
現在、深刻な人手不足が続く中、新卒採用を重視する会社が増えている。一方で、ミスマッチが原因で、入社から3年で約3割が退職してしまうという、いわゆる「3年3割問題」(※)もいまだ継続している。
スタッフサービス・ホールディングスは、新卒で正社員として入社した会社を早期離職した若年層の価値観や退職理由を探るため、高校・高専卒、短大卒、専門学校卒、大卒、大学院卒の25歳までを対象に、「新卒3年未満で正社員を退職した若年層の意識調査」を実施したので、結果を紹介しよう。
(※)厚生労働省「新規学卒者の離職状況」によると令和3年3月の大卒者の3年目までの離職率は34.9%の状況
新卒で就職した会社を半年未満で退職したのは3割!退職理由1位は「人間関係が悪かった」
新卒で就職した会社を入社3年未満で退職した人に在籍期間を尋ねたところ、48.2%が「1年未満」と回答した。中でも「半年未満」と回答した人は30.8%にのぼり、約3人に1人が入社から半年未満に退職している実態が明らかとなった。
新卒で就職した会社を、初めて「辞めようかな」となんとなく思った時期について尋ねたところ、入社初日までにそう感じた人は10.2%、1ヶ月未満では32.9%、3ヶ月未満では半数を超え、51.0%となった。1年未満の時点では82.2%が退職を考えた経験があると回答した。
新卒で就職した会社を「辞めようかな」となんとなく思った場面について尋ねたところ、1位「オフィス内の職場環境や雰囲気を知った時」(23.3%)、2位「オリエンテーション・研修」(17.2%)、3位「所属部署に着任時」(10.8%)「残業や休日出勤などをしなければならなかった時」(10.8%) (同率)となった。
退職理由について尋ねたところ、最も多かったのは「上司や同僚との人間関係が悪かった」(26.3%)。次いで、「社風が合わなかった」(26.1%)、「会社の将来に不安を感じた」(21.1%)が続く。
人間関係や職場の雰囲気といった“働く環境”が、早期退職の要因となっていることがうかがえる。
新卒で就職した会社を入社3年未満で退職したことについて、最も多かったのが「とてもよかったと思っている」(44.2%)、次いで「どちらかといえばよかったと思っている」(39.7%)の順に。
2つの回答を合わせると83.9%が「よかった」と回答した。一方で、「どちらかといえば後悔している」は11.2%、「とても後悔している」は5.0%にとどまり、退職したことをポジティブに振り返る人が大多数を占める結果に。
新卒で就職した会社を3年未満で退職して「後悔している」と回答した人に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「転職後の収入が減ったから」で、28.1%を占めた。
次いで多かったのは「転職後に前の職場のほうが良い職場環境だと分かったから」 (21.9%) 、「転職後のキャリア形成が難航したから」(18.4%)という結果に。
7割強が新卒で就職した会社を退職後、2社目の会社でも正社員として働いている
転職回数については、69.3%が「1回」と回答した。新卒で就職した会社の在籍期間別に見ると、「2年以上~3年未満」では2回以上の転職経験者が19.9%だったのに対し、「3ヶ月未満」では43.3%と倍以上となり、差が見られた。
初めての転職で入社した会社(2社目)の雇用形態について尋ねたところ、71.1%が「正社員」と回答。新卒で就職した会社の在籍期間別に見ると、「2年以上~3年未満」が2社目も正社員として働いている割合が最も高く、約8割(77.1%)となった。
一方、半年未満の回答を「全体」と比較すると「正社員」の割合が10%ほど低く、「パート・アルバイト」の割合が高いことが判明。
初めての転職活動時に誰からの意見を参考にしたか尋ねたところ、38.7%が「家族や友人、パートナー、知人」の意見を参考にしていると回答した。
一方で、「特に誰の意見も参考にしていない」と答えた人も24.8%おり、全体の約4人に1人が自分自身の判断で転職活動を進めていることが判明。
初めての転職活動時に活用した方法やサービスについて尋ねたところ、最も多かったのは「転職エージェント」(25.6%)で、次いで「求人サイト」(21.4%)となった。
新卒の就職活動時の会社選びで重視したポイント1位「会社の安定性、成長性」「会社の規模の大きさ」(同率) 3位「福利厚生の充実」
新卒で就職した会社を半年未満で退職した人は、「会社の安定性、成長性」、「会社の規模の大きさ」を重視して選ぶ傾向がみられるが、「1年以上~3年未満」で退職した人は「福利厚生が充実している」ことを重視して就職先を選ぶ傾向がみられる。
入社前に抱いていた会社のイメージと、実際に働き始めてからのイメージが異なると回答した人は65.3%にのぼり、全体の6割強を占めていた。
入社前後で会社イメージの違いを感じた人を時期別に見ると、「1週間未満」に違和感を覚えた人は34.3%、「1ヶ月未満」では半数を超える56.6%となった。
さらに、新卒で就職した会社を退職した時期別にみると実際に3ヶ月未満で退職した層では、「1週間未満」にイメージギャップを感じた人が56.4%を占め、早期退職者ほどより早い段階で入社前後のギャップを実感していることがうかがえる。
総括:入社前後のイメージギャップを減らす採用活動と入社後のサポートを
深刻な人手不足が続く中、多くの企業が人材の確保と育成の重要性を強く感じている。特に、新卒採用をはじめとする若手人材の獲得と定着は、今後の企業成長を左右する重要な課題だ。
一方で、引き続き新卒入社者の早期離職が社会的な関心を集めており、若年層が働く職場に対してどのような価値観や期待を持っているのかを把握することが重要になっている。
本調査では、新卒で就職した会社を3年未満で退職した若年層の実態に迫った。その結果、3年未満で退職した人のうち約3人に1人が「半年未満」に離職しており、6割強が入社前後の会社のイメージにギャップを感じていることが判明。
また、退職した3人に1人が「1ヶ月未満」といった早期に「辞めようかな」と感じており、入社直後から職場とのミスマッチを感じるケースが多いことがうかがえた。
退職理由としては、「人間関係が悪かった」(26.3%)が最も多く、次いで「社風が合わなかった」(26.1%)、「会社の将来に不安を感じた」(21.1%)と続いた。こうした結果から、職場の雰囲気や人間関係などが離職の大きな要因になっていることが考えられる。
若手人材の定着を図るためには、企業の実態や職場の雰囲気をできる限り正確に伝え、入社前後のイメージギャップを減らす工夫が欠かせない。
「人間関係」や「社風」といった入社前にはイメージしづらい情報であっても、会社説明会やインターンシップ、職場見学などの機会を通じて具体的に伝えることで、求職者との認識のすり合わせが進み、早期離職の防止につながる可能性がある。
退職者は入社後のかなり早い段階でギャップを感じているケースもあるため、コミュニケーションを密にするなどして、若年層の悩みや不安へのサポートを手厚くする必要もありそうだ。
調査概要
調査方法:インターネット調査
調査期間:2025年6月10日(火)~16日(月)
調査対象:
・全国在住18歳~25歳男女
・学歴:高校・高専卒、短大・専門学校卒、大卒、その他(大学院卒など)
・新卒で正社員として就職した会社を3年未満で離職経験がある人
・転職経験があること(2社目が「会社経営」「自営業」「スポットワーク(スキマバイト)は除く、無職は除く」
・現在、有職か無職かは問わない
サンプル数:新卒で就職した会社の在籍期間
※スタッフサービス・ホールディングス調べ
関連情報
https://www.staffservice.co.jp/company/
構成/Ara