
はじめに──「場所×時間」の束縛が消えた副業市場
20世紀の副業 1.0が「ダブルワーク」、21 世紀前半の副業 2.0 が「スキルシェア」だとすれば、2025 年の現在は 副業 3.0=メタバース空間制作 が台頭しています。ヘッドセットや PC があれば、誰でも 立体的な“場”そのものを商品化 できる世界。国内プラットフォーム「cluster」の累計発注額は 1,500 万円を突破し、副業クリエイターがアルバイトを卒業する事例まで登場しました。米Robloxでは開発者還元額が四半期で 2.8 億ドルに到達し、100 人超が年収 1 億円プレイヤーとなっています。
そこで今回はビジネスパーソンが副業 3.0 を始めるうえで鍵となる (1)創作の自由度 (2)コミュニティ形成 (3)リアル業務へのスキル転用を深掘りします。
1. 創作の自由度──“推し”を空間化する最短距離
【1‑1. VRChat:50%ロイヤリティでも参入続出】
VRChat は 2025年5月、アバターマーケットプレイスを正式ローンチ。“ストア出品→VRChat Credits→PayPal 出金”という Creator Economy が誰でも利用可能になりました。手数料分配はプラットフォーム 30%、運営 20%、クリエイター 50% ですが、従来の外部販売よりも売上ブーストの期待できるようです。ワールド単位でも Udon スクリプトでガチャや入場権を販売でき、“空間 SaaS”として継続収益を得る設計が現実味を帯びました。
【1‑2. cluster:日本語 UI と低ハードルで急拡大】
スマホ対応・日本語UIが強みの cluster は、個人クリエイターと企業案件を仲介する「Creator Jobs」を整備。累計 1,500 万円 の発注を背景に、“作る→報酬→機材投資→さらに受注” の好循環モデルが生まれています。Blender+Unity さえ扱えれば参入可能で、“副業初月5万円” を達成するケースも珍しくありません。
【1‑3. Roblox:数日で作ったゲームが同接 891万人】
Robloxは低コードツールRoblox Studioと市場規模で圧倒的。10 代の開発者がわずか 数 日で作った農場ゲーム「Grow a Garden」が 同時接続891万人を記録し、投資ファンドが出資する事態に発展しました。2025 年 Q1 だけでクリエイター還元 2.8 億ドル、年間 10 億ドルペースという数字は、「作れば即ビジネス」な土壌を裏付けています。
ビジネス視点のポイント
• 最小 MVP:まず 10 × 10 m のワールドでライティング・衝突判定・UI を学ぶ
• モジュール化:小物・シェーダ・スクリプトを“部品販売”し、ストック収入を確保
• アセット管理:Git+CI でワールドをバージョン管理し、企業案件でも再利用
2. コミュニティ形成──“場づくり”がファン経済を拡張する
【2‑1. 自走型コミュニティを生む VRChat“Groups”】
VRChatでは公式機能「Groups」により、ユーザー主導のコミュニティ運営が可能になっています。この機能では、ロール(オーナー・管理者・モデレーターなど)の付与、Groupインスタンス・Group+インスタンスといった限定/拡張インスタンス設定、バッジ表示、掲示板機能などが利用でき、2024年にはインスタンスの“Close Instance”(締め切り)機能も追加され、運営者が参加受付の制御を行えるようになりました。さらに、VRChat Plus加入者限定でのグループ作成や有料ロールアクセス(Creator Economy)といった収益化機能も整備されています。
【2‑2. cluster:周年イベントがユーザ導線を最適化】
cluster は 10 周年企画としてアプリ内“謎解きラリー”を開催。限定アクセサリ配布と SNS ハッシュタグ連動で、常設ロビーが流入ハブ として機能し、クリエイターのワールド来訪数が増加することで、企業案件とファンコミュニティが同一空間で循環するモデルは B2B マネタイズにも直結します。
【2‑3. Roblox:UGC が UGC を呼ぶ“開発者コミュニティ経済”】
Robloxは、ユーザー自身がゲームや空間を制作・公開できるUGC(User Generated Content)型プラットフォームとして、世界中の若年層を中心に支持を集めています。実際、Roblox Studioを使ったゲーム制作は、プログラミング初心者でも取り組める設計となっており、国内でも学生や副業クリエイターによる参入が進んでいます。
