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年間コスト5億円削減、チャージバックはゼロ!TSIがECサイトのリニューアルで実現した驚きの成果

2025.06.29

「NANO universe」や「MARGARET HOWELL」、「NATURAL BEAUTY BASIC」など多数のブランドを展開するTSIホールディングス(東京都港区、下地毅代表)は、今年、全34のブランドのモール型オンラインストアmix.tokyoをShopifyにリニューアルさせて話題になった。会員メンバーズサービスを統合し、お買い物の利便性を向上し、顧客体験を充実させながら、ECサイトの運営で約5億円と大幅なコスト削減を実現させて、注目を集めている。

難しいオンとオフの融合を目指すOMOの成功事例となったが、成功のポイントはどこにあったのか。TSI EC事業統括部副統括部長兼オペレーション部長の岸武洋さんに、聞いてみた。

ポストコロナにおけるアパレル業界の構造変化

――はじめまして!岸さん。まず最初にTSIについて簡単に教えてください。

岸さん 当社は、「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」をパーパスに掲げています。 2011年6月に設立して以降、「NANO universe」「NATURAL BEAUTY BASIC」「MARGARET HOWELL」など、ストリート系からゴルフ、レディースのハイエンド、カジュアル、メンズのセレクトショップまで、多種多様なブランドの集合体であることが特徴です。2025年度の売上は1,566億円、国内EC化率は27%です。

――ECサイトに本格参入したのはいつ頃で、どんな背景や理由があったのでしょうか?

岸さん グループとしてのEC開始は2005年頃です。世の中にファッションECが出始めた時期と同じ頃かと思います。店頭でのお客様との接点回数には限りがあり、その間を繋ぐ役割としてEC が機能していたと思います。

あくまで店頭比率の高い業界ですが、店頭でアプリを中心にお客様とつながりを作り、EC側でアプローチを繋いでいくという戦い方で成長してきました。 強みであるブランド力を活かして、ブランド個別のECサイトを優先してきたことが特徴で、多い時期には31のサイトを運営していました。

――mix.tokyoはNANO universe、NATURAL BEAUTY BASIC、MARGARET HOWELLを含む、全34のブランドのモール型オンラインストアをShopifyにリニューアルしています。その理由について教えてください。

岸さん 当社の構造改革「中期経営計画 TSI Innovation Program2027」の一環として、展開する49ブランドのうち34ブランドを統合したモール型オンラインストア「mix.tokyo」を、Shopifyを基盤とする新プラットフォームへリニューアルしました。 この移行により、従来分散していた11のブランドサイトを1つのECサイトに統合しています。

このリニューアルの背景には、ポストコロナにおけるアパレル業界の構造変化が1つの理由でもあります。消費者が店舗回帰する傾向が見られる一方で、デジタルチャネルでは競合が激化し、単独のブランドECサイトのみで収益を確保することが難しくなってきました。

こうした環境下で、mix.tokyoを 「強く柔軟なプラットフォーム」へと進化させる必要性が高まりました。

特にShopifyの採用は、以下の点を評価しての決断です。

・運用・開発コストの最適化
・将来的な事業環境の変化への柔軟な対応
・グローバルな標準技術を活用した拡張性

これにより、コスト効率の向上とデジタル基盤の強化を実現し、ECチャネルにおいても収益性とブランド間のシナジー創出を目指しています。 リニューアルされたmix.tokyoには、NANO universe、NATURAL BEAUTY BASIC、MARGARET HOWELLをはじめとする主力ブランドが集約されており、当社全体のDX推進と売上の最大化に向けた重要な基盤となっています。

月間数百万単位のチャージバックがゼロに

――統合した効果はいかがでしたか?

岸さん リニューアル後は、リニューアル前と比べ年間運用コストを約5億円削減しました。特にKOMOJUを導入したことが、大幅なコスト削減を導きました。

初期費用無料の上、3Dセキュアや不正検知サービス込みで月額費用は無料です。売上に応じた決済手数料のみの料金体系で、 他社と違い決済方法を追加することにもコストはかかりません。

コスト面以外でも、会員メンバーズサービスを統合した結果、顧客のデータ量が増えたことでターゲットしたマーケティング施策が打ち出せています。 また、お客様の獲得したポイントは、30以上のブランドで活用できるメリットが提供できることになりました。 

――今回はコスト削減だけでなく、KOMOJUなどのツールの選定したことから、事業者側の利便性をも向上させていますね?

