
“手軽に体をメンテナンスする”というキャッチコピーのもと、さまざまな商品を展開している、しまむらのブランド「活き活きラボ」。
中高年を中心に支持を集めている大人気シリーズから、猫背にアプローチする『姿勢サポートブラジャー』が登場した。
売れ行き計画比140%、シリーズ累計14万枚以上を達成するヒット商品となっている。
今回は、株式会社しまむら インナーソックス部門 部長 古瀨恵さんに、開発の背景やヒットの要因、今後のインナー市場のトレンドを伺った。

*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。
誰が着てもしっかりホールド、猫背に注目した新しいブラジャー
背中を二重のクロス生地でしっかり支える「姿勢サポートブラジャー」。猫背が気になる人に嬉しいアイテムだ。古瀨さんは、開発の背景について次のように説明する。
「商品開発会議で『高齢化社会に向けて健康をサポートする商品を作ろう』と決まったことがきっかけです。そこで、まず注目したのが毎日身につける“下着”です。ブラジャーなら背中、ショーツなら腰をサポートできるのではと考えました。私自身、猫背や腰痛に悩んでいたこともあり、調べてみたところ、同じ悩みを持つ人が多いことが分かったんです」
「姿勢サポートブラジャー」は通常ライン(1,089円/税込)とプレミアムライン(1,419円/税込)の2種類を展開している。
「通常ラインは通気性の良いメッシュ素材『パワーネット』を使用しています。一方、プレミアムラインはさらに生地が薄く、縫い目を減らして軽い着心地とアウターに響きにくい設計を追求していました。どちらもノンワイヤーで、M・L・LL・3Lの4サイズ展開です。肩紐の調整は、通常ラインのみ対応しています」
開発にあたっては、苦労した点も多かった。
「補整力を高めると着脱が面倒になるため、着やすさと補整力の両立には苦労しました。生地やパワーの配置を何度も調整し、いろいろな体型・サイズの方に試着してもらいながら改良を重ねています。背中のクロス部分は、誰が着用してもできるだけ同じ箇所にパワーが集中するように設計しました」

発売直後から完売続出!増産体制を整えて再販へ
発売後は、想定以上の反響があったという。
「発売直後から予想を大きく上回る反響があり、当初の販売計画数を急遽増やして対応することになりました。それでも販売ペースが計画を上回っているため、展開店舗を一時的に約1,400店から300店ほどに縮小せざるを得ない状況でした。増産体制を整え、6月中旬ごろから再び全店舗で展開しています」
「ターゲットの年齢層はやや高めに設定した」と話す古瀨さん。狙いは上振れし、50代を中心に、30代から60代まで幅広い世代の方々に支持されている。
「製品を宣伝する際は、同商品の特徴である『軽やかで締めつけ感が少なく、毎日無理なく姿勢ケアができる点』を訴求しました。また、店頭で手に取れる『姿勢サポート商品』が少ないこと、そして着心地の良さへの徹底したこだわりが差別化ポイントになったと考えています」
消費者も気付かないような、細部へのこだわりも詰め込まれている。
「プレミアムタイプは、背中のサポート部分をドット状の糊で貼り合わせることで、シームレスで伸びやかな着心地を実現しています。また、通常ラインは背中の2枚重ねの生地を縫わずに動かせるよう設計し、幅広い体型にフィットするよう設計しました」

認知を拡大するため、マーケティング戦略にもこだわった。
「プレスリリースや紙のチラシ、インスタグラムなどのSNS、雑誌やイベントなど、複数の方法で広くアプローチしました。特に紙のチラシはベーシックな商品の訴求に効果的で、今でも大きな影響力があると感じています」
ブルーオーシャン戦略がヒット!わかりやすい機能性と着心地が“キモ”
「売り上げが数字で表れるときに達成感を感じる」と話してくれた。喜びがある反面、反省する点もあるという。
「お客様から一番多くいただくご意見が、サイズ展開についてです。今回はSサイズを出していなかったので、『Sサイズも欲しい』といったお声をたくさんいただきました。商品ターゲットの年代に合わせてサイズ展開を決めているのですが、実際に売り出してみるとこちらの想定と違うニーズがあると気付かされます。より幅広いお客様の体型や悩みに寄り添ったサイズ展開をしたいと考えています」
今回のヒットの要因について、古瀨さんは次のように分析する。
「大きく三つあると考えています。一つ目は『背中サポート』という機能に特化し、多くの人が気になる猫背へのアプローチを分かりやすく打ち出したことです。
二つ目は、需要があるのに市場に少ない新しい商品だったこと。三つ目は着心地が良く、リピーター購入が多いことです。まとめ買いをする方も多くいらっしゃいます」

古瀨さんは、「今後は着心地を向上させつつ、サポート力も高めていきたい」と話す。
「シームレスとはいえ、まだ縫製している箇所やもたつく部分が残っているので、そうした余分な部分をできるだけ省き、より肌あたりの良い仕上がりにしたいと考えています。また、よりムレにくく、快適に着用できるように改善していきたいです」
「活き活きラボ」はブラジャーのほかにも、Tシャツ、ボトムス、靴下、骨盤サポートガードルを展開している。
「Tシャツは汗染み対策、ブラジャーは姿勢サポート、靴下は足裏を刺激して歩きやすくする、といった具合に、それぞれのアイテムで毎日の体の悩みをサポートしています。骨盤サポートガードルはお腹をクロス構造で押さえ、腰回りをしっかり包んで骨盤を支える作りです。プレミアムタイプと同じ素材なので、一緒に使うのもおすすめです」
“密かな悩み”に応える、これからのインナートレンド
古瀨さんは、これからのインナー市場におけるトレンドについて、次のように分析する。
「年齢や性別に関わらず、プライベートな悩みに寄り添う商品へのニーズが、これからさらに高まるように思います。近年では『フェムテック』に代表されるように、女性特有の悩みを解消する商品が増加しています。また、SNSなど匿名性の高い情報交換ツールの普及により、これまで人に打ち明けにくかった悩みも共有しやすくなりました。“密かに抱えていた悩み”を解決してくれる商品が、求められていくのではないでしょうか」

今回の開発を通して、世界の技術の進化と新たな発見があったと続ける。
「マーケットリサーチでパリを訪問した際、無縫製で圧着して作られた補整下着の多さに驚きました。ちょうどその頃、デザイナーさんから同じ手法を使った姿勢サポートブラジャーの提案を受けて、すぐに開発を決めたんです。また、定期的に50代の方々と座談会を開いている中で『下着にレースはいらない』『縫製が少ない方がいい』といった声をよくいただきます。実際に商品が売れたことで、お客様の声や市場の変化を感じ取る大切さを改めて実感しました」
「開発までの半年は、時間との闘いだった」と振り返る。短い時間の中でも、良い商品を目指して改良を重ね続けた。
「サンプルを1回修正すると、次が上がるまでに1週間ほどかかります。試着して細かな修正点が見つかれば、さらにやり取りを重ねる必要があり、どうしても数週間単位で時間がかかってしまいます。また、サイズごとに気になるポイントが違うので、全員が納得のいく商品に仕上げるのは本当に苦労しました」
最後に、リスナーへ向けてメッセージをもらった。
「『姿勢サポートブラジャー』にご興味を持っていただけた方は、ぜひ一度お試しください。40~60代をターゲットに開発しましたが、シンプルなデザインなので幅広い年代の方におすすめです。オンラインストアでも販売していますので、この機会にぜひファッションセンターしまむらをご利用ください」
取材・文・撮影/久我裕紀 構成/DIME編集部