
仕事を探す時に求職者が検索する時給や賃金である「検索時給・検索賃金」を調べることで、転職希望者や求職者が一般的に求めている賃金の水準がわかるという。
世界的な求人サイト『Indeed(インディード)』では、求職者が仕事探しをする時に職種や雇用形態だけでなく、時給や年収など具体的な賃金額をキーワードとした仕事検索が行なわれており、これを踏まえてIndeedの日本法人であるIndeed Japanは、「検索時給」のデータ分析した結果を公開した。
このデータ分析によれば、一般的に求職者が希望する賃金の水準検索時給は平均1539円で、6年間で22.3%も上昇して昨年からは2.1%上昇していたという。
検索時給は6年間で22.3%も上昇!

2025年4⽉に『Indeed』上で検索された「検索時給」の平均値は1539円で、2019年4⽉の1258円から6年間で22.3%(281円)、昨年4⽉の1507円から2.1%(32円)も上昇している。
⼈⼿不⾜や継続的な物価⾼を背景に賃上げ機運が高まっており、2025年5⽉時点のパート従業員の賃上げ額(時給)も前年⽐5.9%の68円で、求職者が⾼賃⾦を求める傾向が出ている。
日本政府は、2030年代半ばまでに最低賃⾦を1500円に引き上げることを⽬標に掲げていたが、予定を前倒しにして2020年代の実現を⽬指すとしている。検索時給の平均値はすでに1539円に達しているので、求職者の希望時給額は日本政府の考える最低賃金の⽔準を超えている。
最低賃⾦と検索時給の差は484円!
国が定める最低賃⾦は、2025年4⽉時点で全国加重平均額が1055円で、検索時給の平均値1539円との差は484円だった。2024年度の最低賃⾦の平均引き上げ額は過去最⾼の51円で前年の全国平均1004円から5.1%も上昇している。
検索時給の上昇額が32円(2.1%上昇)だったので、最低賃⾦と求職者の希望時給額を⽰唆する検索時給の差は、昨年の503円よりも19円分も縮まっていた。
検索時給はやはり三⼤都市圏が⾼い傾向だった!


希望する時給⽔準についての地域的な特徴を明らかにするために、勤務地として検索される都道府県別に検索時給の平均額を⽐較すると、2025年(1⽉~4⽉)の検索時給平均額では⾼い順に東京都(1644円)、⼤阪府(1599円)、北海道(1589円)、神奈川県(1583円)、千葉県(1542円)という結果だった。
上位4位までは昨年と同様の結果だったが、2024年(1⽉~4⽉)に6位だった千葉県が5位にランクアップしていた。昨年も今年も検索時給の上位は三⼤都市圏が中⼼だが、これは⽣活費の⾼さや企業間の⼈材獲得競争がほかの地域より激しいことで賃⾦⽔準が⾼くなり、連動して⾼賃⾦を求職者が期待するためだろう。
検索時給平均額の上昇額は、2024年(1⽉~12⽉)と2025年(1⽉~4⽉)の検索時給平均額を都道府県別に比較すると、最低賃⾦の上昇額51円を上回っていたのは14県だった。ちなみに前年からの都道府県別上昇額が大きかったのは、⻘森県(+154円)、⻑野県(+148円)、⿃取県(+134円)、⼤分県(+114円)、岩⼿県(+113円)という順位だった。
最低賃⾦と検索時給の差額がもっとも⼤きいのは北海道!

最低賃⾦と検索時給の差額を調べると、その差が⼤きい順に北海道(579円)、熊本県(576円)、⼭⼝県(524円)、⼤分県(512円)、沖縄県(504円)となった。全国平均の最低賃⾦と検索時給の差である484円を上回っているのは6道府県で、差額がもっとも⼤きい北海道と次に⼤きい熊本県は、昨年からさらに差額が拡大したという。
北海道は半導体メーカーの半導体製造⼯場建設が進んでおり、熊本県は半導体製造⼯場建設が完了して量産のフェーズに入って半導体関連の物流需要への対応を⽬的に物流施設の建設が進んでおり、新たな産業活性化の勢いが増しているという。最低賃⾦と差が開いている⼀因としては、雇用に対する期待の⾼まりから⾼時給への関⼼を牽引している可能性が考えられるという。
Indeed Hiring Lab エコノミストの青木雄介氏は、今回の分析について「検索賃金の平均値は2024年2月から1500円を超えるようになり、検索時に使われる金額の「区切り」の影響(仕事検索時は、1500円、1600円、などの区切りの良い数値が使われやすい)もあり、2024年2月以前と比べると上昇率はやや落ち着いてきてはいるが、それでもインフレの継続的な影響を受け、2025年4月時点でもなお検索賃金は1539円と着実に上昇し続けていることがわかります。
都道府県別に見れば、検索金額そのものが大きいのは、物価が相対的に高く労働市場での競争の激しい三大都市圏が中心です。一方で検索賃金の上昇額は地方の方が大きい傾向にあり、昨年と比べて上昇額の大きい都道府県の顔ぶれも変わってきています」とコメントしている。

世間の物価高騰などもあり、求職者の求める「検索時給」が上昇傾向にあるのは間違いないだろう。今回の調査では、地方の方が「検索時給・検索賃金」の上昇額が大きい傾向があったので、今後は地方での実際の時給や賃金が上がっていくような施策が必要になってくるだろう。
「求職者が検索する時給(検索時給)の動向調査」概要
調査‧分析対象期間:2019年1⽉~2025年4⽉
調査‧分析⽅法:検索時給の加重平均値の算定⽅法
・10円刻みの値を賃⾦帯として、賃⾦帯ごとに検索数および賃⾦検索数全体に占めるシェアを計算。各賃⾦帯と上記シェアの掛け合わせで算出。
※本分析では、⽇本でIndeed上で検索された賃⾦に関連するキーワードのうち、時間給のみの検索を分析対象としており、⽉給や年収の検索は分析対象外。
調査‧分析主体:Indeed Japan
構成/KUMU