
中堅・管理職の皆さん、もしかして「なんでも自分に集まってくる」と感じていませんか? もしそうであれば、それは役割が曖昧な状態で放置されていることに他なりません。今回は、識学の観点から、この「何でも屋」状態を脱却し、組織としての生産性を最大化するためのポイントをお伝えします。
役割の曖昧さが生む「何でも屋」状態
「困ったら〇〇さんに聞けばいい」「〇〇さんがいれば大丈夫」——もし、あなたがチーム内でそんな存在になっているとしたら、それは一見頼られているように見えて、実は組織全体の健全性を損なうサインかもしれません。なぜなら、特定の個人に業務が集中するということは、本来その業務を担うべき人間の役割が明確になっていない、あるいはその役割を全うできていないことを意味するからです。
役割と責任が曖昧な状態が続くと、現場では「できる人が勝手にカバーする」という現象が起こります。これは一時的には問題を解決するように見えますが、長期的に見れば以下のような危険性をはらんでいます。
・特定の個人への負荷の偏り: 「何でも屋」状態の人は、常に過度なプレッシャーと業務量に晒され、疲弊しやすくなります。
・部下の成長機会の損失: 部下は自ら考え、行動する機会を奪われ、結果として能力が向上しません。
・組織全体の生産性の低下: 業務が属人化し、特定の人が不在になると業務が滞るリスクが高まります。
・責任の所在の不明確化: 問題が発生した際に、誰が責任を負うべきかが曖昧になり、改善が進みにくくなります。
識学が提唱する解決策:役割と責任の明確化
識学では、組織の生産性を最大化するために、役割と責任の明確化が不可欠であると考えます。そして、この役割と責任を明確にするのは、上位者の責務です。
上位者は、部下一人ひとりに何を求めるのか、どのような行動を期待するのかを具体的に明示し、それを明文化・設計する必要があります。これにより、「誰が何をすべきか」が組織全体で共有され、無駄な業務や重複が排除されます。
1.部下の役割を明確にし、やるべきことはやらせる
「彼にはまだ早い」「私がやった方が早い」——もしあなたがそう考えているのなら、それはあなたの業務負荷を増やすだけではなく、結果的に部下の成長機会を奪うことになります。
識学では、部下の役割を明確にしたら、その役割を全うさせることを徹底します。たとえ時間がかかっても、部下自身に考えさせ、行動させ、結果を出させる経験を積ませることが重要です。もちろん、適切なタイミングでのフィードバックや助言は必要ですが、基本的には「手出し無用」のスタンスで臨みましょう。
これにより、部下は自身の役割に対する責任感を持ち、主体的に業務に取り組むようになります。結果として、あなたの業務負担は軽減され、あなたは本来のマネジメント業務に集中できるようになります。
2.週報などで現場の事実情報が上がってくる仕組みを作り、状況に応じて行動変化する
役割を明確にしただけでは、組織は機能しません。現場で何が起こっているのか、設定された役割が適切に機能しているのかを上位者が正確に把握する仕組みが必要です。
そこで有効なのが、週報などの定期的な報告の仕組みです。重要なのは、この報告が「感情や感想」ではなく、「事実情報」に基づいていることです。例えば、「〇〇の業務が滞っているようです」ではなく、「〇月〇日現在、〇〇のタスクが〇件未完了です。原因は△△です。」といった具体的な事実を報告させましょう。
これにより、上位者は現場の正確な状況を把握し、以下のような行動変化を起こすことができます。
・問題の早期発見と解決: 事実情報に基づいて問題点を早期に特定し、迅速に対策を講じることができます。
・役割の再設計: 期待する役割と実際のパフォーマンスに乖離がある場合、その原因を分析し、必要に応じて役割の再設計や部下への指導を行うことができます。
・適切な指示と軌道修正: 現場の状況に応じて、より具体的な指示を出したり、目標達成に向けた軌道修正を行ったりすることができます。
まとめ
「何でも屋」状態を脱却し、組織としてのパフォーマンスを最大化するためには、上位者が率先して役割と責任を明確にし、それを徹底することが不可欠です。部下を信頼し、役割を全うさせる。そして、事実情報に基づいた報告の仕組みを通じて、常に現場の状況を把握し、的確な行動変化を起こす。この原則を実践することで、あなたのチームはより強く、より生産的な組織へと変革していくことでしょう。
文/識学コンサルタント大賀達雄