「無碍にする」と「無下にする」は、どちらも「相手の厚意を軽んじる」「ぞんざいに扱う」といった意味を持つ表現だが、そのニュアンスには微妙な違いがある。本記事では、「無碍にする」と「無下にする」の意味や違い、使い方や例文を交えながら、わかりやすく解説する。
目次
「無碍にする」と「無下にする」は、どちらも「相手の厚意を軽んじる」「ぞんざいに扱う」といった意味を持つ表現だが、そのニュアンスには微妙な違いがある。
言葉の選び方ひとつで、相手に与える印象は大きく変わる。特に丁寧なコミュニケーションが求められるビジネスや人間関係の場では、正しく理解して使い分けたいところだ。
この記事では、「無碍にする」と「無下にする」の意味や違い、使い方や例文を交えながら、わかりやすく解説する。
「無碍にする」とは

「無碍にする(むげにする)」とは、相手の厚意や申し出をぞんざいに扱うことを意味する表現だ。ここでは、「無碍にする」の正しい意味や使い方、実際の例文、さらに類語・言い換え表現までをわかりやすく紹介する。
■「無碍にする」の意味
「無碍にする(むげにする)」とは、相手の申し出や厚意をあっさりと断ったり、取り合わずに軽く扱ったりすることを意味する表現だ。
本来「無碍」は、「妨げがない」「自由である」といった仏教由来の肯定的な意味を持つが、「無碍にする」という形で使われる場合は否定的なニュアンスになる。
たとえば、好意で差し出された提案や申し出を、思いやりなく断るような場面で使われ、「あの人の気持ちを無碍にするなんてひどい」といった言い回しがされる。
相手の気持ちを軽視する印象を与えるため、使いどころには注意が必要な表現である。
■「無碍にする」の使用例
「無碍にする」は、相手の厚意や申し出を軽んじたり、思いやりなく断ったりする場面で使われる表現だ。以下のような例文で、その使い方がよくわかる。
使用例1:
せっかくのご厚意を無碍にするようなことは、できません。
使用例2:
後輩からの提案を無碍にするのではなく、まずは一度耳を傾けるべきだ。
使用例3:
彼女の気持ちを無碍にしたことを、あとになって深く後悔した。
このように、「無碍にする」は人間関係ややり取りにおいて、相手の心情を無視するような言動を表す際に使われることが多い。やや丁寧で感情を含んだ表現として、文章や会話で使われることがある。
■「無碍にする」の類語・言い換え方
「無碍にする」は、相手の厚意や申し出を思いやりなく断る、または軽く扱うことを意味する表現だ。似た意味を持つ類語や言い換え表現としては、以下のような言葉が挙げられる。
- ぞんざいに扱う:雑で丁寧さに欠けた対応をすること
- 軽んじる:相手や物事の価値を低く見積もって扱うこと
- ないがしろにする:大切にせず、軽視して扱うこと
- 冷たくあしらう:思いやりのない態度で対応すること
なお、対義語としては「丁重に断る」「心を込めて対応する」など、相手の気持ちを尊重した対応を示す表現が挙げられる。丁寧さや配慮のニュアンスを含む言葉を選ぶことで、印象をやわらげることができる。
「無下にする」とは
「無下にする(むげにする)」とは、相手の厚意や申し出を全く取り合わずに、ぞんざいに扱うことを意味する表現だ。ここでは、「無下にする」の正しい意味や使い方、実際の例文、さらに類語・言い換え表現までをわかりやすく紹介する。
■「無下にする」の意味
「無下にする(むげにする)」とは、相手の気持ちや申し出をまったく取り合わずに、冷たく拒否したり、はねつけたりすることを意味する表現だ。「無下」は「まったく価値がない」「無意味」といった否定的な意味を持ち、相手をないがしろにするような強い拒絶のニュアンスがある。
たとえば、誰かの厚意や提案に対して何の配慮もなく断ったり、無関心な態度を取ったりする場面で使われる。人間関係においては相手を傷つける印象を与えるため、使い方には注意が必要な言葉である。
■「無下にする」の使用例
「無下にする」は、相手の思いや申し出を冷たく拒絶したり、全く受け入れようとしない態度を表すときに使われる。丁寧な表現でありながら、強い拒絶や軽視のニュアンスを含む点が特徴だ。
使用例1:
せっかくの申し出を無下にするのは失礼だと思い、いったん預かることにした。
使用例2:
彼の提案を無下にせず、まずは検討してから返事をするようにしている。
使用例3:
応援してくれる気持ちを無下にされたと感じて、ひどく落ち込んだ。
このように、「無下にする」は人間関係や対話の中で、相手を冷たく扱うような場面で使われることが多い。使う際には、相手の受け取り方にも配慮が必要だ。
■「無下にする」の類語・言い換え方
「無下にする」は、相手の気持ちや申し出を冷たく拒絶したり、取り合わない態度を表す言葉だ。似た意味を持つ表現や言い換えには、以下のようなものがある。
- ぞんざいに扱う:雑で丁寧さに欠けた対応をすること
- 突っぱねる:はっきりと拒絶すること(やや強めの表現)
- ないがしろにする:大切にせず、軽視して扱うこと
- 冷たくあしらう:思いやりのない態度で対応すること
これらの表現も「無下にする」と同様に、相手の厚意や言葉を軽視するニュアンスを含んでいる。ただし、言葉によって丁寧さや感情の強さに差があるため、文脈に応じて適切に使い分けることが大切だ。
また、対義語としては「丁重に断る」「心を込めて受け止める」といった、相手を尊重する対応が挙げられる。相手との関係性に配慮した表現選びを心がけたい。
「無碍にする」と「無下にする」の違い

