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暑さも吹き飛ばす!?ドンキの「ド風量」シリーズがバカ売れしている理由

2025.08.31

■連載/ヒット商品開発秘話

2025年も猛暑に見舞われた日本。不快な暑さを吹き飛ばす大風量家電が今シーズンも好調に売れている。

その大風量家電とは、ドン・キホーテで販売されている『ド風量』シリーズ。ドン・キホーテのプライベートブランド(PB)『情熱価格』で販売されている大風量に特化した家電を2024年5月にシリーズ化したものだ。サーキュレーターをはじめハンディファン、冷風扇などをラインアップ。2024年シーズン(4月1日~9月30日)は売上を4億円から4億5000万円の間で見込んでいたが、最終的にシリーズ累計6億円、11万9000台を売り上げた。

大風量に特化した家電を2024年5月にシリーズ化して誕生した『ド風量』シリーズ。写真は〈3DスイングACターボサーキュレーター〉で、2023年モデルから羽の直径を2cmアップした。風量調節は4段階で最大44畳(3LDK程度)の部屋をカバーできる

風の強いものは突出してよく売れる

『ド風量』シリーズは2023年シーズンに好評だった大風量が特徴の〈3DスイングACターボサーキュレーター〉〈羽なしDCジェットタワーファン〉〈ダブルブレードハンディファン〉をリニューアルし、新たに〈3DスイングDCターボサーキュレーター〉〈大風量DCリビング扇風機〉〈大風量冷風扇〉〈大風量冷却プレートハンディファン〉を投入して、2024年シーズンにシリーズ化した。

大風量が特徴の夏の季節家電を『ド風量』シリーズとしてシリーズ化することにしたのは、例年風の強いものの販売実績が突出していいことにあった。

ダブルブレードハンディファン。2層羽を採用しており、自社ブランドの1層式ハンディファンの「風量弱」と本品の「風量弱」で比較すると風速が1.5倍アップしている。7色にランダム光るLEDを搭載しており、外出先でも室内でも使いやすいよう台座とストラップが付いている
3DスイングDCターボサーキュレーター。〈3DスイングACターボサーキュレーター〉のモーターがAC(交流)モーターから省エネタイプのDC(直流)モーターに代わり、これに伴い風量調節が12段階でできるようになった
大風量冷却プレートハンディファン。肌に直接当てられる冷却プレートに加えて、100段階の風量調整機能を装備。デスクでも使用できる台座が付属する

ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスでPB季節家電の開発を担当する1MDデジタル&バラエティPB企画開発マーチャンダイザー ゼネラルチーフの今井潤氏は次のように話す。

「2022年、23年の夏の季節家電の中で風の強いものはサーキュレーターやハンディファンなど2、3アイテムしかなく、冷風扇などは他社との差別化ができていませんでした。風が強いことはわかりやすいことから、お客様に支持されると考えました」

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
1MDデジタル&バラエティPB企画開発マーチャンダイザー
ゼネラルチーフ 今井潤氏

あえて風量を大きくし、ドンキらしさを打ち出す

サーキュレーターやハンディファンの拡充だけではなく新たに扇風機や冷風扇をつくることにしたのは、風量に特化した扇風機や冷風扇が市場に存在しなかったらからであった。

大風量扇風機。消費電力が少なく、運転音が静かなDCモーター搭載モデルで、風量を5段階で調整することが可能
大風量冷風扇。2023年モデルと比べて風量を152%、風速を125%アップさせ、部屋の隅々まで冷風を届けることができるようになった。保冷剤が4個付属し、冷凍時間を気にせず使用することができる。風量は3段階で調節でき、風量モードはノーマル、リズム、おやすみ風の3モード

「扇風機は市場が落ち込んでいることや使っていて風量が物足りないことから何とかできないかと思い、風量の強いものを開発してみることにしました」と今井氏。モーターの回転数や羽の形状を見直すなどの工夫を施した。一方、冷風扇は自然の柔らかい風に近いことからエアコンの風が苦手な人たちの支持が集められるものだが、あえて風量を大きくすることでドン・キホーテらしさを打ち出せると考えた。

『ド風量』シリーズにはアイテムごとに設定された目標風量があり、クリアした上で安全性と耐久性に問題ないことが確認されたものが上市される。2024年シーズンに発売されたもののうち開発で苦戦したのが、リニューアル発売された〈羽なしDCジェットタワーファン〉であった。リビングになじむ高いデザイン性と大風量を両立することにしたが、従来品とさほど変わらない風量にしかならず、納得いく風量になかなか届かなかった。

