
電通は2025年7月23日、スポーツが持つ価値を未来志向で探求する「スポーツ未来研究所」を発足させた。
スポーツビジネスで培った知見を生かして提言や情報発信を行なう
このスポーツ未来研究所では、「スポーツを、ひろげよう」のスローガンを掲げ、電通が長年のスポーツビジネスを通して培った知見・ノウハウを生かし、未来志向でスポーツの真の価値の探求に取り組む。
所長には電通フェロー/パラリンピック・アルペンスキー元日本代表の大日方 邦子氏(※)が就任。多彩なステークホルダーと連携して、研究成果を基に提言や情報発信を行なっていく。
※プロフィールはこちらから。 https://dentsu-ho.com/people/1614
その活動の第1弾として早稲田大学や東海大学などと、「スポーツ観戦の体験価値の可視化」に関する共同研究を開始。脳波や心拍などから観客の感情を解き明かすことで、スポーツ観戦の体験価値の可視化実現を目指す。

■活動第1弾:スポーツ観戦の体験価値を可視化
これまで、スポーツ観戦の体験価値を定量的に把握することは難しく、主な調査・評価は観戦後のアンケートやインタビューなど主観的なデータや定性的なコメントに基づくものが一般的だった。
そこでスポーツ未来研究所では、早稲田大学スポーツ&エンターテインメントマネジメント研究室、東海大学スポーツマネジメント戦略研究室、電通サイエンスジャムと共同研究プロジェクトを立ち上げ、観客の脳波や心拍など、観戦中のリアルタイムな生体情報を専用のデバイスを用いて計測することで、感情の変化をデータで定量的に解明していく。
計測結果に、従来の主観的データや電通がスポーツビジネスで培った分析ノウハウ、また両大学の研究成果などを掛け合わせることで、観戦中の「ワクワク」「ドキドキ」「ハラハラ」といった感情を定量的に捉え、これまで可視化できていなかった観戦体験の本質的な価値を明らかにすることを掲げている。
■スポーツコンテンツの進化やエンターテインメントビジネスの最適化に貢献
また、同様の手法で、スポーツ観戦に特有の「感情のシンクロ」の解明にも取り組む。スポーツ観戦には、家族・友人・ファン同士でのリアルな観戦や、一人でオンライン観戦をしながらSNS上で仲間と交流するなど、さまざまな観戦スタイルがあるが、共通して「感情を他者と分かち合う」場面が多く存在する。
そんな観戦スタイルの違いが感情のシンクロにどのように影響するかを解明し、さらに感情のシンクロがもたらす影響についても分析。
例えば、感情がシンクロしたことで「優しくなった」「孤独感が減った」など観客個人のウェルビーイングへの影響を解明したり、競技・リーグ・チーム・選手・スポンサーに対する考え方やイメージなどの認識変容につながるメカニズムを明らかにしていく。
スポーツ未来研究所の発足にあたり、最初の調査として、公益財団法人日本サッカー協会の協力を得て、サッカー男子日本代表の試合を対象に調査が行なわれた。
現在、調査データの分析を進めており、分析が終了次第、研究成果が発表される予定だ。
同社では今回の発表に際して、「これらの研究成果を基に提言・情報発信を行うことで、競技会場・スタジアムの改善やスポーツコンテンツの進化、観戦体験を起点とするエンターテインメントビジネスの最適化に貢献していきます」とコメントしている。
構成/清水眞希