「無碍(むげ)」と「無下(むげ)」は、読みは同じだが、意味はまったく異なる言葉だ。
- 無碍:妨げがなく、何にもとらわれない自由な状態を表すポジティブな表現。仏教用語としての背景を持ち、とどこおりなく進む意味を持つ「融通無碍」などのフレーズにも見られる
- 無下:「考慮すべき価値がないとして冷たく扱う」という否定的・軽視的な意味を持ち、相手に対して無関心・無視に近い態度を示す表現
つまり、「無碍」は自由で妨げのない前向きな意味を持つのに対し、「無下」は相手を冷たくぞんざいに扱う否定的な意味となる。
「無碍にする」と「無下にする」は、どちらも「相手の厚意を軽んじる」「ぞんざいに扱う」といった意味を持つ表現だが、「無下にする」の方が、相手を価値がないと見下すような強い拒絶の表現になる。
この違いを押さえておかないと、特に口語で「むげ」と聞いたときに誤解を招く恐れもあるので注意しておこう。
まとめ
「無碍にする」と「無下にする」は、どちらも相手の気持ちや厚意に対して否定的な態度を示す表現だが、含まれる意味やニュアンスには違いがある。特に「無下にする」は、相手の気持ちや厚意を冷たく拒絶するという強い否定のニュアンスを含むため、誤用には注意したい。
場面や関係性によって言葉の印象は大きく変わる。だからこそ、正しい意味を理解し、丁寧に使い分けることが大切だ。ビジネスシーンでの人とのやり取りを円滑にするためにも、「無碍にする」と「無下にする」の違いをしっかり押さえておこう。
文/太田 佳祐(おおた けいすけ)
人材系企業にて求人広告の営業や人材紹介部署の立ち上げやマネジメントを経験。転職し、新規事業部門にて新事業の立ち上げや採用業務に従事したのちに独立(ライター・カウンセラー・セミナー講師)。現在は株式会社レンジャー代表取締役/一般社団法人日本アカウンタビリティ・パートナー協会会長としてプロスポーツチームや自治体、企業や個人の目標達成を伴走型でしながら、ライターとしての執筆や講演活動も行っている。







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