省人化を目指して。宇都宮東武ホテルグランデに導入された理由
第一弾として宇都宮東武ホテルグランデにこのサービスが導入された理由は、「人手不足」と「国内在住者のリピーターの多さ」。
ホテル業界は全体的にコロナ後の旅行需要拡大に対応しきれておらず、人手不足が課題で、東武ホテルマネジメントが運営する宇都宮東武ホテルグランデもその一つ。
スムーズなチェックインはホテルスタッフの省人化に繋がり、現在フロントスタッフ3人が稼働しているところを2人に減らせたら、と期待しているという。
また、宇都宮東武ホテルグランデは栃木県総合文化センターや栃木県庁の近くにあり、ビジネス客や学会での利用者など国内在住のリピーターが多いのも特徴。
このサービスの特性上、一度登録すれば、指をかざすだけでチェックインできるため、リピーターにこそ利便性を感じてもらえるのだ。
“国内在住者”というのもポイントで、「SAKULaLa」は外国人旅行客は利用できない。
そのため、今後東武ホテルマネジメントが運営するほかのホテルへのサービスの展開も考えているものの、外国人旅行客がほとんどの割合を占める「東武ホテルレバント東京」などへの展開はまだ先となるようだ。
課題も多く、消費者がSAKULaLaを利用するためのハードルは、「生体情報登録会場」に行かなくてはいけないこと。
関東エリアでは東武百貨店池袋店の池袋カードセンター、東武宇都宮百貨店の宇都宮カードセンター、東武北千住駅の東武鉄道 定期券売り場、期間限定の登録会場などに、一度は足を運ぶ必要がある。
しかし一度登録してしまえば自分の指だけで「決済」や「チェックイン」ができるようになり、クレジットカードを持ち歩いて紛失するリスクも無くなる。
ちなみに指紋ではなく指の「静脈」の動きで認証しているため、物騒な話だが指を切られても悪用されることはないという。
今は限られた施設やホテルのみの展開だが、さまざまな社会課題の解決策としての光を感じる「SAKULaLa」。
導入期は東武グループを中心に展開し、「世の中のショーケースになれたら」と、東武鉄道の経営企画本部 部長・内倉昌治氏は話す。
現在、SAKULaLa登録人数は8,000人超。今後利用できる施設やホテルが増えれば、さらに利用者数も増えることだろう。
お店での買い物も、ホテルのチェックインも、財布やスマートフォンを出す必要はなく、指でかざすだけで良い社会になったら、どんなに楽だろうか──。そんな未来を想像すると、ワクワクする。
取材・文/小浜みゆ