サバティカル休暇の導入事例

最後に、日本国内で実際にサバティカル休暇やそれに相当する制度を導入している企業の事例を6つ紹介する。
■事例1:LINEヤフー
インターネットサービス企業のLINEヤフー株式会社は、従業員のキャリア形成を目的に、サバティカル休暇を導入している。休暇期間は最長3ヵ月で、一定期間、支援金が支給される。導入したのは2013年で、比較的早期にサバティカル休暇を導入した企業のひとつである。
■事例2:ソニー
総合電機メーカーのソニー株式会社は、従業員のキャリア形成を目的に、サバティカル休暇に相当する「フレキシブルキャリア休職」を導入している。休暇期間は取得理由によって異なるが、最長5年と非常に長いのが特徴である。導入したのは2015年で、LINEヤフー株式会社と同様、比較的早期にサバティカル休暇を導入した企業のひとつである。
■事例3:ANA
航空サービス企業の全日本空輸株式会社は、従業員のキャリア形成やワークライフバランス促進を目的に、サバティカル休暇を導入している。休暇期間は最長1年。新型コロナウイルスの影響による業務量の減少が、導入の背景にあったとされる。
■事例4:リクルート
人材サービス企業の株式会社リクルートは、サバティカル休暇に相当する「STEP休暇」を導入している。休暇期間は最長28日間で、一律30万円の支援金が支給される。取得理由は問われない。
■事例5:ファインデックス
医療系システム開発企業の株式会社ファインデックスは、休暇中の成長および復職後の社内還元を目的に、サバティカル休暇制度を導入している。休暇期間は最長6ヶ月で、基本給の3割が支給される。復帰後は、休暇前と同じ条件で働ける。
■事例6:ぐるなび
グルメ情報サイト「ぐるなび」を運営する株式会社ぐるなびは、「プチ・サバティカル休暇」を導入している。休暇期間は連続した3日間で、支援金として2万円が支給される。取得理由は問われないが、新たな学びやキャリアの振り返りとして活用することが推奨されている。
まとめ
サバティカル休暇は、企業が一定の勤続年数に達した従業員に対して与える長期休暇のことである。従業員のメリットとして、「やりたかったことに挑戦できる」「心身をリフレッシュできる」などがある。一方、企業のメリットとして、「従業員に今まで以上の活躍を期待できる」「企業イメージが向上する」などがある。
日本ではまだまだ普及率の低いサバティカル休暇であるが、働き方改革やワークライフバランス、リカレント教育などの観点から導入する企業が増えてくると考えられる。そんなに長期間にわたって休みをとってもよいものなのか?――日本人の場合、このように考える人も少なくないが、ヨーロッパでは成功事例が多いため、いずれ日本でも浸透する日が来るかもしれない。
文/松下一輝(まつした いっき)
千葉大学大学院修了後、大手SIerに入社。通信キャリアを担当する部署にて、主に業務システムの設計・開発に従事する。業務を通じて徐々に説明スキルやプレゼンスキルが評価されるようになり、「伝えること」への関心が高まっていく。その後、フリーのライター/ジャーナリストに転身。現在、ITやビジネス、言語などの分野を中心に、各種メディアで記事を執筆している。