羽なしDCジェットタワーファン。デザイン性に欠けた2023年モデルと異なりリビングに違和感なく置けるデザインとしたほか、風速を130%アップ。静音性、節電に優れているDCモーターを搭載し、風量を12段階と細かく調整できるようにした。風量モードは連続運転、リズム、おやすみ、オートの4モード

「搭載しているシロッコファンの回転数を上げても、思ったように風量が上がりませんでした」と振り返る今井氏。モーターの出力を上げて風量アップを試みるも、今度は耐久性が不安視されるなど、なかなか思った通り開発が進まなかった。

風量アップの糸口は風の吹き出し口にあった。大きすぎると風が拡散してしまい、小さすぎると風が届く範囲が狭くなることから、検証しながら吹き出し口の最適な大きさを探っていき、納得いく風量を実現した。納得できるものができたのは、納期ギリギリの2月終盤。例年、夏の終わりから翌シーズンの計画を立て始めることから、計画立案から半年近くかかったことになる。

サーキュレーターの限界を越えるジェットサイクロンファン

2025年シーズンは〈大風量冷風扇〉をリニューアルし残りは継続販売としたほか、新たに〈ジェットサイクロンファン〉〈大風量卓上サーキュレーター〉〈大風量3DスイングDCターボリビングサーキュレーター〉〈360°首振り大風量DCサーキュレーター〉を追加した。継続販売の〈大風量DCリビング扇風機〉と〈大風量冷却プレートハンディファン〉の2つは、店舗によっては取り扱うところもある形としている。

大風量3DスイングDCターボリビングサーキュレーター。2.5~89.5cmまで高さ調節が可能なハイポジションタイプで、床置きタイプにありがちな床に蓄積したホコリの舞い上がりを防ぐ。DCモーターを搭載し、風量を13段階で調整することができる。適用畳数は44畳目安
360°首振り大風量DCサーキュレーター。上下左右に首を振る360°立体首振り機能を持ち、立体的な首振りのほか衣類乾燥モード、空調アシストモードを搭載する。DCモーターを搭載し、風量調節は10段階。適用畳数は30畳目安となっている

〈大風量冷風扇〉のリニューアルは、「ダサい」「大きい」といったデザインやサイズに関する不満の声を受けて実施することにした。リニューアル後は、幅をそれまでの60cmから26cmと大幅にスリム化。モーターをそれまでのACモーターから節電効果の高いDCモーターに変更し、風量調整をより細かくできるようにした。幅が狭くなると吹き出し口も狭くなるので風量の観点から見るとマイナスでしかないが、モーターの出力と吹き出し口のサイズのバランスを見直して風量は維持した。カラーもそれまでの白/黒から黒へと変更しイメージを刷新した。

2025年シーズンにリニューアルされた大風量冷風扇。2024年シーズンのものより大幅にスリム化が図られ狭小物件にも対応できるようになったほか、カラーリングも黒一色に変更された。風速も8.9m/sから9.6m/sへアップしている

新商品のうち〈ジェットサイクロンファン〉は、羽をモーターで回転させる従来のサーキュレーターではこれ以上の風量アップが望めないことから開発した。既存のサーキュレーターと同程度のサイズながら風量を上げるためにシロッコファンを採用。「サイズがちょうどいいシロッコファンが調達できるかどうか、風量が大きくなるかどうかが不安でした」と今井氏は振り返るが、最初の試作品で狙った風量が得られたという。ドン・キホーテ公式TikTokにアップした商品紹介動画では「室内干しに最高」というコメントが複数書き込まれており、冷房以外の面でも好評を博している。

ジェットサイクロンファン。プロペラファンよりも風量性能に優れたシロッコファン(換気機器に使用される細長い板状の羽根が筒状に取り付けられているファン)を搭載し、風速11m/sを実現した。無骨なデザインによりアウトドアでも使いやすく、外に持ち出しやすいよう持ち手もついている

〈大風量卓上サーキュレーター〉は、今井氏が欲しかったものを形にした。「会社の中が熱い上に、私の席はエアコンの風が当たらないものですから卓上扇風機を使っているのですが、風量が足りません。卓上扇風機で風が強いことを謳ったものがほぼ皆無でした」と明かす今井氏。卓上サイズでありながら6畳程度までの部屋の空気循環ができる風量が実現できたら汎用性が高くなると判断し、ベッドサイドにできるちょっとしたスペースに置けるサイズ感を目指して開発した。

