
2025年6月26日、Xiaomi(シャオミ)のグローバル発表会が中国・北京にて開催された。オンライン配信もされていたが、日本市場に投入されるデバイスは数少ないため、注目して視聴していた人は少ないかもしれない。筆者は、現地で取材する機会をいただいたので、現地でおよそ3時間に及ぶイベントに参加してきた。
Xiaomiといえば、2025年にはXiaomi 15シリーズをはじめ、ミッドクラスのRedmiシリーズや、オンライン専用ブランドのPOCOを含め、日本市場でも精力的にスマホを展開しているのに加え、モバイルバッテリーといった周辺機器、テレビや掃除機といった家電製品も続々と投入するなど、なにかと派手な展開を見せている。
そんなXiaomiのホームである中国での発表会は、日本で開催される製品発表会とはまた違う、インパクトの大きい内容だった。
観客は数千人、約3時間に及ぶ大型イベント
日本で開催されるスマホの発表会は、イベントという形であっても、だいたい数十人から100人ほどの規模であることが多い。Xiaomiの現地イベントに入り、まず驚いたのがその規模だ。会場の首都国際コンベンションセンターには、目算だが2000人程度のメディア、インフルエンサーが集まり、さながらライブ会場のような盛り上がりを見せていた。
2024年2月にマレーシアで開催されたHUAWEIのグローバル発表会では、3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」がお披露目されるタイミングだったこともあり、各国のメディアが集まった。一方、今回のXiaomiのイベントは、そのほとんどが中国国内の(おそらく)メディア、Miファンと呼ばれるXiaomi愛好家、インフルエンサーのように見受けられた。つまり、中国国内に向けたイベントであるにも関わらず、それだけの規模感で開催しているというわけだ。
また、イベントの開始時刻は19時、終了時刻は21時50分ごろ。約3時間に渡って、続々と新製品を発表した。先日開催されたサムスンのGalaxy Unpackedは1時間ちょっと、アップルがiPhoneを発表する9月のイベントも、1時間半から2時間程度に収まることが多い中で、これだけの時間、現地の人々を魅了し続ける何かが、Xiaomiのイベントにはあった。
しかも、スマホメーカーの発表会では一般的な、プレゼン後に来場者が製品を手に取り、試す時間も用意されていない。それどころか、製品展示は屋外にEV車が並んでいるのみで、スマホやスマートグラスといったそのほかの新製品は、展示すらされていなかった。軽くカルチャーショックを受けるような出来事だったが、それでもイベント参加者たちは満足そうに、イベントの熱を持ったまま会場を後にする。おそらく、Xiaomiのイベントに求められているのは、新製品を手に取ることではなく、より多くの製品展開を発表し、何よりそれが安価で、人々の手に行き届いていくことなのだろう。
中国国内で生活に根付くXiaomiの強さ
日本においては、Xiaomiといえば、まだまだ「スマホメーカー」というイメージが強いのだろう。実際、冒頭でも触れたように、2025年上半期は精力的にスマホを展開しているが、ボールペンやデスクライト、体重計、鼻毛カッターといった、多種多様な製品を展開する、オールジャンルの製品メーカーというのが、Xiaomiの大きな特徴だ。
もちろん、上記した日本で展開されているデバイスに加え、中国国内ではより多くのデバイスが展開されている。イベントが3時間もの時間になる理由の1つは、単純に、そもそもの製品数が多いからでもある。今回のイベントでは、スマホやスマートバンドに加え、ドライヤーや掃除機、スマートグラスといった家電製品も登場している。
また、もっともイベントが盛り上がり、1時間以上をかけてプレゼンされたのが、初登場となったEV車をはじめとする、車関連の発表。後半は、1つ1つの仕様を発表するたびに、観覧席から声が上がるほどの盛り上がりで、車内に磁石で取り付けられるティッシュボックスで歓声が上がったのには、流石に開いた口が塞がらなかった。
EV市場の盛り上がりはさておき、Xiaomiは、多数の家電や生活用品を手がけるメーカーとして、国民の期待を一身に背負うメーカーなのだということを、今回改めて強く感じだ。
日本メーカーとのギャップからメーカーのあり方を考える
日本でスマホを展開するメーカーの発表会、説明会は、同時期に発売されるスマホが2機種、3機種と同時に発表されることはあるが、基本的にスマホ以外の製品が登場することはない。記憶に新しいところでいえば、シャープはAQUOS R10とAQUOS wish5、FCNTはarrows Alphaとらくらくホンを同時に発表しているが、それのみにとどまっている。
シャープのAQUOS、FCNTのarrows、ソニーのXperiaといったように、日本メーカーの場合は、メーカー内にある1つのスマホブランドという位置付けで製品が展開されており、別の事業として切り分けられているように見受けられる。そのため、メーカー内の別製品を展開するブランドとの互換性が、ないとはいわないまでも、いまいち見えにくくなっている。
一方でXiaomiは、「Xiaomi」がメーカー名でありながら、同時にブランド名としても世間に浸透していることで、生活を支える、総合家電メーカーとしての地位を確立している。これは、スマホが人々の生活の中心にある現代において、あるべき姿のようにも感じる。
会社の成り立ちや事業の分かれ方といった文化が違うため、Xiaomiと日本メーカーの事業にギャップを感じるのは当然のことで、どちらが正解というわけではない。それぞれの国に、それぞれのやり方があるだけともいえるのかもしれない。とはいえ、Xiamoiイベントの異様なまでの盛り上がりは、日本メーカーのブランディングを改めて見直させられるほどの衝撃であったのは間違いない。
取材・文/佐藤文彦