調でき、集中力を高める効果があります。
ただし、日常的な会議で頻繁に使うと、堅苦しい印象を与えてしまうこともあるため、場の雰囲気に合わせた使用を心がけましょう。
■報告書やメールでの使用例
報告書やビジネスメールで、物事が計画通りに進行している状況を伝えるときにも使用できます。
- 現在のプロジェクトは計画通りに粛々と進めております
- プロジェクトAについては予定通り粛々と進めており、来週には中間報告をお届けできる見込みです
『粛々と』を用いると、冷静かつ確実に業務を遂行している印象を与え、相手に安心感をもたらします。
目上の人へのメールでも丁寧な表現として適していますが、急ぎの業務や否定的な内容には使わないよう注意が必要です。
■使用する際の注意点
『粛々と』を多用すると全体が堅苦しくなり、意欲や熱意が伝わりにくくなるため、適所で用いることが大切です。
また、『粛々と進める』には『計画通りに進行している』という意味が含まれることから、実際と異なる場合には誤解を招きかねません。
さらに、機械的な印象や感情の欠如を連想させることがあるので、チームの努力を伝えたい場合などは「着実に進めてくれています」などの表現を選ぶとよいでしょう。
状況に応じて表現を使い分け、相手に誤解を与えないコミュニケーションを心がけることが大事です。
「粛々と」の類義語

最後に、『粛々と』の類義語についても知っておきましょう。『着実に』『静粛に』『厳粛に』という三つの表現について、意味や使い分け方、ビジネスシーンでの具体的な活用例を解説します。
■着実に
『着実に』は、落ち着いて確実に物事を行うさまや、危なげなく手堅いことを意味する言葉です。
『粛々と』が心を引き締めて厳かに取り組む様子を表すのに対し、『着実に』は一歩一歩確実に物事を進めるさまを表現できます。
例えば、「着実に業績を伸ばす」「売り上げは着実に伸びている」のように、ゆっくりでも確実な進歩・成長を表したいときに使用できる表現です。
ほかには、「プロジェクトは着実に進展している」「着実に成果を挙げている」など、長期的な視点での安定した進捗を印象付けたい場合にも適しています。
■静粛に
『静粛に』は『静かにして、慎んでいる』『ひっそりと静まりかえっている』ことを意味する言葉です。
例えば、法廷では声や物音を立てないよう注意を促すために、「静粛に願います」という表現が使われます。ビジネスシーンでは、重要な発表や式典など、緊張感のある場面での使用に向いている表現です。
会議やプレゼンの開始時に「静粛にお願いします」と用いることで、参加者に注意を促し、集中できる雰囲気をつくる効果があります。
『粛々と』が計画的な進行を表すのに対し、『静粛に』は場の雰囲気や態度を表す表現として使い分けるとよいでしょう。
■厳粛に
『厳粛に』は、『厳かで心が引き締まるさま』『真剣に受け止めなければならないさま』を意味し、重大な事柄に向き合う際の真摯な態度を表します。
『粛々と』が静かに着実に物事を進める様子を表すのに対し、『厳粛に』はより真剣さ・重大さが強調された表現です。
ビジネスシーンでは「この度の不祥事を厳粛に受け止め、再発防止に努めます」など、特に重要な謝罪や宣言の場面で使われることが多いでしょう。
式典や儀式の場では「厳粛な雰囲気の中、式は執り行われた」というように、場の荘厳さや重々しさを表現する際にも適しています。
「粛々と」の意味を理解しよう

『粛々と』は、心を引き締めて物事に取り組むという意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでは、会議やメール、報告書などで適切に使うことで真摯な姿勢を示せます。
ただし、多用すると本来の意味が伝わりにくくなるため注意が必要です。『着実に』『静粛に』『厳粛に』といった類義語もあり、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。
ビジネスコミュニケーションの質を高めるには、適切な表現を使い分けることが大切です。
構成/編集部







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