
「同期が先に昇進した」「自分だけが取り残されている気がする…」同期が昇進・を耳にしたとき、純粋に喜ばしい気持ちと、自分と比較して悔しい思いや焦りなど複雑な胸中になることがあります。感傷的になるなど、心穏やかでない場合もありますが、ここから自身がどういった方向に進むかによって今後の将来が大きく左右される、勝負所になります。本稿では、その焦りや嫉妬を自分自身の成長を加速させるための強力なエネルギーに変える、具体的な思考法とアクションを解説します。同期との「差」を成長のヒントに変え、着実に結果を出すための道筋が明確になるはずです。
1. 感情論から脱却し「差分」を直視する
同期の活躍を耳にしたとき、私たちの心には賞賛の気持ちと同時に、焦りや嫉妬といった複雑な感情が渦巻きます。「次は絶対に自分が!」と固く決意するものの、その意気込みは根拠のない精神論に過ぎず、数日もすれば元の状態に戻ってしまう…そんな経験はないでしょうか。緩んだネジを再度根性で締め直したとて、すぐにネジは緩むか、ネジ穴が馬鹿になるかです。この時、確認しないといけないのは、そもそもネジの寸法が合っているのか、ネジの取り付け位置が合っているのかなど、結果が出るための構造を見直す必要があります。
本当に必要なのは、感情のリセットや根性論ではありません。まず取り組むべきは、同期と自分の間に生まれた「差分」を冷静に、そして客観的に分析することです。なぜ彼は結果を出し、自分は出せていないのか。そこには明確な原因があるはずです。気を紛らわせたり、ネジを締めるのではなく違いを徹底的に見直す必要があります。
2. コントロールできる領域に集中する技術
私たちは、自分の力が及ばないことまで気に病んでしまう傾向があります。「次の評価で上司はどう判断するだろう」「他の同期は自分のことをどう思っているだろうか」といった未来の評価や他者の内心は、まさに「コントロールできない領域」です。
野球のバッターが打席に立ったとき、「ここで三振したら格好悪いな」「明日のスポーツ新聞で何を書かれるだろうか」と考えていては、決して良い結果は出ません。バッターが集中すべき唯一のことは、ピッチャーが投げるボールを捉え、良い結果を出すことだけです。
仕事においても全く同じことが言えます。私たちが変えられるのは、自分の「行動」と、それによって生み出される「事実としての結果」までです。その結果をどう評価するかは、他者(上司や会社)の領域であり、私たちが直接コントロールすることはできません。
変えられない世界で心をすり減らすのではなく、自らがコントロール可能な世界、つまり「今日の自分の行動」にすべてのエネルギーを注ぎ込む方が、はるかに生産的です。
具体的には、以下の二つを意識的に切り分けてみましょう。
• コントロールできること:
o 今日のタスクリストと、それを完了させること
o 知識をインプットするための学習時間
o 提案資料のクオリティを高めるための推敲
o 上司への報告・連絡・相談の頻度と質
o 自分の機嫌やコンディションの管理
• コントロールできないこと:
o 上司や同僚の感情や評価
o 会社の経営方針や人事異動
o 景気や市場の動向
o 同期の昇進スピード
まずは自分がやるべきことをやり切る。評価はその後についてくるものだと割り切ることで、目の前の仕事への集中力は劇的に高まります。
3.「言い訳」を成長の起爆剤に変える逆転の発想
結果を出している同期と自分を比較したとき、「でも、彼の方が環境に恵まれているから」といった考えが頭をよぎることがあります。担当顧客の違い、上司との相性、与えられている権限や予算の差など、ゲームのルールがそもそも不平等だと感じることもあるでしょう。
一般的に「言い訳をするのは格好悪い」「言い訳をしたら負けだ」という風潮があります。しかし、ここでは敢えて「言い訳を積極的に活用する」ことを提案します。
これは、自分の不出来を正当化するためではありません。例えば、必要な環境設定や権限を要求し、それが認められた状況を想像してみてください。
「○○というルールを設定してもらえれば、大きな成果を出せるのに」
「あの部署と連携できれば、もっとスムーズに進むのに」
「〇〇というツールがあれば、業務効率が格段に上がるのに」
もしその要求が認められたら、どうなるでしょうか。もうあなたには「言い訳」というカードは残されていません。そういった意味では、「言い訳をしない」ということは「言い訳は美しくない」という言葉の裏で、行動しない理由を残し続けるのか。それとも、言い訳をすべて解消し、結果を出すしかない状況に身を置くのか。どちらがあなたの成長に繋がるかは、言うまでもないでしょう。自ら退路を断ち、結果を出すしかない状況に自分を追い込むことになります。これほど強力な成長環境はありません。
4. ゴールを定め、圧倒的な行動量で未来を変える
同期との差を分析し、自分のやるべきことに集中し、必要な環境を手に入れたら、最後に残るのは「行動」あるのみです。しかし、やみくもに行動しても結果には結びつきません。重要なのは、明確なゴールを設定し、そこから逆算して必要な行動量を定義することです。
例えば、「半年後の〇〇という資格試験に合格する」というゴールを設定したとします。そのためには、合計で300時間の学習が必要だと分かれば、一日あたり約1.7時間の学習時間を確保しなければならない、という具体的な行動量が定義できます。
仕事においても同様です。 「次の四半期で営業成績トップになる」というゴールなら、
• そのためには、いくらの売上が必要か?
• その売上を達成するには、何件の成約が必要か?
• その成約数を達成するには、何件の商談が必要か?
• その商談数を確保するには、何件のアポイントが必要か?
このようにゴールを細分化し、日々のタスクレベルにまで落とし込むことで、「今日何をすべきか」が明確になります。あとは、その行動計画に沿って、集中して走り続けるだけです。
まとめ
同期の活躍に焦りを感じたとき、それはあなたの成長の大きなチャンスです。感情に流されることなく、この記事で紹介した思考法を実践してみてください。
他者との比較の上で、自身がコントロールできない世界に思いを巡らせ続けることは、集中できていない状態で大きなロスタイムでもあり、結果にも繋がりません。その悔しい思いのエネルギーの向きを「自らがコントロールできる世界」へと変えることで次のステージが見えてくるはずです。
文/識学コンサルタント 山口裕弘