
会社員と比べて働く場所の自由度が高いのは、フリーランスならではの利点と言える。では、もしどこでも好きに仕事ができるとしたら、リモートワークをする場所としてどの都道府県を選ぶフリーランスが多いのだろうか?
テックビズはこのほど、全国のフリーランス562名を対象に「フリーランスのリモートワークに関する調査」を実施し、その結果を発表した。
『東京都が51.1%』で圧倒的1位、 2位『北海道(31.3%)』、3位『沖縄(30.6%)』 ~”涼しさ vs リゾート”両極が上位に~
「現在のリモートワークの有無に関わらず、もしどこでも自由に仕事ができるとしたら、リモートワークをしてみたい都道府県を最大5つまでお選びください」という質問に対し、東京都が51.1%で圧倒的な1位となった。これは全体の半数以上にあたり、フリーランスにとって東京都が依然として最も魅力的な働く場所として認識されていることが明らかになった。ビジネス機会やネットワークの豊富さ、インフラの充実度などが要因として考えられる。
2位には北海道が31.3%、3位には沖縄県が30.6%でランクイン。お盆明けという暑い時期の調査であることから、涼しい環境でのリモートワークへの憧れと、南国リゾートでのワーケーションへの関心という、対照的な魅力が共に上位を占める結果となった。
■TOP10は首都圏4都市と地方中核6都市、拠点性重視の傾向が鮮明に
TOP10のうち、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)が4つを占める一方で、北海道、沖縄、福岡、長野、京都、大阪など地方都市も上位にランクイン。特に注目すべきは、首都圏以外の上位地域に共通する特徴だ。北海道(31.3%)、沖縄(30.6%)、福岡(20.8%)、大阪(16.7%)、長野(12.1%)、京都(11.6%)は、いずれもそれぞれの地方における中核都市・拠点性を持つ地域という共通点がある。
北海道全体の中心地である札幌、九州の経済中心地である福岡、関西の経済・文化拠点である大阪・京都、中部山岳地域の拠点である長野、そして沖縄県全体の中心地である那覇など、その地域圏のハブ機能を担う都市が選ばれている。
この結果は、フリーランスが地方でのリモートワークを検討する際に、一定の都市機能やビジネス環境を重視していることを表しており、地方創生において各地域の拠点性の重要性が浮き彫りになった。
約8割のフリーランスが居住地以外の都道府県でのリモートワークに関心、理由は「気分転換」が最多、「故郷回帰」も4位で地方還流に期待
「もしリモートワークでどこでも自由に仕事ができるとしたら、居住地以外の都道府県(以下、「他都道府県」)で仕事をすることに興味がありますか?」という質問に対して、74.2%のフリーランスが「とても関心がある」「やや関心がある」と回答。
また、「すでに実施している」の5.3%を含めると約8割(79.5%)のフリーランスが他都道府県でのリモートワークに前向きな姿勢を示しており、その高いニーズが浮き彫りになった。この結果は、フリーランスの地方流入による地域活性化の可能性を示唆している。
「他都道府県でリモートワークしたい理由は何ですか?」という質問では、「気分転換がしたい」(44.6%)が最多となり、続いて「自然豊かな環境で働きたい」(44.4%)、「都市部の混雑やストレスから離れたい」(39.4%)が上位を占めた。
特に注目すべきは、「実家や生まれ育った土地の近くで働きたい」(28.4%)が4位にランクインしたことだ。これは故郷への回帰願望であり、未知の土地への移住と比べて心理的ハードルが低く、より現実的な選択肢として機能することから、フリーランスの地方還流による新たな地域経済の活性化につながる可能性を表している。
他都道府県でのリモートワーク先を選ぶ際に重視する要素として、「インターネット環境の充実」(58.1%)が最多となり、続いて「交通アクセスの良さ」(44.8%)、「食事・グルメの魅力」(44.4%)が上位を占めた。実用的なインフラ環境を重視する一方で、グルメや文化的魅力も重要な選択要因となっている。
44.9%が中長期滞在志向、4人に1人が二拠点生活への関心で新たな関係人口創出の可能性が明らかに
理想的な期間については「特に決めていない」(33.3%)が最多となったものの、具体的な期間では「1週間程度」(13.6%)、「数日程度」(12.6%)が上位に入った。注目すべきは、1週間から半年以上の中長期滞在を希望する層が44.9%に上ることだ。
これは観光庁の「旅行・観光消費動向調査」による2024年の日本人1人平均の国内観光目的宿泊旅行の宿泊数2.4泊を大幅に上回る期間であり、フリーランスのリモートワークが一般的な観光旅行とは異なる、より深い地域との関わりを生み出す「関係人口」の創出に寄与する可能性を示している。
また、リモートワークをきっかけとした地方移住については、「積極的に検討してみたい」(18.9%)と「少し興味がある」(27.3%)、「二拠点生活に興味がある」(25%)を合わせて71.2%が前向きな姿勢を示しており、フリーランスの地方流入への潜在的なニーズの高さが判明した。
特に注目すべきは、「二拠点生活に興味がある」と回答した層が25%と4人に1人で、完全な地方移住ではなく都市部と地方を行き来する新しいライフスタイルへの関心が高まっていることだ。これは、東京などの都市部でのビジネス機会を維持しながら、地方での豊かな生活環境を両立したいというフリーランスの戦略的な働き方志向を表しており、こうした継続的な地域との関わりもまた、新たな「関係人口」の拡大に寄与すると考えられる。
インターネット環境が53.2%で最大課題、自治体や宿泊施設のインフラ環境整備や補助のニーズも明らかに
他都道府県でのリモートワーク実現への最大の障害要因として「インターネット環境」(53.2%)が圧倒的多数を占め、次いで「急な招集がかかった時にすぐに対応できない」(33.5%)となった。この結果は、物理的なインフラ不足と、クライアントとの緊急時対応への不安という、ハード・ソフト両面の課題を浮き彫りにしている。特に後者は、フリーランス特有の「即応性」への期待と地方でのリモートワークとの間に生じるジレンマを示しており、働き方の柔軟性と責任の両立が重要な課題であることがわかる。
地方でのリモートワーク促進に必要な支援として、「リモートワーク環境整備への補助」(68.6%)と「高速インターネット環境の充実」(48.8%)が上位となり、インフラ整備への公的支援が地方創生の鍵となることが示された。注目すべきは、「お試し移住体験プログラム」(31.2%)への関心も高いことで、これは地方自治体にとって「いきなりの移住促進」ではなく、「段階的な関係構築」を通じたアプローチの有効性を示唆している。ハード面の整備と体験機会の提供という二段構えの施策が、持続可能な地方流入を実現する鍵となりそうだ。
<調査概要>
調査期間:2025年8月18日~8月21日
調査方法:インターネット調査
調査対象:株式会社テックビズで稼働するフリーランス/男女/562名/20代-60代
調査実施:株式会社テックビズ
出典元:株式会社テックビズ
構成/こじへい