小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

高校生が自由研究で上場企業3838社に調査、導き出した〝眠営化企業〟とは? 

2025.09.08

 全国の中高生を対象とした探究成果のコンテスト「自由すぎる研究EXPO」。テーマは自由。2025年度は全国から8352件の応募作品があり、8月、金賞受賞作品が選ばれた。その中から我が「金賞(DIME賞)」を受賞したのが東京にある立教池袋高等学校数理研究部の「眠営化革命」だ。現代人が抱える大きな悩み、”睡眠”に向き合った素晴らしい研究を紹介したい。  

身近な課題を研究テーマに昇華する

個々人の睡眠不足は日中のパフォーマンスを奪い、その影響は企業の収益性を蝕み、さらには日本全体の経済に深刻な損害をもたらしている。この問題に対して、私たちは「睡眠」そのものを経営の中核に据えるという、新しいアプローチを提案する  

このような冒頭から自由研究は展開される。立教池袋高等学校の数理研究部の9名はこの自由研究の着想のきっかけを次のように語る。  

「僕たちも普段からゲームや勉強でオールをすることが多いんです。毎日の通学途中で電車の中で寝てしまうこともあります。こうした背景もあり、今回、研究テーマを決めるに当たって身近な『睡眠不足』や『睡眠』を主題にすることにしました」  

今年、彼らは睡眠負債という社会課題へのアンサーとして、気持ちよく睡眠できる環境を提供する「寝台列車の揺れを再現したVR」を、VRコンテンツを制作する大会「IVRC」へ応募し、観客大賞、審査員特別賞を受賞したという経歴を持つ。

こうした背景もあり、さらに睡眠への研究を進めていくうちに、睡眠不足の解消が企業さらには日本社会全体の成長につながると考え、「睡眠」にアプローチをする企業を「眠営化企業」と定め、上場企業3838社にアンケート取材を行ない企業の睡眠施策の実態を調査することを定めたのだ。  

研究のベースとなる調査にも力を入れる

そもそも、睡眠不足の原因はなんだろうか。睡眠の「質」なのか「量」なのか。研究の軸となる方向性を決めるために、彼らは睡眠学の権威で『Pokémon Sleep』の監修も行なっている筑波大学の柳沢正史教授に取材をする。  

「柳沢先生にお話を伺うと『睡眠の量を質でカバーするのはほとんど不可能。睡眠の量を十分に確保してから質を改善する方法でないと効果を期待できない』と教えていただき、僕たちは睡眠の量、すなわち『睡眠時間』に重点を置いて経済への影響にも切り込むことにしました」  

彼らの研究を読んでみると、柳沢教授への取材だけでなく、医学、睡眠に関する先行研究、自治体の過去の取り組みや内閣府の統計データなどを参考にし睡眠=社会課題を浮き彫りにしている。主観に頼らず客観的な資料で研究でベースを固めている点は高校生の自由研究とは思えないほど丁寧かつ正確だ。その上で、彼ら独自の研究「上場企業3838社の睡眠の実態調査」を 実施している。 

1週間かけて行なった3838社へのアンケート調査

我々、メディアの立場から言うとアンケート調査とはいえ3838社に取材をするというのは信じられないほど膨大な作業量であり、並大抵の覚悟ではやりきれないという点は補足しておきたい。彼らもこのアンケート取材についてこう振り返る。 

「このアンケート調査を行なった時は、五人のメンバーだけで研究を進めているタイミングでした。そのため一人、約800社弱、担当分のアンケートを送付するだけで1週間ほど時間がかかりました。1週間ほぼ毎日メールの送信だけしてました(笑)。企業によっては問い合わせフォームのフォーマットも異なりますし、『問い合わせを受け付けました』みたいな自動返信の通知も鳴り止まなくてかなり大変でした」 

しかし、その苦労の結果、彼らのものとには数百の企業から返信が集まった。それらの企業の回答を分析すると「眠営化企業」(従業員の睡眠改善に取り組む企業)は高い成長性があることが明らかになった。それを踏まえ彼らは企業の経営方針への独自の提案である「眠営化ロードマップ」を作成したのである。 

今回の研究を次の研究の「糧」にする志

こうした研究を通して彼らは次のように締めている。 

未来の成長を掴む鍵、それは「眠り」を制することに他ならない。 
(中略) 
「成長のカタリスト」としての眠営化は、企業価値の向上と社会的意義の両立という二つの目標を同時に達成する。さらに眠営化を通じて得られる持続可能な成長は、未来の経済と社会における新たな基盤となるだろう。このファンドは、単なる利益の追求ではなく、社会使命と共に歩む投資の未来を描く。 

いまこそ、眠営化という核心の波に乗り、次世代の成功の扉を共に開く時である。 

研究メンバーの一人は、本研究の感想を次のように話してくれた。 

「インタビューやデータ分析にボリュームをしっかりと行なえたことに関しては僕たちとしても非常に納得しています。そのデータを健康経営に対する提言につなげることができた点も満足しています。しかし、この研究の大きなテーマである『睡眠』に対し、もっと別のアプローチであったり、違う分析ができたのできたかもしれないとは反省しています。睡眠はあらゆる分野で注目もされていますし、課題を抱えています。例えば、『防災』において段ボールベッドの普及や安全な睡眠といった課題があります。今回得た睡眠に関する知見や関係性を今後もっともっと色々なところで活用していきたいと思います」 

数理研究部の顧問の先生は生徒たちの研究をどのように見ているのか。 

「テーマの選定から研究の進め方も全部、生徒たちが自主的に進めています。蓋を開けたら『睡眠の研究に1年間捧げます』と言われて驚いたものです。彼らは睡眠の質を向上させるための寝台列車の揺れを再現したVR装置の開発など他にも素晴らしい研究をしている子たちです。こういった睡眠の『質』に対するアプローチも今回の研究に活かせればもっと良かったかもしれませんね」 

そう厳しい言葉をかけながらも先生の表情は非常に満足そうだった。大人顔負けの研究をする彼らの功績に改めて賛辞の言葉を送りたい。立教池袋高等学校数理研究部のみなさん、DIME賞受賞おめでとうございます! 

DIME編集長コメント

「『眠営化』というキャッチ―なキーワードにまず惹かれました。研究内容に関しても高校生の研究とは信じがたい、驚くべき深度と網羅性です。専門家への取材、3000社以上への調査、VR開発から統計分析まで、その圧倒的な探求心と実行力に深く感銘を受けました。睡眠を経営資源と捉え、個人の健康と企業の成長、さらには日本経済をアップデートしていく姿勢に自分たちがこれから働く社会を少しでも良くしていきたいという高校生たちのポジティブな変革意識を感じました」(DIME編集長)

立教池袋高等学校数理研究部の自由研究「眠営化革命」の全文はこちらから、ぜひお読みください
https://app.box.com/s/vd0kojz8wwqu6chgrjkag7qn3qkpelqx/file/1953574750833

取材・文/峯亮佑 

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2025年7月16日(水) 発売

DIME最新号は、誕生45周年のガンプラを大特集!歴史を振り返り、ガンプラが今後どのように進化していくのかを総力取材。プラモデル制作に役立つ〝赤い〟USBリューターの特別付録付き!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。