
2025年8月13日に新規上場するアクセルスペースホールディングスは、小型衛星事業のパイオニアです。同社は地球観測ソリューション「AxelGlobe」や衛星活用サービス「AxelLiner」を提供し、宇宙ビジネスの成長を牽引しています。
目次
宇宙と聞いて未来の空想と思うか、目の前にある現実ととらえるか、その受け止め方は人それぞれのはず。
しかし、日本の宇宙企業がIPOをすると聞くと、いきなり身近に感じるのではないでしょうか?
小型衛星事業で活躍するアクセルスペースホールディングスが、2025年8月13日にIPO(新規上場)しました。
このIPOはあなたの資産をどう変えるのか? 確認してみましょう。
アクセルスペースホールディングスとは?
まず始めに、アクセルスペースホールディングスの業務内容とその歴史をご紹介します。
■アクセルスペースホールディングスの業務内容
アクセルスペースホールディングスの前身となるアクセルスペースは、2008年8月に設立されました。
2020年3月に株式会社アクセルスペースから単独株式移転の方式で、純粋持株会社の株式会社アクセルスペースホールディングスを設立、現在に至っています。
同社はこれまでに11機の小型衛星を開発し、軌道上で運用してきました。その実績を生かしたソリューション「AxelGlobe」と「AxelLiner」が、ユーザーの宇宙利用ビジネスをサポートしています。
AxelGlobe
同社の100kg級小型衛星コンステレーションによる地球観測で、地表に起きている事象を高頻度に可視化します。そして、これらを分析することで、地上での取得が難しい、様々なビジネスインサイトにつなげています。
現在、30か国以上に広がるパートナーとともに、ユーザーのニーズに応えるソリューションを提供。農業や災害監視、報道、環境など、様々な産業分野で活用されています。
AxelLiner
宇宙で観測や通信、実験、サービス、機器の軌道上実証などのミッションを行いたいユーザーに、同社の衛星を活用。
ユーザーは宇宙でのミッション実現に必要な望遠鏡、アンテナなど専用機器の開発・準備に専念でき、これによりかつてない手軽さと短期間で、宇宙でのビジネスを実現できるサービスです。

「AxelGlobe」と「AxelLiner」のほかにもアクセルスペースホールディングスは、小型衛星と関連コンポーネントの設計・製造や、打ち上げのアレンジメント、打ち上げ後の軌道上における運用支援、衛星ソリューションの提供までをトータルに手掛けているのです。
■アクセルスペースホールディングスの歩み
2008年8月に設立したアクセルスペースは、小型衛星を活用して多くの人に宇宙が当たり前に使われる、そんな社会の実現を目指して、同月に株式会社ウェザーニューズと超小型衛星「WNISAT(ダブリュエヌアイサット)-1」の製作に係る契約締結を交わしました。
そして、2013年11月に、ウェザーニューズより受注した北極海航路監視用超小型衛星「WNISAT-1」の打ち上げに初成功しました

WNISAT-1は磁気センサーにより宇宙から地磁気の乱れを観測し、磁気嵐の発生を監視しています。
サイズは270×270×270mm(突起部分を除く)で重量は10.1kgと超小型な衛星は、太陽同期軌道、高度600km、降交点地方時(赤道上空を通過する際の地方太陽時)10時30分に、ロシア共和国のヤースヌイ宇宙基地からドニエプルにより打ち上げられました。
そして、2017年7月には、後継機「WNISAT(ダブリュエヌアイサット)-1R」を、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地からソユーズにより打ち上げるなど、人工衛星の打ち上げは順調に進みました。

