ビジネスシーンでは、「甘んじて受け入れる」場面に出くわすことがある。本記事では、「甘んじて受け入れる」の意味やニュアンス、ビジネスシーンでの使用例、さらに類語・対義語まで詳しく解説する。
目次
仕事をしていると、不本意な決定や厳しい指摘を「甘んじて受け入れる」場面に出くわすことがある。そんなとき、どう対応すればよいのか戸惑った経験はないだろうか。
しかしこの言葉、実は本当の意味や正しい使い方を理解しているだろうか?「甘んじて受け入れる」の意味やニュアンス、ビジネスシーンでの使用例、さらに類語・対義語まで詳しく解説する。
「甘んじて受け入れる」の意味と注意点

不本意なことを受け入れる際によく使われる「甘んじて受け入れる」だが、その本来の意味やニュアンスをまず押さえておきたい。併せて、使用する上での注意点についても確認しよう。
■「甘んじて受け入れる」の意味
「甘んじて受け入れる」とは、満足はしていないが仕方なく受け入れるという意味の表現である。もともと「甘んずる」には現状に満足するという意味があり、「清貧に甘んずる」のように積極的に受け入れる場合にも使われた。しかし現代では、そこから転じて「やむをえないものとして受け入れる」というニュアンスで使われている。
例えば望まない人事異動や不利な契約条件などに対して、「その結果を甘んじて受け入れる」といった使い方をする。また、「~しかない」という表現とともに「甘んじて受け入れるしかない」のように用いられることも多く、避けられないという諦めの気持ちを強調できる。
「甘んじて受け入れる」の英語表現
英語では “be resigned to 〜” (〜を諦めて受け入れる)や “accept 〜 reluctantly” (〜を渋々受け入れる)と表現できる。
■「甘んじて受け入れる」のニュアンスと注意点
「甘んじて受け入れる」は基本的に「しぶしぶ受け入れる」消極的なニュアンスを持つ。しかし文脈によっては「大人しく(全てを)受け入れる」という意味にもなりうる。この二面性により、使い方には注意が必要だ。
例えば謝罪の場面で「ご指摘は甘んじてお受けします」と述べると、本来は「全て受け入れる」の意図でも、相手によっては「仕方なく受け入れる」と受け取られかねない。
つまり、謙虚に反省の意を示すつもりが、上から目線や不本意さをにおわせてしまう可能性がある。誤解を招かないためにも、公の謝罪では「甘んじて受け入れる」という表現は避け、「深く受け止め、改善に努めます」など別の言い回しに言い換えるのが無難である。実際、ある大学の謝罪コメントで「厳しいご批判は甘んじてお受けいたします」との表現が使われ、ネット上で「上から目線だ」などと批判された事例もある。
※出典:小学館『精選版 日本国語大辞典』「甘受」コトバンクhttps://kotobank.jp/word/%E7%94%98%E5%8F%97-470071
「甘んじて受け入れる」の使い方と使用例
「甘んじて受け入れる」は文章やフォーマルな場面で用いられることが多い。ここでは、一般的なシーンとビジネスシーンそれぞれにおける具体的な使用例を示す。
■一般的な「甘んじて受け入れる」の使い方
日常生活では、望ましくない結果や出来事を受け入れる場面でこの表現が使われる。
・厳しい結果だったが、自分の実力不足として甘んじて受け入れた。
・彼女は不当な扱いにも甘んじて受け入れ、決して愚痴をこぼさなかった。
■ビジネスシーンにおける「甘んじて受け入れる」の使い方
職場やビジネスの場面では、上司や取引先からの要求・批判を受け、やむを得ず従う状況で使われることが多い。
・上司からの厳しい指摘を甘んじて受け入れ、速やかに改善策を講じた。
・契約交渉でこちらに不利な条件提示を受けたが、将来的な信頼関係の構築を優先し甘んじて受け入れた。
「甘んじて受け入れる」の類語と対義語

「甘んじて受け入れる」と似た意味を持つ表現や、反対の意味を持つ表現を知っておくと、状況に応じて使い分けがしやすくなる。
■「甘んじて受け入れる」の類語
「甘んじて受け入れる」と同じように「仕方なく受け入れる」意味を持つ言葉としては、「甘受する(かんじゅする)」「渋々受け入れる」「やむを得ず受け入れる」や「諦めて受け入れる」などが挙げられる。他にも「不本意ながら○○する」といった表現もあり、自分の意図とは違うが受け入れるというニュアンスを示す。「甘受する」は主に文章で用いられる硬い表現で、「渋々」「仕方なく」は日常会話でも使いやすい代わりに不満のニュアンスが直接伝わる点に留意したい。
上手な類語との使い分け方のポイント
同じ「受け入れる」でも選ぶ言葉で印象が変わる。「甘んじて受け入れる」は多少格式ばった響きがあるため、カジュアルな場では「仕方なく○○する」などより平易な表現に言い換える方が自然である。
■「甘んじて受け入れる」の対義語
「甘んじて受け入れる」の反対の意味を持つ言葉としては、依頼や提案に対して快く承諾することを意味する「快諾(かいだく)」が挙げられる。快諾は「喜んで引き受ける・承諾する」というポジティブな姿勢を表し、「しぶしぶ受け入れる」という甘んじて受け入れる態度とは対照的である。また、行為として真逆なのは「拒否する」「受け入れを拒む」など、つまり受け入れず断る表現である(例:「提案を断固拒否した」「要求をきっぱりと拒む」)。
※出典:小学館『デジタル大辞泉』「快諾」コトバンクhttps://kotobank.jp/word/%E5%BF%AB%E8%AB%BE-457907
まとめ
「甘んじて受け入れる」は不本意な状況でも受け入れることを意味し、そのニュアンスには注意が必要だ。使い方次第で相手への印象が変わる表現であるため、意味とニュアンスを正しく理解した上で適切に使いこなそう。不本意なことにも向き合わざるを得ない時、適切な言葉選びができれば、表現力が光るだろう。今後は場面に応じて「甘んじて受け入れる」を使い分け、相手に誤解なく意図を伝えたいものだ。言葉一つで印象は大きく変わる。「甘んじて受け入れる」を使う際は、そうしたニュアンスの違いにも目を向けておきたい。
文/諏訪 光(すわ ひかる)
大手ネット系企業にて10数年に渡りプログラマーからプロダクトマネージャーまでを幅広く経験。新規事業から企業再生に至るまで様々な案件の開発に携わる。DX推進者や起業経験を経て現在は大手信託銀行でDX推進を行いながら、フリーランスの新規事業、DX、デジタルマーケティングのコンサルティングも行う。







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