
物価高で収入に不安はあるが、どうやって行動すればいいか迷っているビジネスマンは多いはず。キャリアアップについての勉強でも「何をすればよいかわからない」や「学び直しても成果が見えない」といった迷いもあるはずだ。IT教育やキャリア支援を展開するSAMURAIは、全国の働く男女300人を対象に「物価高時代におけるキャリア選択の実態調査」を実施して結果を発表した。そこには年代が上がるほど高まる「現状維持バイアス」などの現状があったという。
物価上昇でも「給与は増えない」が7割超
最近1年で本業の給与に変化があったか質問すると、もっとも多かった回答は「変わらない」(66%)だった。それと比較して「減った」は17%、「増えた」は16%と増減の変化は少なかったようだ。帝国データバンクの2025年2月の調査では、2025年度は企業の61.9%が賃上げを見込んでおり、待っていても収入は増えないという構造的な停滞の解消は、緩和することが期待できそうだ。物価高の影響による収入面の不安には、62%が「不安が増した」と回答しているが、実際に行動を起こした人は30%にとどまっている。政府では経済産業省の「リスキリング支援事業」などを通じ、学び直しに最大70%の補助を行っているが、企業による教育機会の整備は限定的で、スキル習得が個人の意思に委ねられる状況が続いているという。
年代が上がるほど高まる「現状維持バイアス」
年代別では、「何も行動していない」と回答したのは30代で60%、40代で66%、50代では73%だった。やはり年齢が上がるほど動けなくなっている実態がみえたという。背景には、転職・副業市場が若年層に偏っている構造的な課題がある。さらに上の世代の「今さら新しいことを始めても遅い」といった現状維持バイアスが、行動のブレーキになっている可能性も高いという。企業が中高年層向けにキャリア支援を提供することで、こういった状況を解決していく必要はありそうだ。
ただ、収入への不安を抱く人は増えているが、スキルアップや副業などの行動に進めない人も多く存在する。「なぜ行動できないのか」という質問に対しては、「行動しても収入が増えるかわからないから」(40%)がトップで、2位以下は「何をすればよいかわからない」(35%)、「時間がない」(29%)、「困っていない」(22%)が続いた。この状況は、リスキリング支援制度があっても情報格差が大きく、使える人と使えない人が二極化していることも要因になっていそうだ。「何をすればいいのかが見えない」や「収入が増えるのかが見えない」などの“静かな諦め”が行動を止めている要因と考えられそうだ。
人気スキルは「語学」×「IT」が注目
収入を増やすために興味のあるスキルについて質問すると、「英語・語学」(38%)が最多だった。次いで「IT・プログラミング」と「マネジメント・リーダーシップ」(各33%)という結果になった。特にIT分野は、経産省が「2030年に最大79万人の人材が不足する」と予測する注目領域で、非エンジニア職でもITリテラシーの有無が年収や昇進に直結する場面が増えているという。経済産業省の『IT人材白書』によれば、ITエンジニア全体の平均年収は約600万円とされており、全体平均を上回る水準でもある。30代から40代の副業や兼業市場では、ITスキルが「手に職」として収入差を生み出す要因にもなりそうだ。
物価高の中での賃上げの不透明感から不安を感じるビジネスマンも多いはずだが、何をすればいいのかわからない人が一定数いることがわかった。現状をきちんと分析して、スキルアップのために行動を起こすことも大切なことだといえる。
■「物価高時代におけるキャリア選択の実態調査」概要
調査対象:20代~60代の働く男女
有効回答数:300名
調査期間:2025年6月20日~2025年6月22日
調査方法:WEBアンケート調査(全国)
構成/KUMU