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「ジャングリア沖縄」を仕掛けた株式会社刀はいつ上場するのか? 越えなければならない課題とは

2025.08.10

2025年7月25日に「ジャングリア沖縄」がオープンしました。世界自然遺産「やんばる」を擁する大自然没入型のテーマパークで、恐竜などをテーマにしたアトラクションや温泉を堪能できる施設。すでに多くの人で賑わい、連日話題になっています。

この施設を手がけたのがマーケティング会社の刀。株式上場を視野に入れて日本に新たな風を送ろうとする一方、課題も鮮明になってきました。

ジャングリアで会社の運命がすべて変わる

刀はマーケターの森岡毅氏が立ち上げた会社。森岡氏はP&Gジャパン・マーケティング本部に入社して、マーケティングノウハウを徹底的に磨きました。その後、USJのV字回復を導く立役者になったことで有名です。

刀を設立した後は、「丸亀製麺」のマーケティング支援や「西武ゆうえんち」のリニューアルなど、幅広い分野で活躍しています。

「丸亀製麺」は店内で粉から作るという原点に立ち返り、それをブランド価値として消費者に広めたことで、復活への礎を築きました。

「西武ゆうえんち」は昭和レトロの雰囲気を再現。西武ホールディングス代表取締役社長の後藤高志氏から高評価を得ています。

会社の潮目が大きく変わったのが、2020年の大和証券グループ本社との資本業務提携でした。刀は140億円もの出資を受け、地方にあるテーマパークなどの集客施設に投資し、経営支援を行うという事業の強化を図りました。地域の金融期間や投資家などからも資金を募り、1000億円規模で地方創生を後押しするというのです。

ただし、このとき調達した140億円のうち、30億円はジャングリアに資金を回しています。

実はジャングリアの構想が立ち上がった当初、刀は資金の調達に苦慮していました。コンサルティングが事業のメインでテーマパーク運営の実績が少なく、コロナ禍で観光業も大打撃を受けていたためです。

メガバンクからの融資が閉ざされた一方で、大口の資金の出し手となったのが大和証券グループ本社でした。また、刀は官民ファンドであるクールジャパン機構(株式会社海外需要開拓支援機構)からも80億円の出資を受けました。この資金もジャングリアに投資をしています。

結果的に刀はジャングリアの開業に必要な資金を集めることができましたが、証券会社や投資ファンドのマイナー出資を受け入れたことにより、上場など投資家に対する出口戦略を強く意識しなければならなくなったのです。

空港から離れていても好立地の理由とは?

刀のCFOである立見信之氏は日経BOOKPLUSのインタビューに応えており、「業績で見ると、東証グロース市場には上場できるレベルです。ただ、上場するなら、大きく出たい」「大型上場を狙っていきたいです」と話しています(「森岡毅・刀、ジャングリア開業後にIPO視野」)。

一般的に上場に必要な準備期間は3年。CFOの言葉通りに受け取ると、グロース市場であれば、最短で2028年には上場できることになります。しかし、狙っているのは大型上場。従って、刀はジャングリアで目に見える成果を残さなければなりません。そしてその成果とは入場者数であり、テーマパーク事業の業績です。

ジャングリアは那覇空港から車で1.5~2時間ほどで、遠いことを問題視する人が多いですが、そのこと自体が集客のハードルになるようには見えません。ジャングリアは主要な沖縄観光の動線の中に含まれているからです。

沖縄県は観光客の動態データを公開しています(「観光客の動態データの取得及び分析」)。ジャングリアは今帰仁村と名護市に跨っていますが、今帰仁村の立寄り率は22.4%で10位、名護市は44.4%で3位。

名護市は北部の観光拠点であり、今帰仁村には数々のマリンスポーツが楽しめる古宇利島があります。そして、ジャングリアから車で30分ほど走ると、「沖縄美ら海水族館」があるのです。美ら海水族館は年間300万人が訪れる人気の観光スポット。

そして名護市には動物園があるものの、集客力が強い観光スポットには欠けている印象がありました。ジャングリアは立地においては恵まれており、沖縄北部を観光するついでに立ち寄る観光客にも期待ができるのです。

刀の力が試されるのは、初めて訪れた人々をリピーターにできるかどうか。東京ディズニーリゾートは9割以上がリピーターだと言われており、新規集客に頼らない自走型の施設づくりが何よりも重要です。

確率論を捨てて顧客と向き合う必要性に迫られる

足元でジャングリアの問題となっているのが人気アトラクションの待ち時間。一つ楽しむのに数時間待ちも当たり前の状態。とにかくこれを早く解消しなければ、施設のリピート利用には期待ができません。

オペレーションの改善である程度の解消を図ることはできるはずですが、「ダイナソーサファリ」のようなアトラクションは回転のきくものではなく、そもそも時間がかかる設計になっています。「ヒューマンアロー」などのスリルを楽しむアトラクションも同様です。

これだと来場者は炎天下の中で時間を持て余すことになります。これではテーマパークそのものの体験価値が低くなってしまい、リピート利用には期待できないでしょう。

刀は顧客満足度を高めることに真正面から取り組まなければなりません。森岡氏は高度な数学を用いた統計や確率を好み、マーケティングに活用してきました。しかし、顧客一人ひとりに真摯に向き合うという、新たな局面に入ったように見えます。

文/不破聡

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