さらに注目すべきは、こうしたUGC制作活動を支える学習・交流コミュニティの存在です。Roblog Japanでは、公式Discordコミュニティやフォーラムを活用した知見共有・コラボ開発の動きが紹介されており、初心者がスクリプトやアセットの制作技術を学びながら、着実にスキルを伸ばす“育成循環”が広がっているとされます。
3. リアル業務へのスキル転用──“メタバース仕込み”で高付加価値人材へ
かつてはゲームや趣味の範囲にとどまっていた3D空間制作のスキルが、今では本業やキャリア形成に直結する時代になりました。メタバース、オンライン展示、デジタルツインなど、仮想空間を活用するビジネスが広がる中で、空間を「つくれる人」が企業から求められるようになっています。
【3D空間スキルがビジネスに直結しています】
近年では、防災訓練や都市再現、製造ラインの可視化など、実業務で仮想空間が活用される機会が増えています。仮想の街や建物をリアルに再現し、仮想空間上でプレゼンテーションやシミュレーションを行うことで、現場のコスト削減や効率化にもつながっているのです。
このような領域では、単に3Dモデルを作るだけでなく、次のようなスキルが求められています。
• 3Dモデリングやアニメーション制作
• UI/UXを意識した空間設計
• スクリプトを使ったギミック実装
• データの軽量化・最適化
• VR/ARデバイスへの対応調整
こうした技術は、広告・建築・教育・エンタメ・製造業など、さまざまな業界で評価されており、「仮想空間のプロフェッショナル」としてのキャリアも確立しつつあります。
【キャリア拡張の新しい選択肢】
• 副業で月5~10万円を目指す
最も始めやすいのは、副業としての3Dアイテムやアバターの販売、もしくは企業からの小規模な空間制作の受託です。テンプレートや既製のアセットを活用すれば、週末だけの作業でも十分に成果を上げられます。
【フリーランスとして独立し、年収アップを狙う】
実績を重ねてスキルを高めることで、クライアントと直接契約し、大型ワールドの設計やイベント演出を丸ごと受注するような働き方が可能になります。ポートフォリオや過去の制作物が信頼につながり、受注単価も高まります。
【企業に転職して、DX人材として重宝される】
さらに、3D制作の技術に加え、業務理解やマネジメント力を身につけると、企業内での「空間DX人材」としてのキャリアも開けてきます。近年ではBIMやデジタルツインなどの分野で、仮想空間と現実をつなぐ設計職へのニーズが高まっています。
【好きが仕事になる時代】
3D空間制作は、もはや一部の技術者やゲーム開発者だけのものではありません。ローコードツールやチュートリアル動画の充実により、未経験者でも始めやすくなってきました。
大切なのは「空間をつくる」ことそのものに、自分の感性や経験を活かしていくことです。
そうした姿勢が、共感を呼び、評価され、仕事へとつながっていきます。
「好き」を活かして収入を得たい。そんな思いを持つ人にとって、3D空間制作は、今まさに最適なフィールドになりつつあります。
おわりに──“空間”を設計できる人が次の 10 年をリードする
メタバースはバズワードを越え、具体的な副業収益とキャリア機会 をもたらすフェーズに入りました。制作ツールは無料または低価格、マーケットはグローバル、需要は右肩上がりのため、ちょっとした工夫や意識の差で、ビジネスパーソンが抱える「時間と場所の壁」は、メタバース空間で“稼ぐ力”に変わる可能性が高いのです。
副業3.0の波に、いまこそ飛び込んでみてはいかがでしょうか。
プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
https://www.moguravr.com/roblox-q1-2025-financial-results/
https://ir.roblox.com/news/news-details/2025/Roblox-Reports-First-Quarter-2025-Financial-Results/default.aspx
https://corp.roblox.com/ja/ja-newsroom/2025/03/ja-unveiling-future-creation-native-3d-generation-collaborative-studio-tools-economy-expansion
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000361.000017626.html
文/鈴木林太郎