
スクリーニングとは「ふるいにかけること」を指し、医療やIT、採用など多様な分野で必要な対象の選別を行います。フィルタリングやモニタリングとの違いも理解が重要です。
目次
近年、スクリーニングという言葉を耳にする機会が増えました。なんとなく意味はわかるけれども、実際にどのような場面に適した言葉なのか、わかりかねている方も多いのではないでしょうか。
スクリーニングの元々の意味や「フィルタリング」や「モニタリング」との違い、また、使われる場面によってどのように意味が変わるのかをまとめました。
ぜひ参考にして、スクリーニングを使いこなしてください。
スクリーニングとは?意味を解説

スクリーニング(screening)とは、ふるいにかけることや選抜、選別などの幅広い意味で使われる言葉です。日本語では次の意味で使われることが一般的です。
- 選抜、選別
- 選考、審査
- 集団検診
なお、スクリーニングは英語の動詞screenに接尾辞ingがついた動名詞です。screenには「ふるいにかける」以外にも「遮蔽する」「仕切る」「上映する」といった意味があるため、screeningは次の意味でも使われることがあります。
- 防虫網、金網
- 上映、映写
参考:デジタル大辞泉
■フィルタリングとの違い
フィルタリング(filtering)とは、「対象物の中から不必要なものを通過させないこと」です。対象物の中から必要なものや適切なものを選ぶスクリーニングとは、着目点(フィルタリングは不要物に着目、スクリーニングは必要物に着目)が異なります。
例えば、子どもに悪影響を及ぼす恐れのあるウェブサイトを選別し、アクセスできないようにするスマートフォンやパソコンの機能は「フィルタリング機能」と呼ばれます。有害なものだけを抽出し、子どもの目に触れないようにするため、不要物に着目する「フィルタリング」が適切です。
一方、子どもの学習に適切と思われるウェブサイトを選別し、授業時間中もアクセスできるようにブックマークしておくことは「スクリーニング」です。公的機関や教育機関が提供している信頼性が高く学習目的で作成された必要物に着目し、スクリーニングしたウェブサイトのみを子どもが利用できるように抽出します。
■モニタリングとの違い
モニタリング(monitoring)とは、「監視すること」や「観察して記録すること」を意味する言葉です。対象物や状況を観察し、変化や状態を把握することを指します。
モニタリングは「傍観」であり、原則として対象物には介入しません。対象から必要物を選抜するスクリーニングや、不要物を取り除くフィルタリングとは、対象物との関わり方が異なります。
モニタリングにより、問題の早期発見や改善効果の検証が可能です。モニタリングにより必要物と判明したときにはスクリーニング、不要物と判明したときにはフィルタリングを実施することもあります。
■アセスメントとの違い
アセスメント(assessment)とは、「査定」や「評価」「判断」を意味する言葉です。また、所得や不動産価値などを評価してから税額を決めることから、「査定額」や「税額」の意味で使われることがあります。
アセスメントを実施するには、対象物を正確に把握することが必要です。つまり、モニタリングを実施してからアセスメントを行い、一定基準を満たすものはスクリーニングにより選抜し、満たさないものはフィルタリングにより除外するといった流れが生まれます。
- モニタリング:対象物や状況を観察する
- アセスメント:対象物を評価・判断する
- スクリーニング・フィルタリング:基準に従い、選抜あるいは除去を実施する
なお、スクリーニングやフィルタリングを実施した後で、選別・除去が適切に行われたかアセスメントするケースも想定されます。
【分野・業界別】スクリーニングとは?

