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株価が急上昇しているマックハウスとANAPがビットコインに全振りした理由

2025.07.15

アパレル系上場企業のマックハウスとANAPの株価が急上昇しました。

株価を押し上げた主要因がビットコインの大量取得。両社ともに業績は停滞しており、立て直しのために資金調達を行いました。その多くをビットコインの購入に充てたため、市場が好感しているのです。

暗号資産への投資は株価対策には有効な一方、本業の弱体化を招く危うさも秘めています。

アパレルショップから資産運用会社に

今年3月ごろから100円台で推移していたマックハウスの株価は、6月18日に一時635円の高値をつけました。その後は300円台まで下がったものの、7月10日には536円まで上昇しています。

マックハウスは6月12日に金融·投資事業を開始すると発表しました。暗号資産に戦略的な投資を行い、財務体質の強化を図るとしたのです。マックハウスは投資ファンドから資金調達を行っており、それを原資にビットコインを含む主要な暗号資産8億円分を取得。その後、追加購入を行う方針を決定しており、最大17億円分の購入を進める計画を立てました。

7月11日にはビットコインを中核とする成長戦略を発表しています。9月17日からビットコインの取得を段階的に進め、1000BTC以上の保有を目指すというもの。価格変動に応じた柔軟な運用を行うといいます。「デジタル資産運用グループ」を新設し、暗号資産とサイバーセキュリティの専門家を配置。資産の分散管理と安全性の確保を進めます。

マックハウスはアパレルショップを展開する企業ですが、資産運用会社へと変貌を遂げようとしています。

1株32円でのTOBが成立

マックハウスは「東京靴流通センター」のチヨダの子会社として、1990年に設立されました。1980年代後半から、若者の間でアメカジブームが起こっていました。当時、特に重要なアイテムがデニムパンツ。渋谷や原宿には数々の有名ショップが軒を連ねましたが、地方や郊外での普及に貢献したのがマックハウスとライトオンでした。

しかし、アメカジブームが終焉し、デニムの人気が一服すると両社の不振が目立つようになります。マックハウスは2019年2月期から6期連続の営業赤字でした。再建を目指して物流を手掛けるジーエフホールディングスがTOBを実施し、2024年11月に成立しました。TOB価格は1株32円でした。

なお、ライトオンも2025年1月にワールドによるTOBが成立しています。

マックハウスとライトオンの買収は、アメカジ·デニムブームが終わったことを象徴する出来事でした。2社ともにオリジナルブランドの立ち上げなどを行い、立て直しを急ぎましたが、業績を好転させるまでには至りませんでした。

株価の乱高下が続くメタプラネットがモデルか?

女性向けカジュアルブランドを展開するANAPも時代に翻弄された会社の一つ。ANAPはセシルマクビーやサマンサタバサなど、平成ギャルファッションをけん引したブランドです。

しかし、ブームに陰が生じると業績の停滞感が鮮明になりました。2020年8月期から5期連続の営業赤字となります。2010年8月期に90億円を超えていた売上高は、30億円を下回るまでになりました。2023年に債務超過となってしまいます。

ECショップを展開するネットプライスなどから資金調達を行い、財務体質の健全化を図りました。

ANAPがビットコインの取得を発表したのは今年4月。そこから段階的に取得を進め、6月にはビットコイン事業を開始すると発表しました。8月末までに1000BTCの取得を目指すというもの。ビットコインによる資産運用を成長戦略の柱としました。500円台から400円台で推移していたANAPの株価は6月17日に一時1770円の高値をつけました。

ビットコインを主要な成長戦略に位置づける会社には、先行者がいました。メタプラネットです。この会社はCDの販売などを手がけていましたが、その後ホテル運営などを行うようになりました。2023年に社名をレッド·プラネット·ジャパンからメタプラネットに変更。主要な成長戦略としてビットコインへの投資を掲げました。

メタプラネットの株価は長らく数十円で推移していましたが、2024年7月には300円、2025年2月13日には721円の高値をつけるまでになりました。乱高下を繰り返しながらも株価は上昇基調にあったのです。6月19日には1930円の高値をつけています。

マックハウスやANAPが、メタプラネットの事例を参考にした可能性は大いにあります。

懸念されるのは、本業への投資が細くならないかということ。マックハウスは当初、調達した資金のうち3億6000万円を設備投資に充当すると発表していました。しかし、ビットコインの購入額を増やしたことで、設備投資資金は6000万円ほどにまでカットされています。

M&Aなどを含む新規事業への投資は8億円から3億円まで下がりました。

マックハウスの成長可能性説明資料では、TOBを行ったジーエフグループのネットワークを駆使して物流効率を最大化。コストを削減し、デジタル資産への投資基盤を強化するとあります。つまり、アパレル部門が暗号資産投資を支える事業になったことを示唆しているのです。

しかも、マックハウスとANAPは株価が急上昇したことで資金を調達しやすい環境が整い、ビットコインの購入枠を広げました。市場がそれを好感して株価が更に押し上げられるという現象が起こっています。経営者としてはビットコイン投資を急ぎたくもなるでしょう。

しかし、両社ともにアパレルで一時代を築いた会社であり、多くの従業員はアパレル事業の拡大を望んでいるはず。それをないがしろにすると、離職者が出て本業が弱体化してしまう懸念があります。

そしてビットコインがいつまでも上昇するとは限らないことも事業リスクの一つ。中東情勢やトランプ関税などの経済的な不透明感からビットコインが下落する局面もありました。本業が弱ったところに、暗号資産の値崩れが起これば、含み損を抱えて大赤字を出す要因にもなります。

本業と新規事業、暗号資産による資産運用など、バランスをとった事業投資が必要になるのかもしれません。

文/不破聡

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