続いて、2018年12月に、衛星画像データなどを利活用する地球観測プラットフォームであるAxelGlobe事業に利用するため、自社所有の小型衛星「GRUS(グルース)初号機(GRUS-1A)」を打上げ、事業を推進することになりました。
2022年4月には、株式会社アクセルスペースの小型衛星開発・運用のワンストップサービスとしてAxelLiner事業を開始。2022年5月にロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、「GRUS-1F、G、H、J」の打上げ中止に関する取締役会決議を実施するなどの困難を乗り越え、現在に至っています。
■なぜ今、アクセルスペースホールディングスが注目されるのか?
アクセルスペースホールディングスが注目される理由は、宇宙ビジネスの成長と技術革新にあります。
近年、宇宙ビジネスは急速に発展しています。そして、小型衛星の需要が高まっています。
この分野で競争力を発揮しているアクセルスペースホールディングスが、投資家からの注目を集めているのです。
そして、同社は独自技術を持ち、効率的な衛星の設計や製造が可能です。コストを抑えながら高品質なサービスを提供することも魅力です。
さらに、政府からの需要も増えており、今後の成長が期待されています。
投資家必見!アクセルスペースホールディングスのIPOの可能性
アクセルスペースホールディングスのIPOが2025年8月13日に発表されました。
そこで、今回のIPOの概要と投資家の反応をまとめてみました。

【参考】東京証券取引所グロース市場への上場承認に関するお知らせ
■IPOのスケジュールと公開価格や初値の予想
アクセルスペースホールディングスのIPOの概要とスケジュールを簡単にまとめました。
(公開価格の決定が2025年8月4日のため、本稿執筆時点である2025年7月時点での価格は決まっていません)
銘柄名 | アクセルスペースホールディングス |
銘柄コード | 402A |
上場市場 | 東証グロース |
単元株数 | 100株 |
主幹事 | SMBC日興証券 |
仮条件提示日/仮条件 | 2025年7月25日 |
ブックビルディング期間 | 2025年7月28日~2025年8月1日 |
公開価格決定日 | 2025年8月4日 |
発行・売出価格 | 未定 |
購入申込期間 | 2025年8月5日~2025年8月8日 |
上場予定日 | 2025年8月13日 |
上場時発行済み株式数 | 5861万1100株(予定) |
公募株式数(新規発行) | 1521万1100株 |
オーバーアロットメント(OA)の売出 | 最大145万5600株 |
想定公開規模 | 約57億5000万円(OA含む) |
■アクセルスペースへの投資家の反応
前述したとおり、宇宙ビジネスへの期待は膨らんでいます。
同じく宇宙ビジネスを扱うispace(銘柄コード9348)が2023年4月12日に上場した際、公開価格が254円だったところ、初値が1000円と4倍ほど跳ね上がりました。
そして、上場来高値は2373円と公開価格の約10倍になったこともあり、アクセルスペースホールディングスのIPOへの期待も大きいです。
しかし、ispaceの株価は現在、570円前後となっており、相場は落ち着いています。
アクセルスペースホールディングのIPOへ過剰な期待を寄せるのには、リスクがあるかもしれません。
■アクセルスペースIPO:資産形成にどう組み込むべきか?
宇宙ビジネスは成長が期待される分野です。IPOで短期的な利益を追求することよりも、将来的な成長を見越した投資を考慮することが大事でしょう。
そのため、リスク管理は重要です。IPOは価格変動が大きく、適切な資産配分によりリスクを分散させることが求められます。
とはいえ、株価が低めの設定で、株数も100株と比較的求めやすい価格で株式が入手できるアクセルスペースホールディングは、投資先としては魅力的。定期的に情報を更新し、企業業績の進捗や業界の変化に目を配ることが、成功する投資につながるでしょう。
【まとめ】
アクセルスペースホールディングスのIPOは、ただの新規上場以上の意味を持つかもしれません。
かつてSF映画でしか見なかった宇宙が、今や手の届くところにあります。
小型衛星が地球を見える化し、ビジネスの常識を塗り替える……そんな最先端の技術を持つアクセルスペースホールディングスの挑戦は、未来を具現化するものです。
もちろん、投資にはリスクがつきものです。
しかし、このIPOは単に目先の利益を追うだけでなく、未来の産業を応援して成長を共に味わうチャンスとも言えます。
宇宙という無限の可能性を秘めたフロンティアへ私たちの資産を預けること。「あの時、未来を選んでよかった」と思える、エモーショナルな体験になるのではないでしょうか。
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今年第1四半期の世界IPO市場は287件のディールにより総額237億ドルを調達
※当記事に掲載している価格などのデータは2025年8月時点でのものです。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※製品のご利用はあくまで自己責任にてお願いします。
文/中馬幹弘
ガジェット・MONO・マネー編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカン・サブカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任。iPhone、iPad登場時より実務に携わる。国土交通省・アパレルブランドの広報経験も持つ