
日本では老朽化する社会インフラの維持・点検に関するニーズが急速に高まっている。一方で、自治体や事業者においては人手や予算、ノウハウが不足しており持続可能な運用体制の確保が難しくなっている。
そんな課題に対するひとつの答えとして、パナソニック エレクトリックワークス社(以下、EW社)が、社会インフラ向けトータルソリューションを展開するアルビト社と共同開発した予防保全型インフラ維持管理DXサービス「LD-Map」が注目されている。
点検作用を20分から約2分まで短縮!!
「LD-Map」とは、街路灯やカーブミラーをスマートフォンで撮影するだけの簡易な点検記録と、AI画像解析による劣化診断を可能にしたインフラ管理DXツール。5年に1回行なわれる街路灯などの中間点検を「LD-Map」で標準化することで、現場作業時間を従来の20分から最速で約2分! に短縮できるのだ。加えて、損傷や劣化が見られる部分をAIが「注意」や「危険」と表示。優先順位をつけられるようにしたことで、効率的なメンテナンス計画を立てられるのだ。
つまり、「紙ベースの地図」をデジタルデバイスで確認、個々の「デジカメによる撮影」、「紙ベースの報告書」をアプリだけで調査記録を完結、そして、これまで部品の交換時期などを人の目で判断していた部分をAIが判断……と、点検全般に関わる作業の最小化できるようになるのだ。
ちなみに、上の写真はAIで解析した街路灯下部の画像。赤くなっているところが劣化した箇所なのだが、犬がマーキング(=おしっこ)することで、このように錆びたり、腐食したりして劣化するのだとか。何気なく見ていると気づかないものだが、徐々に街路灯などのインフラ設備が劣化していることが見て取れる例といえよう。
街路灯をスマホで4箇所撮るだけで点検完了!
実際、その現場を見せてもらうために訪れたのは愛媛県新居浜市。新居浜市は、デジタル技術で、地域課題の解決にチャレンジしてもらえる企業・団体を募集するデジタル実装プロジェクト「トライアングルエヒメ」を通じてEW社とマッチングが成立。「LD-Map」の社会実装に向けた実証実験を始めているのだ。
「LD-Map」による街路灯の点検の様子は、下のように実に簡単。
●まずはポールに表示されている管理番号などが記されている標識を撮影。
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●続いて、ポールの設置面を左右から撮影
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●最後に街路灯の全体が入るように撮影
撮影するのは4箇所のみで、確かに早い! 5年に1回の間検査とはいえ、各自治体に無数にある街路灯などのインフラを点検するのは、膨大な時間と人員が必要となる。これだけスピーディーに検査が行なえるのであれば、取り入れる以外の手はない。
EW社では街路灯の国内シェアを約40%も保有しているという。2012年以降、長寿命のLED器具への移行にしたものの、それを支えるポールの長寿命化の取り組みがなかった。昨今、叫ばれている社会インフラの維持管理の課題が、「LD-MAP」のような技術で解決されていくのは必然だろう。まずは愛媛県から! これが成功すれば、近いうちに、自宅の周りでパシャパシャ街路灯を撮影する人が現れるかもしれない。
取材・文/寺田剛治