
いわゆる「液タブ」と呼ばれる、作画向けの液晶タブレット。板タブとは違い、それ自体がディスプレイになっているため「画面に直接ペンを走らせる」ということが可能だ。
PCでイラストを作成する難易度で言えば、板タブよりも液タブのほうがより初心者向け。が、一方でその価格はとても「初心者向け」とは言えない。液タブの価格は、板タブのそれを大きく上回るのが普通だ。
だからこそ、ここは「一番安い液タブ」を探して購入してみよう。今回、筆者はXPPenの『Artist 10セカンド』という製品を自腹で入手した。価格は2万6,980円。筆者にとっては、人生初の液タブである。
初心者こそ液タブを!
筆者はYouTubeでゲーム実況動画を配信している。しかも、単にゲームを実況するというわけではなく、動画内で登場キャラがいろいろな寸劇を繰り広げるという内容だ。そのため、「キャラの立ち絵」というものが必要になってくる。これはVRoidStudioで作るか、よりコミカルな場面で使うものであれば自分で描いてしまう。
ただ、VRoid Studioを使うにしても独自の髪型やアバターに着せる服などを自分の手で作る機会も頻繁にある。そうした場合、今まで使ってきた板タブよりも液タブを導入したほうが作業がはかどるだろう……と思った次第である。
しかし、いかんせん筆者は貧乏人。液タブのためだけに6万円だの7万円だの出すことはできない。そんな時に目に飛び込んだのは、『Artist 10セカンド』の2万6,980円という数字である。
これなら手が出せるぞ! というわけで、Amazonを利用して『Artist 10セカンド』を購入……したのだが、これが一向に届かない。何と、配達業者が筆者の自宅(数十棟とある公営住宅の一室)を間違えて置き配してしまったらしい。その商品は、今も行方不明。たった1個の荷物を探すために5階建ての棟の一つ一つを探し回るなど、不可能である。そこでAmazonに返金処理をしてもらい、改めて購入し直した。このあたりについての顛末は、機会があれば別の記事に書きたいと思う。
スムーズな書き心地
紆余曲折あってようやく手に入れた『Artist 10セカンド』だが、これはWindowsのPCにつなぐとサブディスプレイとして認識される。『Artist 10セカンド』自体に独立したOSが備わっているわけではない。
筆者がいつも使っているペイントソフトは『sketchbook Pro』。これを立ち上げ、そのブラウザを『Artist 10セカンド』の画面に移す。付属のX3スマートチップ搭載スタイラスペンは『sketchbook Pro』でもちゃんと反応してくれる(当たり前だが)。書き心地が、恐ろしくスムーズだ。
何しろ、これは液タブである。これから筆を進めるための始点にピタリと筆先を当てることができる。これが板タブであれば、タブレットそのものに白いキャンバスが表示されるわけではないため、初心者は多少の練習が必要だ。
上述したように、板タブは価格こそ初心者向けだが、それを使いこなすにはある程度の技術と経験値が求められるのだ。
液タブを使って初めて理解できる「ペイントソフトの便利な機能」
『Artist 10セカンド』をしばらく使って理解したことがある。
それは、『sketchbook Pro』はやはりスタイラスペン付属のタブレットの使用を前提にしたソフトということだ。
キャンバスを拡大・縮小する際、マウス操作の場合は中央のホイールを使う。しかし、アイコンに合わせた位置を中心に拡大・縮小する仕組みのため、その操作を繰り返す度にキャンバスの位置がズレる。要するにこれは、スタイラスペンを使って初めて「便利!」と理解できる仕組みなのだ。
『Artist 10セカンド』(というより、有線式液タブそのもの)の欠点は、複数のプラグをPCや電源に差し込まなければ作動しないという部分である。『Artist 10セカンド』の場合はHDMI端子の他、2つのUSB端子をPCと電源に接続しないといけない(この製品の接続ケーブルは3 in 1の三叉型)。となると、どうしてもタコ足配線になってしまい、PCの端子ポートも埋まってしまう。筆者のノートPCはそのあたりの余裕があまりない機種なので、『Artist 10セカンド』を使っている最中は記録用のフラッシュメモリを使うことはできなくなる。
しかし、ポートを増設することができ、なおかつタコ足配線の煩わしさに耐えることができれば、PCに常時接続しっぱなしでもいいかもしれない。
欠点はあるものの…
この『Artist 10セカンド』をキーボードの傍らに置き、イラスト作成用途ではない純粋なサブディスプレイとして活用する発想ももちろんアリだ。
『Artist 10セカンド』には残念ながら、本体を斜めにするためのスタンドがついていない。常時寝かせて使う設計である(ミドルレンジ以上の液タブには殆どの場合、スタンドが内蔵されている)。そのせいで卓上のスペースを余計に取ってしまうことも考えられるが、そんな小さな煩わしいなどすっ飛んでしまうほどのパフォーマンスは十分に期待できるはずだ。
いくつか欠点もあるとはいえ、これは心の底から「買ってよかった!」と思える製品である。
文/澤田真一
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