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AIで検索が進化したらWebへの導線はどうなる?Google検索担当バイスプレジデントに直撃取材

2025.08.01

毎日当たり前に使っているGoogle 検索だが、その検索方法や検索結果は進化し続けている。たとえば今、検索にはテキストを入力する以外にも、いろいろなやり方があるのをご存じだろうか?

AIで検索が進化したらWebへの導線はどうなる?

対応スマホが増えている「かこって検索」は、その名の通り、スマホの画面に表示されている画像や動画、テキストを囲ったり、なぞったりするだけで検索ができる機能。「Google レンズ」は、スマホのカメラで捉えたものをダイレクトに検索できる。鼻歌で楽曲を検索できる「鼻歌検索」は、歌手名や歌詞が思い出せないときに便利な検索方法だ。

一方、検索結果に表示される情報も、日々変わっている。天気やお店情報など、細かなアップデートをあげればキリがないが、中でもここ最近の大きな変化と言えるのが、「AI による概要」が表示されるようになったことだろう。日本では昨年夏から提供が開始されていて、今や多くの検索結果で「AI による概要」を見ることができる。

米国ではさらに一歩進んで、「AI Mode」という生成AIを活用した、まったく新しい検索方法の提供も始まっている。知りたいことを会話形式でAIに尋ねると、会話の中で様々な形で欲しい情報を提示してくれるというもの。複雑な質問に対しても、AIが同時に複数のクエリ(データベースへの問い合わせ)を行って、最適な回答を得られるという。

「AI Mode」は日本でも近日利用できるようになるはずだ。自分で調べるよりAIに聞く方がラクだし、便利なのは間違いないが、一方でその回答を本当に信じていいのかという疑問もある。また、AIが何でも答えてくれるようになったら、これまでのように検索からWebへという導線がなくなってしまわないだろうか?

そうなったらWebのSEO対策は意味がなくなる?そもそもメディアは生き残れるのか?Googleの広告ビジネスはどうなる?等々、気になるあれこれを、来日したGoogle 検索担当のバイスプレジデント、ロビー・スタイン氏に聞いた。

Google 検索バイスプレジデントのロビー・スタイン氏

生成AIのハルシネーション問題「不正確な情報が入り込むリスクは、AIだけでなく検索にも起こりえる」

——今Google 検索では「AI による概要」が、検索結果の上に表示されるようになっています。簡単に答えが得られるのは便利ですが、生成AIは間違う可能性もあるのに大丈夫なのでしょうか?

「AI による概要」は、ユーザーが関心を持っていて、役立つ情報であるとAIが判断した場合に、ページの上に表示されます。GoogleにはAIの精度と有用性を評価するためのシステムが多数ありますが、AIは多くのケースで非常に正確で、ユーザーにとって役立つことが分かっています。さらに「AI による概要」には情報元のWebサイトも示されているので、ユーザーはその情報が正確かどうかを自身で確認、検証できます。

正確でない情報が含まれてしまう可能性は、AIだけでなくどんな検索結果でも起こりえます。AIだけが間違うわけではありません。もちろん全体として、ユーザーに可能な限り正確で役立つ情報を提供できるように、日々取り組んでいます。

——米国で先行する会話形式の「AI Mode」は、検索の概念を変えるほど、大きなインパクトがあるものだと思います。AIによる新しい検索と既存の検索は共存していくのでしょうか?また御社の広告ビジネスにも影響は大きいと思いますが、どう考えていますか?

「あらゆる情報に最も手間なくアクセスできる」というのが、我々の検索に対するビジョンです。人々は今、簡単な情報のブラウジングから、非常に複雑な質問まで、幅広いユースケースで検索を利用していますが、「AI Mode」の導入によって、さらに複雑で難しい質問にも対応できるようになります。たとえば誰かがちょっと難しい買い物を考えていたり、どこの大学に行くか迷っていたり、宿題をしているような場合です。

このような複雑で難しい質問に対応するには、フォローアップの質問を可能にするなど、検索体験そのものも、これまでとは異なるものにする必要があります。そこで「AI Mode」という独立した体験を構築しました。我々はこれを、Googleのコアの検索体験を補完するものと捉えています。

将来的には、ユーザーにとっての利便性をさらに高めるため、Google 検索で複雑な質問がされた場合にも、AI Mode で培った経験を段階的に通常の検索体験そのものに組み込んでいきたいと考えています。

そのことがビジネスにどのような影響を与えるかですが、実はすでに「AIによる概要」や「AI Mode」で、ユニークな広告体験を提供する方法を試験的に行っています。人々は具体的な質問をするので、AIの回答のコンテキストの中でユーザーとビジネス、製品、サービスを結びつけるチャンスがあります。たとえば「海外旅行に適した一定価格以下の良いヘッドホン」を探したい場合などに、自然に提案ができる。しかもこれは適切で役に立つ情報です。

AIに答えを聞いても人々の探求心は変わらず、「さらなる情報を求めてWebへアクセスする」

——そんな風にAIがどんな質問にも答えてくれるようになったとき、人々はわざわざ情報元のWebサイトへアクセスするのでしょうか?

