
トランプ政権による米国の方向転換により、世界的なSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の取り組みは揺れ動いている。では日本企業の取り組みは、どうなっているのか。帝国データバンクは、日本全国の2万6237社を対象に、SDGsに関する企業の見解についてアンケート調査を実施して、その結果を発表した。
SDGsに積極的な企業の割合は前年比1.2ポイント減の53.3%で初めて低下し、積極的な企業は減少している結果が浮き彫りになったという。ちなみに帝国データバンクでは、SDGsに関する調査は2020年以降から毎年実施しており、今回の調査は6回目になる。
SDGsに取り組む企業は過去最高の30.2%も積極性は鈍る
自社におけるSDGsへの理解や取り組みについての質問では、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は前年比0.5ポイント増の30.2%となり、2020年の調査開始以降で最高を更新した。一方で「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は同1.7ポイント減の23.1%だった。合計するとSDGsに積極的な企業は、1.2ポイント減の53.3%と調査では初めて前年から低下したという。
前年調査でSDGsについて「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」と回答した企業のうち、今年の調査でSDGsに取り組んでいると回答した企業は23.7%だったが、SDGsを認知しつつも取り組んでいない企業は28.4%で、一部の企業ではSDGsへの取り組みが消極的になった印象だ。
前年時点ではSDGsに取り組む意欲があったものの取り組みに積極的でなくなった企業からは、「現状では当社には取り組む余裕がない」(農・林・水産、小規模企業)といった声もあり、“余裕がない”や“ハードルが高い”といったコメントが寄せられたという。
前年調査でSDGsを認知しつつも取り組んでいないとした企業は、7割以上が今年の調査でも同じ回答をしており、企業からは「取り組むことによる明確なメリットが不明。助成金活用を盛り込んだ政府団体のサポートが不可欠である」(メンテナンス・警備・検査、大企業)や「理念ばかりが先走りしすぎているし、日本に昔からある考え・習慣ばかりと感じる」(繊維・繊維製品・服飾品小売、小規模企業)いった意見もあったという。SDGsに積極的な企業からは、「不確実性の高い現代において“持続可能”は非常に大事になっていくと考える」(電気機械製造、中小企業)などの前向きな意見もあった。
企業規模が小さいほどSDGsに積極的な企業割合は低い
企業規模別では、大企業はSDGsに積極的な企業が71.1%と全体の53.3%を大幅に上回った。それが中小企業では50.2%で、そのうちの小規模企業では40.8%という結果になり、規模が小さいほどSDGsに積極的な企業の割合が低くなる傾向が浮き彫りになった。
中小企業からは「目標はどれも取り組むべき内容だと思うが、小規模事業者では取り組む時間や予算に限りがある」(建設、小規模企業)といった意見が挙がったが、取り組みの厳しさを感じながらも意欲を示すコメントもあったという。SDGsに積極的な企業の業界別では、「農・林・水産」が64.2%でもっとも高く、2位は62.7%で「製造だった。
力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGs17の目標の中で、力を入れている項目について複数回答で質問すると、働き方改革や労働者の能力向上などを含む「働きがいも経済成長も」が34.1%でもっとも高かった。それにカーボンニュートラル製品の使用などを含む「気候変動に具体的な対策を」(24.3%)、再生可能エネルギーの利用などを含む「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(24.2%)、リサイクル活動などを含む「つくる責任つかう責任」(22.9%)が続く結果となった。
いずれかのSDGs目標に力を入れている企業は、前年の72.8%から0.4ポイント増の73.2%だったが、SDGsに取り組んでいないと回答した企業でも気付かないうちにSDGsに取り組んでいる企業も多数見られたという。
今後取り組みたい項目も「働きがいも経済成長も」がトップ
今後、もっとも取り組みたい項目については、力を入れている項目と同様に「働きがいも経済成長も」が11.2%でトップで、全項目で唯一の1割超えとなった。それに「パートナーシップで目標を達成しよう」(7.0%)や「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(6.7%)が続いて上位に並んだ。SDGs各目標に力を入れている企業に取り組みによる効果を質問すると、『効果を実感』している企業の割合は前年の69.5%から0.4ポイント増の69.9%で約7割が効果があったと感じているようだ。
具体的な効果では、「企業イメージの向上」が40.5%でトップだった。それに「従業員のモチベーションの向上」(32.1%)、「経営方針等の明確化」(17.3%)、「採用活動におけるプラスの効果」(17.0%)が続いた。「取引の拡大(新規開拓含む)」(11.8%)と「売り上げの増加」(11.7%)などが1割台で、SDGsへの取り組みが社会課題の解決に貢献するだけでなく、ビジネスチャンスの獲得や業績の向上にもつながる可能性も見えたという。
企業からは「福祉を考慮し、車いすでも買い物ができるように売り場の拡張を行った結果、実際に車いすでのご利用があり、売り上げ向上につながった」(専門商品小売、小規模企業)や「再生可能エネルギー(太陽光発電)と蓄電池を使って自家消費を行い、CO2削減だけでなく会社の光熱費の削減にもつながっている」(出版・印刷、中小企業)などの声がある一方で、「社会動向や重要性については理解しているが、効果がみえにくく今後の持続性(社会全般を含む)のためにはもう一工夫が必要と考える」(化学品製造、中小企業)や「企業イメージ向上のメリットがあることは理解するが、BtoB取引がメインの会社にとって掛けたコストに見合う見返りは期待しにくい」(化学品製造、中小企業)といった厳しいコメントもあったという。
今回の調査では、SDGsに積極的な企業の割合が53.3%で、調査としては初めて低下したが、内訳ではSDGsの意味を理解して取り組んでいる企業が前年より0.5ポイント上昇して調査開始以降で最高の30.2%になったが、取り組みたい企業の割合が1.7ポイント低下したことで全体ではマイナスになった。
中小企業からは「費用面・人材面が厳しい」といった意見のほかに「どのように取り組めば良いか分からない」といった意見もあった。さらに「以前に比べてSDGs(特に環境問題)について聞く機会が少なくなってきている。トランプ大統領の影響なのか、一時の流行で終わってしまうような気もしている」(輸送用機械・器具製造、中小企業)という諸外国のSDGsへの姿勢の変化を懸念する声もあったという。
現在、経済大国のアメリカがSDGsや環境問題などに対して消極的な姿勢をみせているほか、足元での世界的な物価高騰や地政学的リスクの存在など諸問題により、SDGsへの関心が薄れる懸念があるという。環境や人権、多様性に対する人々の意識は高まり続けており、SDGsへの取り組みが企業の競争力向上や商品の購入意欲、採用活動の促進につながるケースは増えていくと考えられるという。
資金や人的余裕がない中小企業は、SDGsを“身近なことから”少しずつ取り組んでいくことが一策であり、それを後押しする国や自治体による具体的な取り組み事例とメリットの共有や相談窓口・補助金制度の充実などの支援策強化がこれから取り組んでいくべきことだろう。
「SDGsに関する企業の意識調査(2025年)」概要
調査対象:全国2万6237社、有効回答企業数は1万435社(回答率39.8%)
調査期間:2025年6月17日~6月30日
調査方法:インターネット調査
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250725-sdgs2025
構成/KUMU