
2019年に始まった「働き方改革」が契機となり、残業時間は減る一方、副業者数や有給取得率は増えるなど、1つの職場に縛られない働き方・生き方が定着しつつある。
このトレンドと歩調を合わせ、フレキシブルな働き方を可能とするサービスが続出している。
そのひとつが、「おてつたび」。仕事をしながら旅もできるという魅力が多くの人を引きつけ、今では登録者数が8万人を超える。
具体的には、どのような仕組みなのだろうか。運営会社の(株)おてつたびの広報担当である園田稚彩さんに伺った。
宿泊費不要で無料で食事が出ることも
――まず、「おてつたび」の基本的な仕組みについて教えていただけますか?
一言でいいますと、旅先で短期就業できるマッチングサービスです。訪れたい地域で募集している働き口に応募して、採用されたら一定期間働きます。就業時間外は、その地域で自由に旅を満喫できます。
往復交通費は自己負担ですが、宿泊費は雇用主持ちで、無料で食事が出ることもあります。
リーズナブルに旅ができるとか、お金を稼げるというだけではありません。非日常の体験、仕事の経験蓄積、地域の人たちとの交流など、プラスアルファで得るものが大きいのも魅力です。
マイページに基本的な事項を入力するだけで、無料登録できますので、「興味がある」という段階でもOKです。

他方、雇用する側にとっても魅力的なサービスとなっています。今、地方では人手不足が深刻になっており、繁忙期には猫の手も借りたいほど。そうした切実なニーズを満たす弊社のサービスを利用する事業者さんは、増えていますね。
宿泊施設や農家の募集が多い
――募集しているのはどんな業務が多いのですか?
宿泊場所を提供するという要件があるため、宿泊業者が多いですね。仕事内容は、ベッドメイキングや清掃、調理、配膳と多岐にわたります。
もう1つ多いのが繁忙期の農家です。地元では若い働き手が流出し、機械化できない農作業をヘルプできる方が求められています。
このほか、カフェやレストランといった飲食店や酒蔵など、食に関係のあるところが多いですね。

増える中高年の利用者
――発足当初は、若い層の利用者が多かったのが、今では幅広い年齢層が活用しているそうですね。
現状、約半分が10~20代ですが、50~60代の方々が急増して約3割を占めるほどになりました。
定年退職した会社員や子育てを終えた主婦など、時間的な余裕ができて、体力面でもまだまだ元気という方が、新しい経験をしたいとチャレンジしてきます。
お試し移住の一環として、あるいはUターン・Iターンで就職先を見つける目的で利用する方もいます。
雇う側も、肉体労働だから若い人がいいとは限らず、むしろ知識・経験を買って熟年層を歓迎することもあります。「もういい年だから」と気にせず、応募していただければと思います。

現役ビジネスパーソンも歓迎
――「@DIME」読者の中核層である30~40代のビジネスパーソンが、有給と連休とリモートワークを駆使して「おてつたび」を利用するのはどうでしょうか?
比較的短期間の就労であったり、午前中だけ働いてあとはフリーという形態もありますので、ご自身の稼働状況に合うところを探して、ご応募いただければと思います。ただ、事業者様の間で雇用契約か業務委託契約を結んで報酬を得るため、「副業」となる点はご注意ください。
現役で働いているのは強みです。ビジネスマナーはしっかりしているし、即戦力としてすぐ働ける点で、歓迎する事業者は多いはずです。
意外かもしれませんが、今は仕事をしていなくて転職活動中の人が応募する例も少なくありません。どこかに転職する前に、今一度自分の人生を見直したいというのが、動機として多いです。
志望動機やスキルをしっかりアピール
――応募時に注意すべき点はありますか?
定員1、2名に対し、何人もの応募が来ることはままあります。選ばれる確率を高めるよう、マイページのプロフィール欄だけではなく、志望動機や生かせるスキルなどもしっかり書くことをおすすめします。「伊豆では以前働いたことがあり、愛着があります」といった思い入れもアピールするといいですね。
それから、雇われてから「思っていたのと違った」でトラブルにならないよう、募集要項や体験者レビューはきちんと読んで把握しておくことは重要です。また、人間関係でそりが合わないといったこともあるかもしれませんが、あくまで短期就労ですし、社会人経験で培った対人スキルで切り抜ける姿勢も重要です。
そしてなによりも、遊び半分ではなく、お金をいただいての仕事である点を肝に銘じておきましょう。そうした点を踏まえれば、きっと充実した体験を得られるはずです。
文中写真提供:(株)おてつたび
・おてつたび公式サイト:https://otetsutabi.com
取材・文/鈴木拓也
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