基準を満たすものを選別するスクリーニングは、さまざまな分野や業界で実施されます。例えば、次のフィールドではスクリーニングが日常的に実施されています。
- 医療分野
- 株式投資
- IT業界
- スマートフォン業界
- 採用活動
各フィールドで実施されているスクリーニングについて見ていきましょう。
■医療分野におけるスクリーニング
医療分野では、特定疾患の罹患者や感染者を見つけるために実施する検査や健康診断を、「スクリーニング」や「スクリーニング検査」と呼びます。
例えば、発熱外来では来訪した患者の唾液や粘膜を採取し、隔離が必要な感染症に罹患している患者を選別します。診察前にスクリーニングを実施することで患者の治療や隔離をスムーズに行え、対応の効率性が高まるでしょう。
また、質問票や血液検査などにより特定の疾病に罹患するリスクが高い人を抽出すれば、より効率よく予防のためのアドバイスを提供できることから、予防医療の領域でもスクリーニングが活用されています。例えば、定期的な運動習慣がない人や喫煙習慣がある人、血圧や血糖値が高い人などを抽出すると、生活習慣病の予防活動の効率性が高まります。
■株式投資におけるスクリーニング
株式投資では、条件を満たす銘柄を選別する際にスクリーニングを実施します。
リスクを抑えた投資を実現するためにも、複数の異なる資産や金融商品を組み合わせたポートフォリオの作成が必要です。株式投資も同様です。特定銘柄や値動きが連動する複数銘柄に全資金を投入するのではなく、異なる銘柄、異なる値動きを見せる銘柄でポートフォリオを組み、資金を分散させることでリスクも分散させます。
ポートフォリオを組む際にはスクリーニングが必要です。ポートフォリオに必要な銘柄の条件でスクリーニングを実施し、選抜した銘柄を適切な割合で組み合わせていきます。例えば、成長性は期待できるけれども為替変動の影響を受けやすい銘柄を主軸に据え、株式投資を実施する場合について考えてみましょう。
望まない方向に円高・円安が進むと株価が下落し、資産を大幅に失うケースも想定されるため、外貨の影響を受けにくい銘柄もポートフォリオに加えておく必要があります。また、長期的に着実性の高い成長を見せる企業の銘柄もポートフォリオに加えておくと、さらにリスクを分散しやすくなるでしょう。
■IT業界におけるスクリーニング
IT業界では、インターネットの利用を制限するときやデータ選別においてスクリーニングを実施します。例えば、以下のスクリーニングが実施されることがあります。
- スパムスクリーニング:迷惑メールやスパムとして報告された広告・メッセージを選別する
- ウイルススクリーニング:ウイルスやマルウェアを検出する
- ファイルスクリーニング:特定の拡張子を有するファイルの保存や操作を検出する
- サイトスクリーニング:特定のサイト内の不正コードやマルウェアを検出する
上記はいずれもサイト運営者やサーバー、ユーザーにとって有害なものを検出するための行為ですが、特定の条件を満たすユーザーやデータを収集するためにスクリーニングが実施されることもあります。
■スマートフォン業界におけるスクリーニング
スマートフォンには「通話スクリーニング機能」が搭載されていることがあります。通話スクリーニング機能とは、ユーザーにとって不必要な着信に対しては着信音を鳴らさずに留守番電話に切り替えたり、あらかじめ指定した自動応答メッセージを流したりする機能です。
スマートフォンによって異なりますが、通常は連絡帳に登録した相手以外からの着信に対して、簡単な設定手順で通話スクリーニング機能が適用されます。また、登録外の相手からのメッセージを自動的にテキスト化し、ユーザーに知らせる機能が搭載されたスマートフォンもあります。
■採用活動におけるスクリーニング
採用活動では、応募者から選考対象者を絞り込む過程でスクリーニングを実施することがあります。特に応募者が多い場合は、面接や試験を実施するだけでも企業側にとっては大きな負担です。スクリーニングにより選考対象者を絞り込み、面接や試験にかかる時間・費用の軽減を図ります。
選考対象者のスクリーニングでは、企業が求める人材基準から、あらかじめ条件をリストアップし、次の資料などを用いて選抜することが一般的です。
- 履歴書、職務経歴書
- エントリーシート
- 適性検査、一般常識試験
複数の資料からスクリーニングの条件に照らし合わせることで、面接や行動観察などを実施しなくても、応募者を多面的に把握しやすくなります。また、応募者本人に会う前に選抜するため、見た目の印象に左右されにくくなるのもスクリーニングのメリットです。
スクリーニングを使った用語

「スクリーニング」という言葉も頻繁に使用されますが、他の名詞と組み合わせて複合語として使用されることもあります。耳にする機会の多いスクリーニングの複合語の使用場面や、一般的な意味を紹介します。
■スクリーニング検査
スクリーニング検査とは主に医療分野で使われる言葉で、対象者が特定の疾患に罹患していないか、感染していないか、異常所見がないかを確認します。スクリーニング検査では、血液や画像、質問票などが用いられます。
■スクリーニング調査
スクリーニング調査とは、調査対象者を絞り込むための調査です。以下のポイントに留意して実施します。
- 誘導的な質問をさける
- 目的達成に不要な質問はしない
- 母集団を絞り過ぎない
メインとなる調査を「本調査」とすると、スクリーニング調査は本調査の前に実施される「事前調査」に位置付けられます。
プレスクリーニングとの違い
プレスクリーニングとは、メインとなる調査の前に実施される調査のことで、「事前調査」や「スクリーニング調査」とも呼ばれます。対象者を絞り込むことで本調査の過程が簡略化できることもありますが、対象を絞り込み過ぎると適切な母集団を形成できなくなる点に注意が必要です。
本調査との違い
本調査は、調査の目的を達成するためのメインとなる調査です。一方、スクリーニング調査は本調査が円滑に進むために対象者を絞るための調査です。本調査の対象者が少ないときや、インタビューなどの質的研究を実施するときはスクリーニング調査を実施しないこともあります。
■リストスクリーニング
リストスクリーニングとは、購入見込みのある対象者にアプローチする手法です。対象者は顧客リストから選定しますが、重複データがないか確認し、データ形式を標準化してから実施することが求められます。
スクリーニングの意味と使用場面を確認しておこう

スクリーニングはさまざまな業界や分野で使用される言葉です。
主に「絞り込み」や「選別」といった意味で使われますが、業界によっては特定の行為を指すため注意が必要です。また、モニタリングやフィルタリングといった類似するニュアンスで使われる言葉との違いも確認しておきましょう。
構成/林 泉