岸さん はい、ShopifyやKOMOJUのツールの選定したことから、運営側からは利便性が向上したという声を聞いています。

KOMOJU採用の理由は、大きく2つあります。

1) Shopifyとの親和性・連携のしやすさ

KOMOJUはShopifyが日本に上陸した2017年から連携を開始しているため、両ツールの相性が良いです。 また、KOMOJUには英語を話す外国籍のエンジニアが多いことからShopifyのアップデートを他社よりも早く対応しています。開発スピードが早く質も良いので、テストが簡単に行え、リニューアル後も大きな問題は全くなかったです。

2)国内外の豊富な決済方法に対応

ビジネス拡張のため将来的に越境ECを見据えています。日本以外に、韓国、中国、香港、東南アジア、ヨーロッパ、ブラジルの多様な決済方法を提供しているKOMOJUは、魅力的でした。

KOMOJUを導入し利便性が向上したことは、セキュリティを許可しながら不正はしっかりブロックしてくれる点と、管理画面の使いやすさです。

リニューアル前は、決済検知専門のサービスを追加で導入していました。 週ごとのチューニングの作業が発生していましたが、月間数百万単位のチャージバックが発生していました。 KOMOJUを導入後、承認率は94-95%を保ちながら、チャージバックはリニューアルしてから一回も起こっていません。チャージバックが減り、セキュリティ管理作業は当社側に一切ないので利便性もセキュリティも向上しました。

日々受注対応するチームからは、KOMOJUの管理画面を活用することで受注後の業務が円滑に行えるという声を聞いています。 具体的には、返金回数が他社では一回のみと制限があったが、KOMOJUは返金回数が多いことや、返金代行を行なっていることから業務効率化につながっています。

また、検索項目が豊富であり、メールアドレスや氏名から同一ユーザの決済情報の一括検索が可能なので、お問い合わせ対応も迅速で回答できることは顧客満足度にもつながっています。

TSI のOMOの課題と今後

――EC改革により、OMOを成功に導くことができましたが、その一番の理由は何だと分析されていますか?

岸さん OMOはまだまだ道半ばだと考えています。今回のリニューアルにおいては、店頭でのオペレーションや販促物、トークスクリプトの準備等、丁寧に準備しながら店頭への落とし込みもEC統合推進チームが、直接店頭にご説明する機会を何度も作らせていただきました。

販売員のアプローチの回数や精度がOMOには不可欠だと改めて再認識できました。 当然、ブランドごとやECサイトを含む販売チャネルごとにサイロ化していた顧客データも統合し、今後デジタルアプローチの観点でも店頭との相互性を高めていきたいと考えています。

――オンオフの融合が難しいOMOですが、これから推進しようとする企業に、岸さんからアドバイスをお願いします。

岸さん OMO施策で重要なのは、売上への直接的な影響だけでなく、顧客体験の向上やブランドイメージの向上といった定性的な効果も考慮しながら、総合的に評価することだと考えています。

店頭で感じるリアルな感覚やお客様の声をしっかりと社内で吸い上げる仕組が必要ですし、店頭スタッフが高いモチベーションでおすすめできるデジタルチャネルにしていくことが重要だと感じています。

――最後に越境EC・グローバル展開を見据えたTSIの今後のEC戦略とは?

岸さん 2025年2月にリニューアルした「mix.tokyo」は、わずか11か月で多くの仕組みを入れ替え、サービスの統合を行いました。安定稼働を重視しながら、修正を繰り返しながら運用を進めてきました。徐々にそれも落ち着いてきています。ここからは海外展開を含めた、新たなスケールアップを視野に入れた次の段階へと移行しつつあります。 昨今のインバウンド比率の高まりもあり、しっかりと海外のお客様とのつながりを準備していく必要を感じています。東南アジア市場への越境EC展開を進めていきたいと考えています。

これに伴い、多言語・多通貨決済に対応し、各国のローカル決済に強みを持つKOMOJUへの期待も一層高まっています。今後は、現地向けECサイトにおいてもKOMOJUを活用することで、日本国内と同様に高いコンバージョン率と決済承認率を両立させることを目指しています。

また、東南アジア市場では「日本ブランド=高品質」の認知が強いことや、サイズ感も踏まえ現地向けに大きくローカライズする必要はないと判断しています。 当社では、今後の成長ドライバーのひとつとして越境ECを本格的に展開していく予定です。

――ありがとうございました!

株式会社TSI EC事業統括部副統括部長兼オペレーション部長 岸武洋さん
国内ストリートブランドにて、店舗スタッフ、物流、CRM、EC事業等、幅広く経験。 2015年に株式会社TSI ECストラテジーに入社し、グループ横断のデジタルマーケティングに従事し、ブランド毎の自社ECサイト構築やアプリ構築、店頭連動のオムニチャネル戦略を推進。 前期、グループとしての自社ECモール「mix.tokyo」を再構築。ECサイト、CRMの統合とシステムの入れ 替えに着手し、構造改革を実現。 今期より株式会社TSI EC事業統括部にてグループ全体のEC事業、デジタルマーケティング、オペレーション領域の更なる最適化を目指している。

文/柿川鮎子

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