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なぜトレーディングカードが人気なのか?新規参入、中古市場、多くの企業にチャンスが広がる理由

2025.09.05

ハッピーセットの「ポケカ」が品切れ続出で大炎上しました。8月29日に予定していた「ワンピースカードゲーム」の実施を見送る事態にまで発展しています。

この騒動で改めて浮き彫りになったのが、トレーディングカードゲームの人気ぶり。市場拡大は続いており、様々な企業が多大な恩恵を受けています。

「ホロライブ」のカバーは物販事業の売上が1.6倍に

日本玩具協会によると、2024年度のトレーディングカードゲームの市場規模は前年比9.0%増の3024億円。2020年ごろまでは1000億円台で推移していましたが、突如として3000億円市場にまで急拡大しました。

「ヴァイスシュヴァルツ」などの人気商品を販売する、ブシロードのトレーディングカードゲーム企画・開発部門であるTCGユニットの2025年6月期の売上高は前期比25.0%増の270億円でした。2022年6月期のこの事業の売上高は153億円でした。3年ほどで約120億円を上積みしたことになります。

ブシロードが手がけ、2024年9月に発売した「hololive OFFICIAL CARD GAME」が大ヒット。このトレーディングカードゲームは、「ホロライブプロダクション」を運営するカバーにも多大なる恩恵を与えました。

カバーの2025年3月期における物販事業の売上高は205億円で、前年の1.6倍に急拡大。カバーは決算発表時にトレーディングカードゲームの売上が想定を上回るものだったと説明しています。

中古市場にも好影響

トレーディングカードゲームは、「拡張パック」「ブースターパック」と呼ばれる追加のパッケージを定期的に販売してファンのつなぎ止めを行います。運営会社側は、中長期的な収益基盤を構築することができるというメリットがあります。

ブームの追い風を受けている意外な会社がブックオフホールディングス。2025年5月期の連結売上は前期比6.8%増の1192億円と好調でしたが、躍進を支えているのがトレーディングカードゲームなのです。

この部門の売上は10.7%増加しました。書籍やソフトメディア、家電、スポーツ・アウトドア用品など全カテゴリーの中で2桁増となったのはトレーディングカードのみ。売上の構成比率は20%を超えており、書籍、ソフトメディアに次ぐ主力カテゴリーに成長しました。

古本や中古ゲーム、中古DVDのイメージが強いブックオフですが、成長をけん引しているのはトレーディングカードゲームなのです。ブックオフはカードに特化した店舗の開発も行っています。

※画像はブックオフホームページより

5000万円のカードで一躍脚光を浴びる

トレーディングカードゲームの世界で圧倒的な人気を誇るのが「ポケモンカードゲーム(ポケカ)」です。NFTなどの情報を発信するCoinDesk JAPANによると、「ポケカ」のシェアは市場の50%を占めているといいます(「NFTトレーディングカード、3000億円市場に食い込むか」)。

トレーディングカードゲームは戦略性が高く、熟練のファンがその腕を競う性格の強いものでした。しかし、ブームの火付け役である「ポケカ」は、2016年にGXシリーズを市場投入します。対戦中に1度だけ強力な技を使うことができるもので、初心者でも勝ちやすい一発逆転の仕組みを導入しました。

更に2年後の2018年に「GXスタートデッキ」を発売。このパックだけで誰でもバトルができる商品で、強力なGXカードが入っているうえに500円という低価格で提供しました。開発側がファンの固着化を解消するため、試行錯誤を重ねた様子が想像できます。

初心者に間口を広げたタイミングも絶妙。2016年は「ポケカ」20周年記念の節目だったのです。発売から20年経過すると、10歳で当時ゲームを楽しんでいた人は30歳になっているわけで、自分の子供と一緒にゲームを楽しむ年齢に入ってきます。

「ポケカ」の対象年齢は9歳とされていますが、ルールはさほど難しくないために小学校の低学年でも十分に楽しむことができます。親が子に教える楽しさもあるでしょう。

資本主義社会が切り捨てられない転売行為

2022年にYouTuberのHIKAKIN(ヒカキン)さんが5000万円の高額「ポケカ」を購入するなど、このころからトレーディングカードゲームの動画や情報を頻繁に目にするようになりました。そして2023年にかけて転売による価格高騰を招くようになります。

ブームが過熱した背景の一つにこの転売があります。

生活者を起点にしたマーケティング支援事業を行うネオマーケティングの「トレーディングカードに関する調査」によると、コレクション目的でトレーディングカードを購入する割は67.7%を占める一方、投資目的・利益獲得目的の人の割合は45.7%に上ります(調査は複数回答)。

一時的な価格の過熱感は落ち着きを取り戻していますが、ハッピーセット騒動は転売が横行していることを改めて浮かび上がらせました。

海外の転売ヤーも多く、世界最大のオンライン中古取引サービスのeBayでもハッピーセットの「ポケカ」が出品されています。

短期的な利益を狙う行為そのものは決して悪とは言いきれず、金融や不動産業界では常識とも言えるもの。資本主義社会において転売行為を排除することはできないでしょう。

ただし、ハッピーセットのように明らかに子供向けの商品が広く行き渡らないことは、会社にとって不本意であることは間違いありません。対策を講じる必要があるでしょう。ブームを終わらせないためにも、転売によるユーザーの締め出し行為を、仕組みでカバーする取り組みが企業側に求められているように見えます。

文/不破聡

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