『憚られる』は、敬意や遠慮を表現する言葉です。ビジネスシーンでは、目上の人などに対して意見を述べたり依頼したりする際に使います。代表的な類義語は『気が引ける』『恐縮です』などです。
目次
憚られるの基本的な意味と語源
『憚られる』という表現は、日常会話ではあまり使われないものの、ビジネスシーンでは重宝する場面もあります。まずは、言葉の基本的な意味から確認しておきましょう。
■遠慮する・ためらうという意味
『憚られる(はばかられる)』は、相手への敬意から遠慮がちになる心境を表現する言葉です。相手の力や大きさに直面して距離を置いたり、差し障りを感じてためらったりする気持ちを表す『憚る』が語源です。
古くから使われていた言葉で、源氏物語などの古典作品でも『遠慮する』という意味で広く用いられてきました。
また、『憎まれっ子世に憚る』ということわざがあるように、『憚る』には『威張りちらす』『のさばる』という意味もあります。
しかし、現代では主に『遠慮する』『ためらう』という意味で使われるのが一般的です。特にビジネスシーンでは、目上の人に対して意見を述べる際や、依頼をする場面で使用されます。
■憚ると憚られるの違い
『憚る』は、能動的に『遠慮する』『控える』という行為を表す動詞です。
一方『憚られる』は、『憚る』の未然形に自発の助動詞『れる』が付いた形で、『遠慮の念が自然と湧いてくる』というニュアンスを持ちます。
この表現には『遠慮するのが当然だ』という含みがあり、相手への敬意を伝えられるのが特徴です。
柔らかく丁寧な印象を与えられるため、目上の人に対する敬語やビジネスシーンでの使用にも適しています。
■ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンでは、特に目上の人や取引先に対して意見を述べたり、依頼したりするときに効果的です。例えば、目上の人に対して意見する際に使うと、自分の立場をわきまえつつも必要な提案ができます。
また、自分の力量以上の仕事を任された際に、「このような大役を務めることは憚られますが」と使えば、恐縮しつつ感謝の気持ちを伝えられます。
ただし、使い過ぎるとかえって回りくどい印象を与えることもあるため、相手との関係性や場の雰囲気に合わせた適切な使用を心がけましょう。
【例文付き】ビジネスシーンでの使用例

ここでは、『憚られる』の使用例を見ていきましょう。ビジネスシーンでの使い方を、具体的な場面ごとに紹介します。
■会議や打ち合わせ
会議や打ち合わせなどの場では、謙虚な姿勢を示しながら意見・提案ができます。
- 入社して間もない私が意見するのは憚られますが、新しいプロジェクトについての私の考えをお話ししてもよろしいでしょうか
- 私のようなものがアドバイスするのは非常に憚られますが、こちらの点について少し修正を加えてみてはいかがでしょうか
『憚られる』を適切に使用することで、相手を不快にさせず、円滑なコミュニケーションを図れるでしょう。
■上司や取引先とのコミュニケーション
上司や取引先とのコミュニケーションでは、相手への敬意と謙虚さを同時に表現できます。
- お時間がないところ憚られるのですが、先日の企画書についてもう一度ご確認いただいてもよろしいでしょうか
- お忙しいところお願いするのも憚られるのですが、先日お送りした資料についてご説明したいので、お時間をいただいてもよろしいでしょうか
こうした表現は、相手の立場や状況を尊重する姿勢を示すとともに、自分の言動に謙虚さを持たせる効果があります。
ただし、使い過ぎると回りくどい印象を与えるため、場面に応じた適切な使用が大切です。
■取引先や社内へのメール
メールでの連絡は、相手の表情や声色が分からないため、特に言いにくいことを伝える際は誤解を生む可能性があります。
そうした誤解を避けるためには、『憚られる』をクッション言葉として使うのが効果的です。
- 催促するようで憚られるのですが、ご検討の結果をお知らせいただきたいと思いご連絡いたしました
- お忙しいところ憚られるのですが、ご一読いただけますと幸いです
ただし、使い過ぎると言葉の重みが薄れるため注意が必要です。場合によっては、『恐れ入りますが』などでも十分に謙虚さを表現できることもあります。
『憚られる』の類義語と言い換え表現

『憚られる』は堅苦しい印象を与えるため、場面や相手によってはカジュアルな表現の使用も可能です。最後に、代表的な類義語を二つ紹介します。
■気が引ける
『気が引ける』とは、何かをすることに対して、遠慮・ためらいの気持ちを感じる状態を表現する言葉です。『憚られる』に比べて、より日常的でカジュアルな表現になります。
例えば、上司に意見する場面で「私が口を出すのは気が引けますが」と言うことで、より親しみやすい印象になります。特に、親しい間柄の人との会話では『気が引ける』を使った方が自然です。
一方、重要な取引先や初対面の人との会話などでは、『憚られる』の方が適切な場面もあります。相手との関係性や、場の雰囲気に合わせて使い分けましょう。
■恐縮です
『恐縮です』は、『身がすくむほど恐れ入る』という意味の謙遜表現です。ビジネスシーンでもよく使用される言葉で、相手に対する深い謙虚さや感謝の気持ちを表します。
特に相手からの厚意に対する返答や、謝罪の場面で使われることが多いでしょう。例えば、お礼の場面では「ご丁寧にありがとうございます、恐縮です」と使用できます。
依頼をする際は「大変恐縮ですが、今週中にご対応いただけますと幸いです」といった使い方が可能です。
『憚られる』が遠慮する・ためらうの意味合いで使われるのに対し、『恐縮です』は感謝や謝罪の気持ちをより強調する表現です。
憚られるの意味を知ろう

『憚られる』は、『遠慮する』『ためらう』という意味を持ちます。相手への敬意を表しながら、自分の意見を伝える際に使われる表現です。
ただし、堅苦しい印象になりやすいため、相手との関係性によっては、『気が引ける』といったカジュアルな言葉と使い分けるのがポイントです。
相手との関係性や、伝えるタイミングなどによって依頼・意見をしにくい際は、今回紹介した例文を参考にしてみましょう。
構成/編集部







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