
Excelで行うABC分析の基本手順や活用法、注意点をわかりやすく解説。売上データをもとに商品をA・B・Cに分類し、在庫管理や販促戦略に活かす方法を具体例付きで紹介。分析時の落とし穴もカバー。
目次
売上や在庫の効率的な管理を目指すなら、「ABC分析」が強力な武器になる。この記事では、Excelを使ったABC分析の基本的な仕組みや計算方法、実務での具体的な活用事例、さらに分析時の注意点まで幅広く解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
ABC分析とは
売上や在庫データを基に、商品の重要度を3つのグループに分ける分析手法。業務の優先順位づけやリソース配分に役立つ。
Aランク:売上の約70%を占める主力商品
Bランク:次点の売上層。将来的に育成対象になることも
Cランク:売上が少なく、在庫見直しの対象になりやすい
この分類は「パレートの法則」に基づいており、少数の商品が大きな売上を生む傾向があることを示している。
Excel(エクセル)でABC分析をする方法
ABC分析はExcelを使うと簡単にできる。ここでは、基本の計算と手順をわかりやすく説明する。手順は以下の通り。
- 売上データを用意する
- 「売上÷合計」で構成比を計算する
- 累積構成比を計算する
- ABCのランクをつける(A:累積70%以下 B:70%超〜90%以下 C:90%超)
ABC分析の活用事例と注意点
ABC分析は売上や利益の重要なポイントを見つけるための手法だ。結果の読み方やExcel作業の注意点を押さえて、実務に役立てよう。
■分析結果の見方と実務での活用事例
ABC分析でA・B・Cのランク分けをしたら、それぞれのランクをどう活かすかが重要になる。
Aランク商品は売上の大部分を占めるため、欠品しないよう在庫管理を徹底し、販促や広告を重点的に行うことが効果的。例えば、人気のスマホアクセサリーがAランクなら、販売機会を逃さないように在庫を多めに用意し、SNS広告も集中的に投下する。
Bランク商品は将来的にAランクに成長する可能性がある。販売戦略やセット販売、キャンペーンの対象にして伸ばすことを検討する。例えば、シーズン限定の商品や新商品はBランクになることが多いが、販促を工夫して売上を増やせることが多い。
Cランク商品は売上に占める割合が少なく、在庫や管理コストが割に合わないこともある。場合によっては廃番や取り扱い見直しの対象にすることで、無駄なコスト削減につながる。例えば売れ行きが極端に少ない商品の注文を抑制したり、取扱店舗を限定する方法がある。
■ランクの区切りはあくまで目安
ABC分析では累積構成比で「A=70%」「B=20%」「C=10%」という区切りがよく使われるが、これはあくまで一般的な指標だ。業種や目的によって適宜調整が必要だ。
- 利益率を重視したいなら売上ではなく粗利を基にABC分析を行う
- 在庫管理が重要な場合は、売上だけでなく商品の回転率を考慮に入れることもある
- 目的に応じてランクの割合を変えたり、DランクやEランクを追加することもある
このように数字にとらわれすぎず、現場の状況や目的に合わせて使うことが成功のポイントだ。
■ABC分析をする上での注意点
ABC分析は便利な手法だが、結果をうのみにせず、状況に応じて柔軟に判断することが重要。主な注意点は以下の通り。
- 一時的な売上増に惑わされない
- 季節変動を考慮する
- 利益率とのバランスを取る
- 分析は定期的に見直す
まず、一時的な売上の増加には注意が必要。メディアで取り上げられた商品や、キャンペーン中の目玉商品などは一時的に売上が伸びることがあるが、それが今後も継続するとは限らない。短期的な動きに左右されず、長期的な傾向を見極める視点が大切だ。
また、季節によって売れる商品も異なるため、集計する期間によってランクが変動することがある。たとえば、夏だけ売れる冷感グッズは冬にはCランクに見えるかもしれない。商品の特性や売れる時期を考慮して分析結果を見ることが重要だ。
さらに、売上金額だけに注目すると、実際の利益や効率が見えにくくなる。利益率が低い商品や在庫回転率の悪い商品をAランクにしてしまうと、かえって経営の非効率を招くこともある。分析する軸を複数設けると、より現実的な判断ができる。
最後に、市場の変化や消費者ニーズの移り変わりを考慮し、ABC分析は一度きりで終わらせず、定期的に見直すことが大切だ。環境が変われば、Aランクだった商品がBやCに落ちることも十分あり得る。
単なる数字の並びではなく、「なぜこの結果になっているのか?」という視点を持つことで、ABC分析はより効果的な経営判断につながる。
まとめ
この記事では、Excelを使ったABC分析の基本から、実務での活用方法、注意点まで解説した。最後にABC分析の重要ポイントをおさらいしておこう。
ABC分析とは売上データをもとに商品をA・B・Cに分類し、重要度を明確にする方法。
- Aランク:売上の多くを占める主力商品
- Bランク:成長可能性のある商品
- Cランク:売上が少なく見直し対象となる商品
ABC分析の手順
- 売上データを用意
- 「売上 ÷ 合計」で構成比を計算
- 累積構成比を出す(前の累積+現在の構成比)
- 累積構成比に応じてIF関数でランク分け
実務での活用例
- Aランク:欠品防止・広告投下など、重点管理対象
- Bランク:育成・キャンペーン対象
- Cランク:在庫削減や取り扱いの見直し候補
注意点
- 一過性の売上増(例:キャンペーンやSNSバズ)に惑わされない
- 季節変動や商品サイクルを加味する
- 利益率や回転率など他の指標も併用する
- 定期的に分析を見直す
ABC分析は数字を見るだけでなく、「なぜその結果になったか」を考えることが重要。定期的にデータを更新し、状況に合わせて柔軟に使うことで、より実践的な意思決定が可能になる。
構成/編集部