データを見る限り、人々はそうし続けると思います。これまでとの違いは、自身で深く掘り下げる前に、より多くの情報とコンテキストを得られること。以前はコンテキストを得るために、10~15のサイトを表面的に閲覧する必要があったかもしれませんが、今はAIによってより簡単にそれを得ることができます。

一方で「AI による概要」をクリックする人々は、コンテキストをより深く掘り下げるために、Webサイトに長く滞在する、より良い顧客であることがわかっています。これは長期的にはビジネスにとって良いことであり、「AI による概要」からのとても重要な学びでした。

さらに付け加えると、AIはWebにおける最も強力な発見の手段になる可能性が高いです。なぜならAIは、従来のGoogle 検索ではおそらく見ることのなかった情報を探し出してくるからです。「AI Mode」には「クエリ・ファンアウト」という技術が用いられています。ひとつの質問からAIモデルが関連する何十ものクエリを展開して同時に実行し、興味深いWebサイトやコンテンツを表示するものです。我々はユーザーのさらなる探求のために、多くの機会を提供します。

人々はAIを活用して効率的に情報とコンテキストを得たいと思っていますが、専門家の意見や多様な意見も求めていて、それを自ら確認したいと考えているのです。

——人々はAIの時代にも引き続きGoogleを通じて、情報元であるWebサイト、たとえば我々のようなメディアを訪れるということでしょうか?

そうです。なぜなら人々をWebの豊かさに結びつけること、人々がリンクをクリックし、自分の目で確かめ、コンテンツに直接アクセスする機会を持つことは、Googleにとって極めて重要な設計原則だからです。実際にユーザーは完全なコンテキストを求め、専門家の意見や多様な意見を求めています。我々はデータでもそれを確認しています。

Googleは毎日何十億ものクリックをWebサイトに送り続けていて、今後もそれが変わることはないと考えています。私たちの希望は、AIによって新たなユースケースを拡大させること。たとえば、自分の本棚の写真を撮って、次に読むべきおすすめの本を尋ねることもできます。これらは情報を得るための全く新しい方法です。

ユーザーのジャーニーに沿って、AIが新たなWebサイトを表示し、人々がさらに情報を深く読むための機会が生まれる。長期的にはGoogleのAIサービスの成長と、AI体験における興味深い思考と発見の機会が、あらゆるWebサイトにとって有益なものになると期待しています。

人々がより簡単に検索できるよう支援する、生成 AI 製品および体験の開発に取り組んでいる。

AI時代もSEO対策は有効!?「大切なのは役立つオリジナルコンテンツを作ること」

——より多くの人に見てもらえるようにSEO対策を行っているWebサイトも多いですが、AI時代にも有効なのでしょうか?何かアドバイスできることはありますか?

GoogleのAIは、従来の検索と同じシグナルとクオリティの測定基準を使用しています。AIが情報を見つける際に使用するのは、そのWebサイトがある質問に対し、多くの人々によって役に立つものかどうかといった基本的なシグナルです。だから大切なのは、人々の役に立つオリジナルなコンテンツを作成すること。ユーザーが求めている答えが、よく調べた上で書かれたWebサイトであることです。そのようなWebサイトが価値を積み重ねて、人々が好んで訪問するサイトであることを、我々のシステムに認識される。そんな風にパブリッシャーとAI時代のエコシステムを構築できることを願っています。

——逆にユーザー側には、AIを検索に利用する上で、役立つテクニックなどはあるのでしょうか?

AI時代の素晴らしい点は、自然言語を使って、頭の中にある疑問を正確に尋ねることができることです。大切なのはどれだけ創造的で具体的になれるか。たとえば、「街中で走るのに良い靴は?」と尋ねれば、AIは多くの興味深い情報を見つけて表示します。しかし、「身長180センチでかかとに痛みがある人にとって、最適なランニングシューズは?価格と各シューズに使用されている素材を、一覧表で提供してください」と尋ねることもできます。後者の例では、AIはそれらを視覚的な表で比較できるようにするなど、情報の提示方法や、具体的にどのような情報を探すかについても管理できます。さらに応答の中に、そのシューズを購入するためのリンクを追加することもできます。

今はこれを「AI Mode」で実現しようとしていますが、ユーザー側が何も意識しなくても、Google 検索がユーザーの複雑で難しい具体的な質問内容を検出し、最も高度なAIモデルを起動して回答できるようにするのが、我々の目指すところです。

——さらに将来の検索はどうなっていくと思いますか?AIがユーザーに寄り添って、知りたいことを先回りして教えてくれる……みたいなことになるのでしょうか?

AIと人々の関わり方を根本的に変える、重要なトレンドが2つあると思います。ひとつはパーソナライズされたコンテキストのAI。もうひとつはユーザーの代わりに何かしてくれるエージェント的なAI。これらが一体となったとき、私たちとこれらのシステムとの関係は、より補完的なものになると思います。AIはあなたのために一緒に働き、あなたのニーズを予測し、あなたのために行動するようになるでしょう。

前者のパーソナライズされたコンテキストのAIは、先日のGoogle I/Oでも発表しましたが、たとえばGmailのようなGoogleサービスを使って、パーソナライズされたコンテキスト機能のようなものです。Gmailから私が何に興味を持っているか、最近購入したもの、流行や趣味、予約したレストラン、計画した旅行、訪れたホテルなど、GoogleのAI検索が私を理解する上でより多くの文脈を理解します。

後者のエージェント的なAIは、これもGoogle I/Oで発表しました。AIシステムがWebを利用したり、アクションを起こしたりできるようになるというもので、ユーザーに代わっての情報検索、サイトの閲覧、フォームへの記入など、様々な機能を提供します。

たとえば、AIに「ある商品を特定の価格で買いたい」と伝えておくと、ある日Googleアプリからプッシュ通知が届く。AIが一晩中、あるいは数日間機能して、あなたが寝ている間に商品を探しているとぴったりの商品が現れたので、「今すぐ買いますか?」と尋ねられるかもしれない。あるいは、AIに「代わりに買ってください」と指示するだけで、購入手続きまでしてくれる。

AIがユーザーを理解し、ユーザーもAIに十分な情報を与えてアクションを起こすことで、満足のいく買い物ができます。これは検索を超えた、非常にユニークな体験です。Googleが目指しているのは、こんな風にあなたと一緒に働く、よりインテリジェントなAIなのです。

取材・文/太田百合子 撮影/末安善之

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