
スマートフォン以前の携帯電話で撮影した写真や、一度Facebook等のSNSにアップした写真は、解析度が低い。
少しでも拡大すると粗が目立つような有様で、写真としてはまるで失格……ということも珍しくない。ところが、現代のテクノロジーというものは恐ろしいもので、昔撮影した低解像度のデジタル写真をそのまま大きくするAI技術が確立されている。
Photoshopは先日、「生成アップスケール」という機能をリリースした。デスクトップ版とWeb版で提供されるこの機能だが、一言で言えば「昔のデジタル写真をAI補正で大きくするもの」。これを使えば、思い出の写真を高解像度の写真に直すことができるのだ。
これはすごい! というわけで、早速試してみよう。
昔の写真を大きくする!
2010年代の筆者は、撮影した写真をすぐにFacebookに放り込んでいた。
Facebookは便利なアルバムで、これを使えばこの先も思い出の写真を閲覧できる。要はストレージサービスのような感覚で使っていたのだ。が、実はFacebookにアップした写真は、その時点で解像度が大幅に小さくなってしまうことにある時気づいてしまった。元のデータはちゃんと保持しているとはいえ、もっと早くこのことに気づくべきだったなぁ……と頭を抱えて後悔している。
筆者のFacebookには、若い頃の写真がたくさん眠っている。今回はその中の1枚を取り出して、Web版PhotoShopで解像度を大きくしてみよう……という取り組みだ。
この写真は、2018年にインドネシアのバリ島で撮った1枚。場所はブラジリアン柔術のニコ・ハン先生の道場。その際の集合写真であるが(後列左から2番目の上半身裸の男が筆者。その前にいるのがニコ・ハン先生)、解析度は884×664。正直、かなり物足りない数字である。だが、PhotoShopの「生成アップスケール」を使えば、これを大幅に拡大できるとのこと。
「生成」→「生成アップスケール」とクリックしていくと、生成レベルとアップスケール量を指示できる項目に移ることができる。アップスケール量は分かるが、生成レベルって何だ?
とりあえず、まずは生成レベルを「低」、アップスケール量を「4×」にしてやっていく。これだけでも解像度は3536×2656になるはずだが……。
う~~~ん、あまり変わってないような気が……。これでは「PhotoShopの新機能を使った」という実感が薄い。
顔つきが変わっちまったぞ!
次に、生成レベルを「標準」にしてやってみた。
おや? 何だか筆者の顔つきが変わってないか?
てか、筆者はこんな濃い顔の男じゃないぞ……。
どうやらこの機能、あくまでもAIが学習データに基づいた予想を立てて写真を修正していくものらしく、生成レベルを上げれば上げるほどAIがいろいろと手を加えていくようになる。これを「高」にしてやってみると……。
お、お前は一体誰だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
筆者は両親共に由緒正しい駿府人で、顔つきもそれに基づいている。要は、典型的な「平たい顔族」だ。にもかかわらず、PhotoShopのこの写真はまるでブラジル人みたいになっちまってるぞ。てか、修正前の写真は歯を見せて笑ってなんかいないし、筋肉もこんな立派じゃない。こ、こいつは澤田真一じゃない!!!
「AIに修正を任せる」ということ
この検証を通じて、「生成アップスケール」機能の卓越した能力と共に弱点も明らかになってしまった。
人物が写っている写真は生成レベルを強くした場合、上のように全くの別人になってしまうという弱点だ。
したがって、この機能は風景写真に用いるのが最も良い選択だろう。
もっとも、風景写真の場合も生成レベルを強くし過ぎると漫画のようになってしまう。
ここで敢えて意地の悪い表現を用いれば、「生成アップスケール」機能を通した写真は「真実を写したものではない」ということだ。
カメラを購入するのが一番!
となると、「その場の風景を嘘偽りなく永久保存したい」と考えた時にほぼ唯一の選択肢となるのが「(スマホではない)カメラを購入する」という行動である。
ここ最近、デジタルカメラやさらにそれ以前のフィルムカメラが見直されている理由は「技量とタイミング次第で劇的かつ修正・補正が加わっていない写真を撮影できるから」ではないか。スマホの登場で、我々現代人は「アプリで修正された写真」に取り囲まれるようになってしまった。一時期、アプリを使ってセルフィー写真を修正することが流行っていたが、それは言い換えれば「写真に嘘を盛り込む行為」である。2025年の人類は、そのような行為に疲れてしまった様子すら見受けられる。
そうした意味で、PhotoShopの「生成アップスケール」機能は確かに便利なものではあるが、同時に「過度に期待をかけられるものではない」と評価するべきだろう。
文/澤田真一
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