
会社を辞めたいけどなかなか上司に退職の意向を切り出せない…そんな人にとって救世主とも言える退職代行サービス。実際のところ、利用したことがあるビジネスパーソンはどれくらいいるのだろうか?
弁護士法人mamoriはこのほど、日本全国在住の20~40代の男女550名を対象に「“退職”に関する意識調査」を実施し、その結果を発表した。
「辞めたい」と感じた経験は7割超!職場に抱える“辞めたい”の本音
今の職場を「辞めたい」と感じたことがある人は72.2%に上り、内訳としては「何度もある」が35.1%、「たまにある」が31.3%、「一度だけある」が5.8%となった。一方で「まったくない」は27.8%にとどまっている。職場に対して辞意を抱いた経験がある人が7割を超えるという結果は、多くの人が日常的に職場への不満や不安を抱えている実態を示している。
特に「何度もある」と回答した人が最も多く、退職を考える頻度の高さからは、慢性的なストレスや環境への不適合がうかがえる。仕事に対する満足度や心理的安全性の欠如が、広く社会に共通する課題となっている可能性がある。
約7割が退職意思の伝達に抵抗あり――「言い出せない心理的ハードル」の存在
退職の意思を伝えることに「抵抗をとても感じる」(29.1%)と「抵抗を少し感じる」(38.0%)を合わせ、67.1%が何らかの抵抗を感じていると回答。退職の意思表示は心理的に大きな負担となっていることが浮き彫りになった。退職の自由がある一方で、実際には周囲への配慮や対人関係への懸念が行動の抑制要因となっていると考えられる。この傾向は、自由なキャリア選択を妨げる心理的障壁として見過ごせない問題だ。
退職を言い出せない理由1位は「辞めづらい空気」、説明不安や人間関係も壁に
退職を言い出せない理由は、「人手不足や忙しさで辞めづらい空気がある」が28.0%で最多、以下「退職理由をうまく説明する自信がない」が27.3%、「周囲に迷惑をかける・評価や人間関係が悪くなりそう」が22.7%、「引き止められたり否定されたりしそうで不安」が22.2%と続いた。
退職の申し出には職場の状況や人間関係の複雑な要因が絡んでいる。特に職場の人手不足や忙しさが辞めづらさを生み、加えて退職理由をうまく説明できないことや周囲への影響を気にする心理が言い出しにくさを助長していることがわかる。
退職代行サービスの認知率は約9割!しかし利用経験はまだわずか
「退職代行サービスを知っているか」という質問では、「利用したことがある」は2.2%に留まる一方、「知っているが使ったことはない」(54.4%)、「聞いたことがある」(31.8%)を含めると、合計で88.4%が退職代行サービスを認知していることが明らかになった。退職代行サービスの認知度は非常に高い一方で、実際の利用経験者はごくわずかにとどまっている点が特徴的だ。
この差からは、「サービスの存在は知っているが、使うには心理的・社会的な抵抗がある」という状況が想像される。また、制度としての認知が広まっているにもかかわらず、利用に踏み切れない背景には費用面の不安や周囲の評価への懸念もあると考えられる。
「サポート不要」が最多も、匿名相談や書類代行など多様なニーズが存在
退職で困った際のサポートとして「特にサポートは必要ない」が40.2%で最多を占めたが、「匿名での相談ができること」(11.8%)、「費用が明確でわかりやすい」(10.5%)、「退職理由の代行・書類作成までしてくれる」(9.8%)なども一定の支持を得ている。
退職に際して何らかの支援を必要と感じる人は過半数を下回っており、多くの人が「自力でなんとかする」という姿勢であることがわかる。ただし、「匿名性」「即日対応」「書類代行」など、個別のニーズは一定数存在しており、特に精神的負担の大きいケースではサポートが必要とされている実態も読み取れる。自力で対応できない人にとっては、こうした選択肢が心の支えとなる可能性がある。
<調査概要>
調査概要:“退職”に関する意識調査
調査期間:2025年7月22日
調査機関:WEBアンケート(設問選択・記述式)
調査対象:日本全国在住の20~40代の男女
調査人数:550人
出典元:弁護士法人mamori
構成/こじへい