
卸売業・小売業の企業は人手不足、価格転嫁、2025年の崖、DXやGXへの対応など、様々な経営課題を抱えている。
多くの企業が様々な変化への対応を求められているが、特に卸売業・小売業は新人・若手社員の早期離職率が他業種に比べて高く、新入社員の離職防止に頭を悩ませている。
そこでオールディファレントとびラーニングイノベーション総合研究所は、3月25日~4月24日の期間で、2025年度新入社員を対象に「新入社員意識調査」を実施。卸売業・小売業の新入社員の勤続意向やキャリアに対する意識などを調査したので詳細をお伝えしよう。
「キャリア志向ない」が「管理職志向」を押さえ、7年間調査で初のトップ
初めに2025年度の卸売業・小売業の新入社員に対し、将来会社で担いたい役割について質問したところ、「特にキャリアについての志向はなく、楽しく仕事をしていたい」(28.2%)がトップとなった。
次いで、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」(27.9%)、「まだはっきりしておらず、今後決めていきたい」(24.4%)、「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」(18.3%)が続いた。
卸売業・小売業を除く全業種(以下、他業種と記載)の新入社員の回答と比較したところ、「特にキャリアについての志向はなく、楽しく仕事をしていたい」と「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」はそれぞれ、他業種より5.2ポイント、2.9ポイント高い結果に。
また、「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」は他業種よりも9.4ポイント低いことが判明。
この設問について2019年度から7年間、各年度の新入社員の回答結果を比較したところ、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」は2019年度から2022年度まで毎年増加を続けていたが、2023年度から減少に転換。
2025年度は過去最低の割合で、最も高かった2022年度よりも9.1ポイントのマイナスに。また、「特にキャリアについての志向はなく、楽しく仕事をしていたい」が管理職志向の割合を超えたのは、7年間で初めてであった。
「できれば今の会社で働き続けたい」が7年間で過去最高!今の会社で働き続けたい条件トップは「職場の人間関係が良い」
続いて、卸売業・小売業の新人の勤続意向について調査を実施。まず、今の会社で働き続けたいかを質問したところ、72.5%が「できれば今の会社で働き続けたい」と回答し、他業種よりも7.6ポイント高い割合となった。
「そのうち転職したい」と答えた卸売業・小売業の新入社員は10.7%で他業種よりも低い結果に。
この設問について2019年度から7年間、各年度の新入社員の回答結果を比較した結果、「できれば今の会社で働き続けたい」と回答する割合は年々割合が高まっており、2025年度は過去最高となった。
さらに、どのような状況なら今の会社で働き続けたいと思うか質問した結果、「職場の人間関係が良い」が最も高く、69.5%、次いで「高い給与・賞与をもらえる」(64.9%)、「業績が安定している」(39.3%)が続いた。
他業種と比較すると、「職場の人間関係が良い」は4.0ポイント高い一方、「仕事を通じて成長できる」(22.9%)は11.4ポイント低い結果に。
今後3年間の会社での労働時間、半数が「定時に帰りたい」。20代の時間の使い方は「プライベート優先」
今後3年間の労働時間に関する考え方を質問したところ、「定時に帰りたい」と回答した割合は50.0%と半数を占め、次いで、「週に2~3回の残業までなら構わない」は39.3%で約4割であった。
他業種の回答と比べてみると、「定時に帰りたい」は他業種よりも5.8ポイント高く、逆に「仕事・成長のためにできるだけたくさん働きたい」(7.6%)は4.0ポイント低いことがわかった。
半数が「定時に帰りたい」と答えた卸売業・小売業の新入社員だが、時間の優先順位についてどのように考えているのだろうか。
20代の時間の使い方として自身の考えに近い回答項目を選択してもらったところ、最も割合が高かったのは「仕事とプライベート優先」(30.2%)、次いで「プライベート優先」(24.4%)でこの二つで半数以上を占めた。特に「プライベート優先」は他業種よりも6.3ポイント高いことが明らかに。
一方、「仕事とプライベートと自己投資をバランス良く」(11.1%)は他業種より8.5ポイント低くなっていた。
最後に、卸売業・小売業の新入社員が考えるリーダーのイメージ像について質問したところ、「リーダーシップが求められそう」(55.0%)が最も高い割合となり、次いで「強い意志が求められそう」(36.6%)、「成長できそう」(33.6%)という結果に。
他業種の回答と比較すると、「リーダーシップが求められそう」は3.8ポイント、「強い意志が求められそう」は5.7ポイント高いことがわかった。
まとめ
本調査では、卸売業・小売業へ入社した2025年度新入社員の特徴を、他業種と比較して考察した。
まず、将来会社で担いたい役割を質問したところ、「キャリア志向なし」が最高の割合となり、この項目を調査開始した2019年度以来、初めて管理職志向を抜きトップに。
また、勤続意向について質問したところ、72.5%が「できれば今の会社で働き続けたい」と答え、こちらも7年間で最も高い割合となった。
今の会社で働き続けたいと思う条件については、「職場の人間関係が良い」「高い給与・賞与をもらえる」が6割台で2大トップとなった。他業種と比較すると、「仕事を通じて成長できる」は11.4ポイント低い、22.9%。
ワークライフバランスについての考え方を探るため、今後3年間での会社の労働時間について質問したところ、半数が「定時に帰りたい」と回答した。
20代の時間の使い方として自分の考えに近い項目を選んでもらったところ、「仕事とプライベート優先」が30.2%、「プライベート優先」が24.4%で、ともに他業種より高く、「仕事とプライベートと自己投資をバランス良く」は他業種より低い割合に。
管理職を目指す割合が減った2025年度の卸売業・小売業の新入社員だが、リーダーについてのイメージ像を聞いたところ、半数以上が「リーダーシップが求められそう」と回答。
次いで「強い意思が求められそう」の割合が高く、他業種の企業より5.7ポイント上回した。
調査概要
調査対象者:同社が提供する新入社員研修に参加した 2025年度入社の新入社員
調査時期:2025年3月25日~2025年4月24日
調査方法:Web・マークシート記入式、または自記式でのアンケート調査
サンプル数:3,933人
※引用元:ラーニングイノベーション総合研究所「新入社員調査(業界別:卸売業・小売業編)
※各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としている
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関連情報
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構成/Ara