大風量卓上サーキュレーター。手のひらサイズの充電式で、DCモーターを搭載。弱運転では静かな風を届けデスク作業に集中でき、強運転では最大4.6 m/sの風速で空気を撹拌する

2025年シーズンは現在のところ、2024年シーズンと比較すると売れ行きが好調だ。4月1日から7月9日までの売れ行きを比較すると、2024年は売上がシリーズ累計約3億円で販売点数が6万5000台なのに対し、2025年は売上がシリーズ累計3億5000万円で、販売点数は7万1000台となっている。

TikTokにアップ後2日間で100万再生達成

売場が狭いところ以外では、「風が強い『ド風量』シリーズ」と銘打った統一の販促POPや、「フラッグ」と呼んでいる天井から吊るす旗状の掲示物を使って売場をつくり、そこに商品を集めることにした。また、補助POPもつけ、風量や風量が強い理由、前年モデルからどれだけ風量がアップしたか、といったことも説明するようにしている。

上からフラッグを下げるなりしてつくった『ド風量』シリーズの売場(MEGAドン・キホーテ成増店)
商品の横に置かれたり上から掲示されたりしている補助POP。売場に定員が不在でも風量が大きな理由などがわかるようになっている(MEGAドン・キホーテ成増店)

SNSもドン・キホーテ公式Instagramや公式TikTokなどをメインに活用。TikTokで取り上げると、反応が他の商品よりもいいという。中にはアップから2日間で100万再生を超えた動画もあるほど。店舗によってはTikTokにアップした『ド風量』シリーズの動画をつなげて店頭で流し、『ド風量』シリーズ全体を紹介しているところもある。

2024年シーズンで一番売れたのは、売上、台数ともに〈3DスイングACターボサーキュレーター〉の黒。2025年シーズンも現時点では販売台数は同じだが、〈3DスイングDCターボサーキュレーター〉の黒の売れ行きが伸びており、売上では〈3DスイングACターボサーキュレーター〉の黒を抜いてトップになっている。売上の2位は〈大風量冷風扇〉であり、〈3DスイングACターボサーキュレーター〉は3位となっている。冷風扇は2024年より多く用意したものの、すでに在庫が店頭流通分のみとなっている。

〈3DスイングDCターボサーキュレーター〉の黒の売れ行きが伸びている理由を、今井氏はこのように分析する。

「パッケージでも謳っていますが、以前から言われてきたDCモーターの節電効果が浸透してきたことが大きいと思われます。本体価格はACモーターを使ったものよりやや高いですが、サーキュレーターは年中使いますので、浮いた電気代で高くなった分がペイできてしまいます」

取材からわかった『ド風量』シリーズのヒット要因3

1.わかりやすいコンセプトとシリーズ名

風量の強さに特化したサーキュレーターやハンディファンなど夏の季節家電各種で構成。店員から細かい説明を聞くまでもなく、『ド風量』というシリーズ名から商品の特徴がつかめるほど、わかりやすさに徹した点が好評を博した。

2.高いコストパフォーマンス

ディスカウントストアのPB商品なので、生活者はNB商品よりも安価であることを期待する。同スペックの他社品と比べたら絶対安いことが確実に求められるが、期待される低価格を実現しコストパフォーマンスの高さを示すことができた。

3.ドンキらしい個性的なラインアップ

自然に近い柔らかい風が特徴の冷風扇で風を強くしてみたり、サーキュレーターと同程度のサイズ感ながらシロッコファンを使ったことによりさらに強力な風量を実現したりと、他社ではなかなかお目にかかれない個性的な商品を揃えた。ドンキらしさ全開といってもよく、生活者の期待通りだった。

今井氏は通勤の2時間で、電車内で『ド風量』シリーズのハンディファンを使っている人を見かけることがあるという。「買って使ってくれている人がいるのを見ると、朝からめちゃくちゃ嬉しくなります」と話す。

この夏、圧倒的な風量で暑さから助けられた人も多いはず。2026年シーズンも規格外のド風量で猛暑を吹き飛ばしてもらいたい。

『情熱価格』ブランドサイト

取材・文/大沢裕司

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