
人材不足が叫ばれる中で、優秀な若手人材の確保と定着が企業にとって重要な経営課題になっている。若手従業員の働きがい向上は人材確保にとどまらず、企業の生産性や競争力を高める重要な経営戦略としても注目を集めている。
Great Place To Work Instituteのライセンスを受けて運営されている「働きがいのある会社」に関する調査・分析を行うGreat Place To Work Institute Japan(GPTW Japan)は、2025年版の日本における「働きやすさ」と「やりがい」の両面から評価した「働きがいのある会社」若手ランキングを発表した。
今回のランキングは、「働きがい認定企業」(2023年7月~2024年9月調査実施)の中から特に若手(34歳以下)の働きがいに優れた企業を規模別に上位5社ずつ選出している。
2025年版 日本における「働きがいのある会社」 若手ランキング選出企業一覧
各部門(従業員規模別)の順位は以下の通り。
*()内は前回(2024年版 若手ランキング)の順位
■⼤規模部門(1000人以上)
1位(2位)ディスコ(製造業/東京都)
2位(―) SmartHR(サービス業(他に分類されないもの)/東京都)
3位(―) セールスフォース・ジャパン(情報通信業/東京都)
4位(1位)アメリカン・エキスプレス(金融業,保険業/東京都)
5位(―) Hilton(宿泊業,飲食サービス業/東京都)
■中規模部門 (100人~999人)
1位(1位)フロンティアホールディングス(不動産業,物品賃貸業/大阪府)
2位(―) テックタッチ(情報通信業/東京都)
3位(4位)Box Japan(情報通信業/東京都)
4位(3位)アチーブメント(学術研究,専門・技術サービス業/東京都)
5位(―) CrowdStrike(情報技術/東京都)
■⼩規模部門 (25人~99人)
1位(2位)ヘルスベイシス(情報通信業/東京都)
2位(1位)イベント21(サービス業(他に分類されないもの)/奈良県)
3位(―) Mahalo(分類不能の産業/神奈川県)
4位(―) Legaseed(学術研究,専門・技術サービス業/東京都)
5位(―) and US(製造業/富山県)
■成功要因は価値観採用と若手の声の吸い上げ
今回のランキングの中規模部門1位のフロンティアホールディングスには、調査に合わせてGPTW Japanによる取材も行なわれている。その成功要因は、複数の施策が相互に連携している点が挙げられる。
特徴的なのが選考過程で丁寧に経営理念を伝え、共感した人材のみを採用する「価値観採用」と毎週開催の”改革俱楽部”による「若手の声の吸い上げ」。これらの施策に加えて、内定者期間からの関係構築や理念浸透の仕組みなども含めた包括的なアプローチが働きがいの高い組織を実現しているという。
Great Place To Work Institute Japanコンサルタントの岡部宏章氏は、フロンティアホールディリングスについて「非常に重要だと思ったのは、採用からはじまる一連のプロセスすべてで一貫性を持ち、さまざまな工夫がなされているということです。
単発的な施策や取り組みだけでは、一時的に若手の意向が上がることはあるかもしれませんが、中長期的な働きがい向上という意味では不足です。
成功要因は、価値観採用による土台づくり、内定者期間からの継続的な関係構築、経営理念の行動レベルでの浸透、そして若手の声を拾う仕組みという4つの要素が相互に連携していることです。特に社長をはじめとした経営陣が各施策に直接関与し、トップダウンとボトムアップの両方向からアプローチしている点が印象的でした。
このような一貫したプロセスの構築を支えているのは、経営理念「縁ある人への価値ある貢献と全従業員の物心両面の幸福の追求」の達成を会社の最優先事項として捉える姿勢です。組織におけるすべての活動はこの経営理念に帰着すること、業績はその後についてくるものだという社長の信念があるからこそ、ここまで手間や工数を惜しまず、取り組みが継続できます」とコメント。
若手の定着には、会社にあった価値観による採用、内定時からの関係構築、経営理念の浸透、声を拾っていく仕組みなど相互のコミュニケーションを含めた働きがいの構築が重要な要素になっているようだ。
■「働きがいのある会社」調査概要
調査期間:2023年7月~2024年9月(2025年版調査)
参加社数:657社
評価方法:GPTWでは、ランキング参加企業で働く従業員にアンケート調査を実施し、その結果が一定レベルを超えた会社を「働きがい認定企業」として発表。本ランキングは、「働きがい認定企業」(2023年7月~2024年9月調査実施)の中から、「若手従業員(34歳以下)の回答結果」、「若手従業員比率などの基本会社データ」の2つの評価観点において特に優れた企業を選出したもの。
調査内容:GPTWが提唱する“全員型「働きがいのある会社」モデル”に基づく2種類のアンケートで構成。
(1)働く人へのアンケート
選択式設問(60問)・自由記述式設問(2問)・属性・認識を問う設問(8問)に働く人が無記名で回答。
(2)会社へのアンケート
企業文化や会社方針、人事施策(採用、経営層からの意見浸透、従業員からの意見聴取、人材育成、ダイバーシティ、ワークライフバランス、社会・地域貢献活動など)の具体的な取り組み内容を会社として回答。
2025年版 日本における「働きがいのある会社」若手ランキング
構成/KUMU