
ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing beauty by MICHIRU」。
連載第5回は、天然ミネラルが豊富なクレイを使用したプロダクトブランド「CLAYD(クレイド)」を訪問。入浴剤を中心としたクレイプロダクトの展開で、クレイを一般市場に浸透させてきたCLAYD代表の羽田賀恵さんに話を聞いた。
クレイとは地上に堆積した火山灰が数万年、数億年もの時をかけ、化学変化してできた粘土のこと。優れた吸着・吸収作用などさまざまな働きを持ち、古より世界中で美容・健康のケアに用いられてきた。
前編ではCLAYDのスタートアップ時のブランディングと、当時から変わらない商品に込めたメッセージについて語ってもらった。
あえて「オーガニック」と書かなかったブランド戦略
MICHIRUさん(以下、MICHIRU):CLAYDの商品はオーガニック好きの層だけでなく、オーガニックコスメにそこまで馴染みがない層にも届いている印象があります。クレイって、けっこうマニアックな成分ですよね。それなのにすごい。
羽田さん(以下、羽田):実はそれこそ立ち上げ当初から狙っていたことなんです。オーガニック志向の人以外にもクレイの素晴らしさ、オーガニックの良さを届けたかった。だからパッケージの表面にはあえて「オーガニック」と書きませんでした。
MICHIRU:CLAYDの商品はどれも自然由来成分しか入っていませんよね?
羽田:はい。吸着・吸収作用が優れたクレイはケミカル成分なども吸着してしまうので、100%の力を発揮してもらうにはピュアな成分だけでつくる必要があります。特にCLAYDで使用しているクレイは敏感というか、ケミカル成分が入ると商品によっては質感が崩れてしまって。それもあってクレイ以外の配合成分もすべて自然由来のものとなっています。
普段からオーガニックなものを求めている人は、裏の成分表示まで確認する習慣を持っている人がほとんど。パッケージにオーガニックと書かなくてもわかってくださいます。逆にオーガニックと書いてあることが商品購入の敬遠につながる人もまだまだ多いのが現状です。そういう方々にも使っていただいて、使用した結果「クレイはこんなにすごい」とか「オーガニックっていいんだ」と気づいてもらえたらと考えました。
MICHIRU:あえてオーガニックであることを主張しない。それが幅広い層にCLAYDを知ってもらうためのブランディングだったのですね。それ以外にもブランド立ち上げ当初の戦略はありますか?
羽田:日本の市場の特徴として、手頃な価格帯のマーケットからは息の長い流行が生まれにくいというのがあります。そのため立ち上げ当初はハイエンド市場へのアプローチに力を入れました。パッケージもその頃はオーガニック製品というとシンプルなものが多く、多くのブランドが華美にするのを避ける傾向にありましたが、CLAYDはとにかくファッショナブルに。
クレイのことが分からなくても、パッケージが素敵だから手にとってもらえる、というところから始めようと考えました。一度クレイバスに入ったら確実に変化を感じてもらえます。だから手に取って使ってもらえさえすれば大丈夫という自信がありました。
クレイを起点に循環する社会を目指して
MICHIRU:パッケージデザインといえば、昨年、ADC賞(東京アートディレクターズクラブが主催する広告・デザインの賞)にノミネートされたそうですね。
羽田:選出いただいたパッケージシリーズには、創業時から担当してもらっているデザイナーのこだわりが詰まっています。アールがかったこの複雑な形は、顕微鏡でクレイを見た時の形が元に。そこにデザイナーが譲り受けた昔ながらの活版印刷機で、一枚ずつロゴなどを印刷しています。この活版印刷機を使えるようになるために、彼は1年間修行にも通っていたんですよ。
MICHIRU:なぜ、そこまで!
羽田:こんなに効率の良くない作り方、普通はビジネスとして選ばないですよね。でも文字が少し薄かったり、濃かったり、一つひとつ微妙に異なる印刷に美しさや作り手の温度を感じ、CLAYDというブランドにとても合っているように思ったのでGOを出しました。うちの商品のパッケージはすべて手作業なんです。クレイの封入や、一部パッケージの組み立て・包装も、創業当時からずっと手作業。自動生産機械を入れていないんです。
MICHIRU:効率や利益を超えて手作業にこだわる理由は、どういうところにあるのでしょう?
羽田:クレイは機械に触れてしまうと金属も吸収してしまいます。大自然の中にあるクレイをその素晴らしい状態のまま届けたいというのが理由の一つ。もう一つ、社会の循環を生み出したという思いもありました。
CLAYDではクレイの封入やパッケージの包装を、社会福祉法人施設の方々に行っていただいています。障がいを持つ方々のとても丁寧で誠実な作業は、高品質な製品作りに欠かせません。難しいと言われる彼らの就労や独立の助けにもなるため、相互支援として、パートナーになっていただいているのです。彼らが携わったものが百貨店に並び、人々の手に届く。それが巡って彼らの生活の一助になっていく。クレイを通してお金と人が循環し、みんなが幸せになる仕組みづくりを目指しています。
MICHIRU:このパッケージの手触りからも、羽田さんのメッセージも伝わってくる気がします。手作業の温かみを感じ、優しい気持ちになるというか。
羽田:今って大量生産のものに慣れすぎて、人が関わっていることを忘れてしまいがちじゃないですか。でも化粧品も食べ物もなんでも、人の手がかかっていて、命のつながりの先にあるもの。それを言葉で伝えなくても、無意識に感じとってもらえたらいいですよね。
競争には意味がない。唯一無二を作ればいい
MICHIRU:最近はクレイの認知度も上がってきて、クレイを生かした製品も増えてきています。その点はどう考えていますか?
羽田:私の中に競合、競争という言葉は存在しません。競争を始めると、永遠に苦しい競い合いが続くじゃないですか。それよりもここにしかないものを作ろうと。そうしたら何かに追われないし、比べられない。勝ち負けよりも関わる人たちが全員幸せになる方法を選びたいです。特にクレイのメーカーさんは、私にとってクレイの素晴らしさを広げる仲間。普段から仲も良いんですよ。クレイは採取される土地によって特性があり、効果効能が異なるんです。自然のものだから認め合いはしても、競い合う意味はないんです。クレイに限らずみんなそういうふうに展開していったら良いのにと思っています。
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羽田賀恵(はだ・かえ)
マザーアース・ソリューション株式会社代表。証券会社勤務を経て渡米した米国で、アメリカ薬草学やローフード食事法を学び、ホメオパシーディプロマを取得。天然クレイを使用した「温泉を超えた入浴剤」で「CLAYD(クレイド)」を創業。クレイを用いた天然由来成分のみのボディ・スキンケア商品を百貨店など約500店舗にて展開、スパを3店舗展開する。
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。
取材・構成/福田真木子
撮影/五十嵐美弥
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