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従業員に「ヒゲを剃れ!」は違法?裁判で明らかになった〝身だしなみの自由〟の境界線

2025.08.20

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。

上司から

「ヒゲを剃れ!」
「髪を切れ」

言われていませんか?

それが事件になった裁判を解説します。

Aさんは上司の命令をきかなかったんです。

すると、制裁が。

・マイナスの人事評価をされて賃金カット
・担当業務を絞られる

という仕打ちを受けました。

Aさんが慰謝料請求の裁判を起こしました。

結果は!?

(郵便事業〈身だしなみ基準〉事件:大阪高裁 H22.10.27)

以下、わかりやすく解説します。

※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化

どんな事件か

■ ヒゲの程度

・口ヒゲとあごヒゲがありました。
・口ヒゲの横幅は唇の幅。長さは唇に届かない程度
・あごヒゲの幅は唇程度。長さは約1センチ

■ 長髪の程度

・長さは肩まで程度 。ゴムで束ねる髪型(引き詰め髪)

うーん、これも長髪に入るんですね。

■ Aさんの経歴

昭和27年生まれ。昭和45年から働いていました。


昭和60年くらいからヒゲを生やし始め、
 (33歳くらいかな)
平成7年くらいから髪を伸ばし始めました。

さて、Aさんは、平成17年にへ配転となりました。

この局で【ヒゲ剃れ髪切れ】指導が行われたのですが、それまでは注意を受けたことがなかったんです。

■ 身だしなみ基準が制定される

Aさんがその局へ配転された時期くらいに、

身だしなみ基準が制定されました。

局独自の基準も。

ヒゲ不可、長髪不可。

どんな事情があっても一律不可!というものでした。

Aさんからすればオーマイガ基準が制定されたのです。

しかし、Aさんは己のポリシーを貫きます。身だしなみ基準が定められた後も、Aさんはヒゲ、髪型を変えませんでした

■ 担当業務が絞られる

すると、担当業務が絞られちゃいました。

会社から【特殊】業務の【夜間】業務を命じられました。

さらに、課長からの執拗な「ヒゲ剃れ、髪切れ」指導もありました。

■ 人事評価も下げられる

そして、人事評価も下げられました。

詳細は割愛しますが、評価を下げられたことによって7万5600円を失いました(地裁でAさんの請求が認定され、高裁でちょい増額となっています)

おいおい待ってくれよ、ってなりますよね。

AさんはJP労組という労働組合に駆け込みました。

労働組合を通じて、支店長に対し、ひげ・長髪を理由として差別したことの謝罪を求めるなどの要求を行いました。

しかし、会社が応じず。……提訴だ!となりました。

裁判所のジャッジ

Aさんの勝訴です!

▼ ヒゲ・髪型が身だしなみ基準に違反するか

裁判所はザックリ
・どんな服装や髪型にするかは、基本的にその人の自由
・ヒゲ、長髪を一律不可とする規則はダメだわ
・顧客に不快感を与えるようなものだけ禁止する、に読み替えます
・で、あんた、Aさんのヒゲ・長髪を見てよ
・顧客に不快感を与えないよね
・だから身だしなみ基準に違反してないよ
と判断しました。

▼担当業務を絞ったこと・人事評価を下げたことについて

裁判所はザックリ
・担当業務の指定や人事評価には会社に一定の裁量権があるんだけどさ
・裁量権を逸脱したら違法ね
・さっき言ったけど、Aさんのヒゲ、髪型って規則に違反してないのよ
・なのに、担当業務を絞ったこと、人事評価を下げたことは裁量権を逸脱してるわ
・違法ね
と判断しました。

▼ ヒゲをそるよう執拗に求める

課長のダブルパンチがあったようです。

課長は、月に1回以上、別室に呼んで指導していました。

後任のB課長は、2ヶ月に1回程度指導をしてました。

この指導について、裁判所はザックリ

・課長の指導は、再三にわたって行われている
・指導内容は、ヒゲをそり髪を切るよう繰り返し求めるもの
・でも、Aさんのヒゲ・長髪は基準に違反してないのよ
・だから指導は違法ね

と判断しました。

ちなみに、さらに後任のC・D課長からは注意を受けなかったようです。

上司の当たりハズレってありますよね。

▼ほんで、なんぼ?

さて。

まずは慰謝料が30万円です。

これは、担当業務を絞ったことと、ヒゲ剃れ髪切れ指導についての慰謝料です。

そして、マイナスの人事評価をされての賃金カットなどについては、高裁でちょい増額の約14万円となっています。

Aさんは慰謝料として150万円を請求してたんですが……なかなか難しいようですね。

今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
「ムズイ法律を、おもしろく」をモットーにコンテンツを作成している弁護士
YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO

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