
星のや・リゾナーレ・界・OMO・BEBという多彩なブランドとともに地域の魅力を独自性のある方法で伝えてきた星野リゾート。2025年春、6つ目のホテルブランドとして「LUCY(ルーシー)」を全国展開することが発表された。
LUCYは「これまで山に来ていなかった人」をターゲットにした山ホテルで、1施設目となる「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」は尾瀬国立公園の入り口である鳩待峠に誕生する。山小屋のような小さな宿ながら快適な宿泊体験を提供し、環境経営を推進してきた星野リゾートならではのサステナブルな施設だという。LUCY誕生の背景と、LUCY尾瀬鳩待の自然環境保全への取り組みを伺った。
自然観光市場拡大を目指して。星野リゾートが山ホテルを立ち上げた理由

1914年に星のや軽井沢の前身となる星野温泉旅館を開業し、111年の歴史を持つ星野リゾート。星野温泉旅館内に水力発電所を作るなど創業当初からサステナブルな取り組みを行なっており、1991年に星野佳路氏が社長(当時)に就任したあとはその動きを加速。
翌年には自然を大切にし、環境負荷を減らしながら経営活動を行う「環境経営」を経営ビジョンに取り入れ、特に創業の地である軽井沢では「自然エネルギーの活用」、「ゼロエミッション」、「エコツーリズム」を軸に環境経営を推進している。

そんな自然と密接に関わってきた星野リゾートが、以前より注目していたのが「国内における自然観光市場」。「日本は文化観光をずっと得意としていましたが、自然観光については諸外国と比べると遅れをとっている状況です。豊かな自然を活かした活動をより推進することができれば、自然観光市場が拡大するのではないかと、かねてから思っていました」と、LUCYマーケティング ディレクターの鎌倉寛人さんは話す。

そして2022年頃より自然観光市場の中でも特に「山岳エリア」における宿泊事業の可能性を検討し始めている中で、鳩待峠の山小屋をはじめ複数の山岳エリアにおいて宿泊施設の運営機会に恵まれたという。
そこで「山を拠点とした新たな滞在価値の創出」に向けた構想を本格的に始動。星野代表、LUCYマーケティングチーム、広報メンバー、他ブランドのマーケティングチームなど皆で議論を重ね、コンセプト作りを進めたそうだ。
そして山ホテル「LUCY」が誕生し、2025年9月1日(月)に1施設目となる「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」の開業が決定。ちなみに「LUCY」という名前は、19世紀英国の女性旅行家「イザベラ・ルーシー・バード」に由来している。

LUCYのコンセプトは「心揺さぶる山ホテル」。野生動物との出会い、突如訪れる静寂の時、暗闇の世界に太陽の光が差し込むその瞬間――そんな山でしかできないような感動体験を、登山愛好家ではなくとも楽しんでほしいという想いが込められている。

初心者が登山・ハイキングでハードルとなるのが「山小屋」。基本的に相部屋で、筆者も経験があるが、知らない人と布団を並べて寝るのは残念ながら快適とは言えなかった。その点を特に重要視し、「LUCY尾瀬鳩待」では快適な客室を用意。ドミトリーでも、しっかりとプライベートな空間を保てるよう工夫されている。
鎌倉さん「山小屋は登山者の拠点として役割を果たしているが、登山を目的としない旅行者が、山岳リゾートや山の滞在を楽しむための宿泊施設という側面では、必ずしも満足を得られる状況になっていないという話が議論としてありました。星野リゾートとして運営するのであれば、快適ではない部分は払拭し、その先にある山での感動体験を提供できればという想いで、“心揺さぶる山ホテル”のコンセプトが確立しました」
LUCY尾瀬鳩待の宿泊料金は1泊1名11,550円?(ドミトリー、2025年6月5日筆者調べ)。山デビューをするような人でも気軽に宿泊できる、リーズナブルな価格設定も魅力だ。2025年6月2日(月)より予約をスタートしたが、開始直後に9月・10月の予約はほとんど埋まり、消費者の期待の高さが伺える。
旅行者に山での感動体験を提供しながら、環境保全の両立を目指す

LUCY尾瀬鳩待の総支配人を務めるのは、台湾「星のやグーグァン」前総支配人の福井ゆう子さん。LUCY尾瀬鳩待を運営するにあたって「旅行者が自然を満喫すること」、そして「環境保全」の両立を目指したいと話す。
ソフト面では自然環境に配慮した尾瀬の楽しみ方や歴史・背景を、これまで星野リゾートが培ってきた経験を元に、しっかりとゲストに伝えていく取り組みを実施予定。尾瀬に精通したガイドやLUCY尾瀬鳩待のスタッフが尾瀬の魅力を伝えながら、山ならではのルールも伝え、不安なく初心者でも楽しめるように工夫するという。
福井さん「尾瀬は水芭蕉で有名ですが、約1,270種の植物が生息し、そしてトンボだけでも約40種もいるとの言われもあり、豊かな動植物が生息するエリアです。LUCY尾瀬鳩待は25室、最大でも44名のお客様が宿泊できる小さな規模感なので、尾瀬の魅力や価値をみなさん一人ひとりにお伝えできればと思います」

そしてハード面では元々あった山小屋や休憩所の敷地内で収まるよう、環境に配慮しながら建設。新しく木を切り開くのではなく、今ある自然を保ちながら建て替えを行なっている。尾瀬のキャリング・キャパシティにも配慮した、小規模な施設だ。
また、LUCY尾瀬鳩待は星野リゾート初となる「オール電化」のサステナブルな施設となっているのも大きな特徴。エコキュートやヒートポンプ空調を設置してエネルギー消費量を減らすことで、CO2削減にも繋げたいと、福井さんは話す。ちなみに非常用自家発電機があり、停電や自然災害などの場合は電源確保できる設備も備えているそうだ。
環境に配慮しながら、快適な客室とともに山の魅力を伝える新ブランド「LUCY」。尾瀬は有名ではあるが、尾瀬国立公園の入山者数は近年減少傾向にあり、今回のLUCY尾瀬鳩待オープンをきっかけに増加傾向へと転じるのではないかと期待される。
また、消費者にとっては、温泉でも、都市観光でもなく、「山に行こう」という旅行目的の新たな選択肢が加わることだろう。LUCY尾瀬鳩待は、現在建設中。どんな面白い体験ができるのか――9月のオープンが楽しみだ。
・LUCY
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/brands/lucy/
取材・文/小浜みゆ
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