
■連載/ヒット商品開発秘話
2005年に誕生した資生堂の美白ケアブランド『HAKU(ハク)』。ブランド誕生から20年を迎えたこの2月に、看板商品である薬用美白美容液『HAKU メラノフォーカス』の10代目、『HAKU メラノフォーカスIV』が発売された。
発売が発表されるや否や、美容賢者(美容に関する専門知識や経験が豊富で、美容情報の収集・発信をしたり美容に関する悩み・疑問の解決に導いたりする存在)や美容系メディアが注目。発売からわずか1か月で美容雑誌3誌でベストコスメ(ブライトニング部門)を受賞し3冠を達成したほどだ。販売も好調で、これまでの累計出荷本数は63万本(本体、レフィル、限定品)を超える。
『HAKU メラノフォーカスIV』はこれまでの20年間のシミ予防研究の成果すべてを1本に搭載。先端のシミ予防研究の成果を結集し、頑固なシミにアプローチする。


計3種の薬用有効成分を配合
『HAKU メラノフォーカス』はブランドが立ち上がった2005年に誕生しており、以来リニューアルを繰り返してきた。発売から20年連続で美白美容液市場で売上ナンバー1(インテージSRI,SRI+ 美白美容液市場 2005年1月~2023年12月 HAKU 金額シェア)を継続しており、累計出荷数は2025年5月末時点で2181万本に達している。
10代目となる『HAKU メラノフォーカスIV』は、生きたシミのリアルタイム解析の結果から判明した頑固なシミができる原因にアプローチした。生きたシミのリアルタイム解析は2019年に構想。2023年から本格的に着手した。

新たな薬用有効成分としてグリチルリチン酸ジカリウムを配合。従来から配合されているm-トラネキサム酸と4MSKと合わせて、計3種の薬用有効成分が使われることになった。m-トラネキサム酸と4MSKは美白有効成分で、グリチルチリン酸ジカリウムは抗炎症成分になる。
『HAKU メラノフォーカスIV』はこれまでの20年間の知見を積み上げたものだという。資生堂にとって『HAKU』は美白研究の集大成。最新の知見を採り入れ、これまで積み上げてきた知見を反映し続けている。

「処方を1つでも変えると中身のバランスが崩れるので、組み直しが避けられません」
このように話すのは、資生堂ジャパンの濵田実佑さん(マーケティングソリューション部PRグループ)。処方が変わることから、数えきれないほど膨大な量の試作の検証をこなす必要があったという。

『HAKU』初の折り込みチラシを制作
これまでのシミ研究とは一線を画していることから話題性が高く、『HAKU メラノフォーカスIV』は発売前から多くのメディアで注目を集める。また、発売前に美容関心層向けにオンラインの体験会を実施。商品のクチコミを拡散してもらうことで、発売に向けて盛り上がる空気感を醸成することにした。
発売後は新たなミューズ(ブランドのイメージを象徴する女性)に選ばれたモデルの冨永愛さんを起用したテレビCMの放映をはじめ、美容系メディアやインフルエンサー、美容家とのタイアップなどの販促策を実施。中でも注力したのがサンプリングキャンペーンだった。その理由を濵田さんは「シミに悩まれている方は効果を自分で実感したいと思われているところがあるからです。新しくなったものをお試しいただき、興味を持ってもらうことをしました」と明かす。
また、店頭に足を運んでもらう施策としてリーフレットを制作。発売直後に実施したサンプリング時に一緒に配布した。店頭に足を運んでもらえれば美容部員から説明を受けられたりするので、購入に至る動線づくりにリーフレットを活用した。
店頭に足を運んでもらう施策としては新聞の折り込みチラシも活用した。新聞の折り込みチラシを活用した理由を濵田さんは次のように明かす。
「世代別にきめ細かくアプローチすることにしました。シミに本気で悩んでいる方が多いシニア層に対して有効な手段として、新聞の折り込みチラシを活用することにし、店頭への送客に結びつけられるようにしました」
キャッチコピーでソリューションを打ち出す
これまでの『HAKU メラノフォーカス』と比べると、新規ユーザーが獲得できているという。中身に対する期待値が高いことや効果が実感できたこと、新ミューズのインパクトのほか、「美白ケアの最高峰」「『頑固なシミ』に先回り。つくらない、増やさない。」というキャッチコピーの効果も大きかったとみている。とくに後者のキャッチコピーは、化粧品のものとしてはやや異質で、ソリューションを打ち出した。濵田さんは次のように話す。
「『HAKU』ではずっと『美容医療か美白美容液か』というキャッチコピーを使ってきました。これまでのキャッチコピーは情緒的なものが多かったのですが、今回はソリューションを落とし込んだものにしました。これまで美しいキャッチコピーをつくってきた自負がありますが、今回のキャッチコピーは従来になく攻めました」
前者「美白ケアの最高峰」もインパクトが十分。商品に自信があるから「最高峰」と言い切っているが、自信を持って言い切ったことで興味を持ってもらえた面があった。
取材からわかった『HAKU メラノフォーカスIV』のヒット要因3
1.20年の集大成にふさわしい
ブランド誕生から20年を迎えた2025年に生まれた10代目。2つの節目が重なりこれまでの集大成になった。集大成にふさわしく、これまで蓄積してきた知見に新たな知見を盛り込み、頑固なシミにアプローチする。20年分の研究成果を1本にすべて搭載した。
2.期待感を抱かせたコピー
情緒的なキャッチコピーが一般的な化粧品の中にあって、「『頑固なシミ』に先回り。つくらない、増やさない。」とソリューションを打ち出すキャッチコピーを採用。「美白ケアの最高峰」と合わせ、頑固なシミに悩んでいた人たちの期待を抱かせた。
3.誕生以来変わらない価格
本体価格は1万1000円。一見すると「高い」と感じてしまいやすいが、2005年の『HAKU メラノフォーカス』発売以来、価格は変わっておらず据え置かれたままだ。代を重ねるに従って知見が積み上がってパワーアップしていき、20年分の研究成果を1本にすべて搭載。価格以上のお得感と納得感が得られる。
生きたシミのリアルタイム解析は画期的だが、見方を変えればシミ予防研究は新しい扉を開けたところ。新しい扉を開け次なるステージに進んだが、まだ序章に過ぎないといったところだ。『HAKU メラノフォーカス』はこれからも、シミに悩む人たちのために最新の研究成果を取り入れながら進化を続けていく。
製品情報
https://www.shiseido.co.jp/haku/lineup/melanofocusiv/
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