
先日、SNSでバズったのが『草津』の新名物「温泉ないまんじゅう」だ。

あの『草津』に温泉がない…?一体どういうことなのか?と思った方も多いだろう。
実はこの『草津』とは、群馬県の草津ではなく、滋賀県草津市のこと。
「温泉ないまんじゅう」誕生の経緯
滋賀県草津市は滋賀県の南西部に位置し、日本最大の湖・琵琶湖に面した町である。

そう、もう一つの『草津』が「温泉ないまんじゅう」を販売しているのだ。
それには理由がある。
自然湧出量が日本一の温泉で日本三名湯の一つ、群馬県・草津温泉とたびたび間違えられ、温泉目当てで滋賀県草津市に足を運ぶ人が絶えなかったため、市の観光物産協会が開発。自虐的なまんじゅうを6月末から販売している。
この話、あまりにも切ない。間違えた観光客も草津市の皆様も、誰も悪くない。
悲しみの果てに「温泉ないまんじゅう」が生まれてしまった悲しい物語を詳しく聞かせていただきたく、草津市観光物産協会の谷坂さんに話を聞いた。
――「温泉ないまんじゅう」誕生の経緯を教えてください
「群馬県の草津温泉と間違ってお問い合わせをいただくことが非常に多いことから、1年ほど前より「温泉ないけど いいとこ草津」と銘打ったPRプロジェクトを開始しています」
「そのプロジェクトの一環として、「温泉ないまんじゅう」も誕生いたしました。着想自体は半年ほど前で、私から草津市の和菓子屋「和・菓ふぇoto」さんに製作を打診し、商品が完成いたしました」
――「温泉ないまんじゅう」の特徴・こだわりは?
「以前より、「和・菓ふぇoto」さんが作られていた上用饅頭(目上の方に配るまんじゅう)をベースに、オリジナル焼きゴテで焼き印をつけていただいています。一つ一つ手作りで、大切に作っていただいています」

シンプルなこしあんは老若男女楽しめる味わい。丁寧な手作業で仕上げられたまんじゅうは1個300円。温泉がないとは思えないほどやさしさとあたたかさに溢れている。
これまで、群馬県の草津温泉と間違われて大変だったことだろう。いかなる苦労があったのかお聞きしたところ、悲壮感漂うエピソードが次々と。。。
・年間100件ほど間違いのお問い合わせがある。
・台湾から草津温泉と間違えて実際にお越しになった。
・メディアの方から、わたくし谷坂を名指しで連絡をいただいたのに、内容をうかがうと草津温泉と間違っていらっしゃっていて驚いた。――-
もはや、身につまされる思いしかないが、数量限定で販売された「温泉ないまんじゅう」は現在大ヒット御礼状態。今後も味わうことができるのか?
「今後も「和・菓ふぇoto」さんでは定番商品として販売いただく予定です。その他のお店や私共が出店するイベントでも積極的に販売を続けていきたいと考えています」
ならば、「温泉のない草津」には一体なにがあるのか?
群馬県の草津温泉と間違えて訪れる観光客のために、滋賀県草津市の観光物産協会は地元の知名度向上のため日々さまざまな企画を立ち上げ、奔走している。
草津を盛り上げる起爆剤として、新たなマスコットキャラクター「おんせんどろぼう」を考案。

さらに自虐と狂気に満ちた「物語性」も添えた。
「おんせんどろぼう」ストーリー
草津市在住のやさしくて、ちょっぴり気の弱いどろぼう。
ある日、旅人から草津温泉の場所を尋ねられて困惑。知恵をめぐらせたどろぼうが思いついたのは・・・
「そうだ!ぼくが、温泉をどろぼうしてくればいいんだ!そして、琵琶湖を温泉にしよう!」
こうして全国津々浦々、おんせんどろぼうの旅がはじまります。
最後に彼がたどり着いた「答え」とは・・・?
谷坂さん曰く、「優しくて気が弱いため、結局温泉を盗むことはできないのですが、草津市の魅力に気付きながらPRしてくれると思っています」と新キャラの活躍にも期待を込める。
ある意味、地元のウィークポイントであり、有名観光地との奇跡の相違から始まった異端的プロモーションは、多くの人やメディアの目に止まり、滋賀県草津市の知名度向上に一役買っている。
ここで気になることがある。
「温泉のない草津」には一体何があるのか?
今夏も楽しめるおすすめのスポットを谷坂さんに聞いた。
【琵琶湖博物館】

「湖をテーマにした博物館としては日本最大規模であり、淡水専門の水族展示を含め多彩な展示があります。お子様連れにも人気で、夏休みの自由研究にもおすすめです」
【草津宿本陣】

大名や公家の休泊に利用された本陣ですが、「草津宿本陣」は現存する中では最大級でJR草津駅からもほど近く、手軽に歴史を感じていただけます。近辺にある「草津宿街道交流館」も併せてご見学いただくのがおすすめです。
さらに、あのロックフェスも開催されている。それが草津だ。

そんな草津市、東洋経済新報社が発表した「住みよさランキング2025」では、全国812市区で総合第6位にランクイン。当然、滋賀県では堂々の1位を誇り、“クラスでは目立たないけどなんかいい人“という存在感を示している。
今後の滋賀県草津市にも期待したいところだ。
「これからは地元の事業者と手を組み、温泉ないまんじゅうモチーフの「温泉ないマーク」をあしらった商品などをどんどん開発していきたいと考えております。ゆくゆくは草津を代表するお土産となってくれれば幸いです」
最後にこんな質問もしてみた。
――群馬県草津市とは仲良しですか?
「実は6月に訪問させていただきました。草津温泉観光協会様には「温泉ないまんじゅう」をプレゼントさせていただきましたが、喜んでくださっていました。今後とも、両「草津」の知名度向上につながる取り組みを、手を取り合って行っていきたいと合意しています」
――群馬県の草津に伝えたいことがあれば教えてください
「あたたかい草津町の皆さんが大好きです。また伺いますので、今度は滋賀の草津にも遊びにきてください。そして、近いうちにコラボグッズを作りましょう!」
取材協力
一般社団法人 草津市観光物産協会
草津市観光物産協会インスタグラム
@kusatsu_tourism
文/太田ポーシャ