
2013年、相模屋食料が『ザクとうふ』(※)を発売し、ガンダムファンを驚かせた。アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツ「ザク」の色をした緑色の豆腐を、ザクを模した容器に入れたこの商品は大ヒットを記録し、さらに『鍋用!!ズゴックとうふ』や『ビグ・ザムとうふ』などシリーズ商品が誕生した。
この企画を立ち上げ、製造、販売に持っていったのは、同社の鳥越淳司社長。『ザクとうふ』(※)を作り出したことからわかるように、かなりのガンダムファン、そしてガンプラ好きだ。出会いは小学生の時に遡る。
第一次ガンプラブームの中、最初に買えたのは『1/144 ゾック』だった!!
「小学校2年生の時にガンプラブームが起きました。あの時は〝何が買えるか〟というよりも、ガンプラであれば〝何でもいい!〟という状況。買えた人は、神みたいな存在でしたね。最初に買えたのは『1/144ゾック』で、次いでゴッグ、ゲルググを手に入れました。本当は700円くらいのシャア専用ザクがほしかったのですが、300円しか持っていなくて諦めました。仕方なく、段ボールを使ってシャアザクを作りましたよ」
■1981年8月発売
『こんなの作ったよ』って自慢した『1/144 ゴッグ』
一番記憶に残っているのは2番目に購入した『1/144 ゴッグ』。
「アニメの設定で他のMSより少し大きいのか、ほかのガンプラよりも大きくて、作り上げた時の感動が一番でしたね。パーツをハサミで切って、ランナーの跡を爪切りのヤスリで削って、紙やすりも使って作りました。がんばって塗装もして、友達に『こんなの作ったよ』って自慢した日のことを鮮明に覚えています」
■1981年5月発売
大人になってからもガンプラ作りは続いた。
「『RG 1/144 シャア専用ズゴック』が記憶に残っています。ゴッグが好きだったように、基本的に水陸両用のモビルスーツがお気に入り。それもあって!? 鍋に入れて食べる『鍋用!ズゴックとうふ』を作りました」
■2014年7月発売
とうふに注ぎ込まれまくるガンプラ愛
鳥越社長のあふれんばかりの〝ガンプラ愛〟は『ザクとうふ』に活かされる。
「ガンプラがほしくてほしくて仕方がなかった〝あの頃〟のこだわりを全部ぶつけてみました。例えば、『ズゴックとうふ』(※)は容器にこだわりがあります。ズゴックは上から見るとかっこいいんです。その角度は25.9度なのですが、それを『ズゴック度』と呼んでいます。容器の角が白くなっているんですが、これはパックとしてはダメなんですよ。でもガンプラの汚し塗装っぽくてかっこいいので、わざと残しました」
鳥越社長のとうふをガンプラに近づけようとする思いは、まだまだ続く。
初の〝組み立てるとうふ〟として発売された『ビグ・ザムとうふ』(※)はガンプラの箱に見えるパッケージを採用。

「『トリプル・ドムとうふ』(※)は頭部の赤い所を別パーツで作っていて、はめるようになっている。これはガンプラをイメージしています」
自らに課した掟を破った『百式とうふ』
実は鳥越社長は根っからのジオン派。とうふは「ザク」「ズゴック」「ビク・ザム」「ドム」と全てジオンのモビルスーツを採用した。それは、「とうふでジオンのモビルスーツを量産することで、連邦を倒したい」という思いがあるからだ。しかし、2002年に発売した『百式とうふ』で、自らに課した掟? を破ることになる。その理由は、やはり深すぎるガンプラ愛からだった。
「ガンプラを塗装するのはテクニックが必要で小学生にはハードルが高かったのですが、何とか上手に塗れると感動したもの。それをとうふでやってみたくなったんです! そこで金粉入りカレーソースを塗る『百式とうふ』(※)を販売しました。〝とうふを塗る〟というこれまでにない商品を実現するために苦労しましたね」
鳥越社長にとって『ザクとうふ』をはじめとした『Gとうふ』シリーズは、ただの商品ではない。
「私にとって『ザクとうふ』は作品なんです。趣味でやっていたので、売れなくてもいい。もちろん、売れたほうがいいんですけどね(笑)」
湯どうふのように熱々のガンプラ愛! 鳥越社長が新たな『Gとうふ』シリーズの開発計画を立てる日も近い?
※『ザクとうふ』『ズゴックとうふ』「ビグ・ザムとうふ」『トリプル・ドムとうふ』『百式とうふ』は、販売を終了しています。
取材・文/金子長武 撮影/土橋位広
(C)創通・サンライズ
DIME最新号は、プラモデルの常識を打ち破ってきたガンプラ45年の軌跡と”その先”を徹底取材!付録は模型趣味で大活躍する「赤いリューター」! 完売目前なので、書店へGO!!
