
日用品・化粧品メーカーの花王が今年8月、デスクトップゲーミングプラットフォーム「Steam」で遊べる無料ゲーム「しずかなおそうじ」をリリースした。
一体なぜ花王が、ホラーゲームを?
「花王の3D探索型ホラーアクション」、「異色の清掃ホラーゲーム」、「亡き父から相続した別荘の処分を決意した主人公が花王の洗剤を使って掃除しながら謎を解く」…
どの謳い文句もエキセントリックで常軌を逸しているようにしか思えない。
掃除の達成度や脱出に要した時間などに応じて評価され、家の査定価格が変わるゲームらしいが、一体なぜ花王が、ホラーゲームを?
今回、花王ホームケア事業部ブランドマネジャーの青木さんにホラーゲームリリースの真相を伺った。
――「しずかなおそうじ」リリースの経緯を教えてください
「従来のコミュニケーションでリーチできなかった若年層にも、弊社の便利な商品や掃除を快適にする裏技を知ってもらいたいと考えたことがきっかけです」
「ゲームを通じて、楽しみながら掃除の爽快感を体感し、「ぜひ明日、実際に試してみたい!」と思っていただくことを目標に、「しずかなおそうじ」を開発しました」
花王の商品を広く知っていただきたいとの想い、そして爽快感を味わってほしいという理由は分かった。
ただ、なぜ「ホラー」だったのか?
「ホラーは掃除で取り除く「汚れ」と相性がよく、ゲームの中で楽しみながらお掃除の疑似体験をしていただけることを期待したためです。また、最近では若年層を中心に実況配信を楽しむトレンドがあり、ゲームプレイヤーのみにとどまらない体験の拡大を期待しました」
そもそも、この「しずかなおそうじ」は20代~30代の若年層に向けて制作されたという。
「従来のコミュニケーションでは十分にリーチできない若年層は『どんなお掃除方法があるかわからない』、『しかし積極的に方法を調べるにはハードルがある』…そんなターゲットに向けて、入り口のハードルを低くする体験型で提案しました」
花王が本気で作ったホラーゲームは大きな反響を呼び、リリース直後はトレンド1位を記録。人気ゲーム実況者も次々と実況配信するなど、その魅力に取り憑かれた者が今なお増え続けている。
そこには、「花王」という企業だからこそ成し得た、あるこだわりがあった。
花王が教える「しずかにおそうじ」攻略法とは?
自社の製品を使って謎を解いていくという、まさに花王だけにしかできないホラゲが誕生したわけだが、ゲーム内容にもかなりのこだわりが感じられる。
「最もこだわったのは、「ホラーゲームの世界観を守ること」×「商品のアピール」の両立です。ゲームではありますが、できるだけリアルな汚れの質感を再現し、商品の使用体験ができることを目指しました」
「たとえば、スプレー音は実際の商品を使った音を録っていただいており、ゲーム内で汚れがピカピカになる爽快感をしっかり疑似体験できるようになっています」
ゲーム内に登場する掃除アイテムは、「マジックリン ハンディスプレー(台所用強力洗剤)」、「クイックルワイパー 立体吸着ウエットシート ストロング 空間の超消臭(フロア用ウエットシート)」など全6種類。
これらの商品選定にも花王の力の入れ具合が伺える。
「ゲームをプレイした後の状態・読後感として、『明日すぐに試してみたくなる掃除知識が頑張らなくてもいつの間にか手に入っていた!』ということを目指して選定しました」
こだわりの選定ポイントは2つ。
(1)「誰でも簡単にマネできる使い方のひと工夫」がある商品
例えば…
・軍手×マジックリンで「コンロ五徳のそうじ」
・クイックルワイパーを使った「編戸掃除」
(2)「その汚れの掃除方法について確かに知りたかった!」と思わせる商品
例えば…
・水まわりで気になる固着した水アカには、「マジックリン EXPOWER 水アカ用スプレー」
~など
ちなみに、「しずかなおそうじ」には、掃除の仕方によって全4パターンのエンディングがあるという。獲得スコアのレベルによって映像に違いがあるらしい。
実際にゲームを体感したユーザーからは、「ちゃんと販促にもなってて草」、「この世の物とは思えない汚さのトイレが一番怖い」、「花嫁修業として頑張る」などのコメントが寄せられている。
ハイスコアを狙うためのコツや攻略法はあるのか?
「便利な商品を駆使して、すばやく、そしてしずかに、「清掃率100%」を目指していただければと思います。本ゲームはマルチエンド形式となっており、ゲーム内にたくさんの仕掛けをご用意しております。細かな要素まで注目しながら楽しんでいただきたいです」
今までになかった【お掃除アイテム×ホラーゲーム】という企業のPR戦略。自社の商品を広めるために取り組んだ新たな手法だが、実際のところその反響は?
「今回の「しずかなおそうじ」にはたくさんの反響をいただいております。「軍手で五徳のそうじ!」「クイックルワイパーで網戸まで!?」「困っていた水アカはこうやって落とすのか!」とSNSにはお掃除方法への驚きの声をいただきました」
「落とすのが大変な手ごわい汚れや、どうやってお掃除したらいいのかわからない場所でも簡単にキレイにできるお掃除方法をお伝えしていく大切さを改めて感じております」
今後もさらなる成長を遂げるために企業として必要なこととは?
「花王のホームケア事業部では、「マジックリン」「ハイター」「クイックル」「キュキュット」といったブランドを通じて、住まいの清潔を守るお掃除を提案しています。暮らしのスタイルがますます多様化する中で、今必要なことは、「生活者の気持ちに寄り添った提案力」だと考えています」
「今回は体験型のコミュニケーションを通して若年層のみなさまに商品を知っていただくことができました。今後も、世代やライフスタイルを問わず、誰もが「使ってみたい」「試してみたい」と思えるような、驚きと納得のある提案を続けていきたいと思います」
文/太田ポーシャ