アドボカシーという言葉の意味が、まったくわからないという方もいるのではないでしょうか。アドボカシーとは、擁護したり代弁したりする活動を指します。今回は、アドボカシーの意味や広がった背景、行われている分野などについて詳しく解説します。
目次
アドボカシーとは
アドボカシー(advocacy)とは、「擁護」や「支持」と訳される言葉です。なんらかの理由で声を上げにくい立場にある人に代わって意見を発信し、その権利や利益を守り、制度や意識の改善を促すための行動を指します。
語源はラテン語の「voco(声を上げる)」に由来し、福祉、教育、医療など幅広い分野で活用されています。
参考:デジタル大辞泉
■アドボカシーが広がった背景
アドボカシーが広がった背景として、社会的に弱い立場にある方の声が届きにくいという実態が挙げられるでしょう。
貧困や差別のなかで暮らしていても、自身が不利益を受けていること自体を知らないケースも少なくありません。また、たとえ不当な状況に気づいていても、声を上げる手段や機会が見つからないこともあります。
とくに高齢者や障がい者、子どもなどは、知識や行動力が十分でなかったり、自らの意見を社会に伝えることが難しかったりする傾向にあります。こうした人々の声を代弁し、制度や社会の仕組みに働きかけるための手段として、アドボカシーは多くの分野で取り入れられるようになってきました。
■アドボカシーが注目を集めたきっかけ
日本でアドボカシーが注目を集めたのは、2005年に行われた「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンがきっかけです。
この運動は、2000年の国連サミットで掲げられた「貧困の撲滅」や「人権の尊重」などの国際的な目標を背景に生まれた取り組みの一環でした。参加者が腕にホワイトバンドを身につけて貧困問題への関心を呼びかけ、芸能人やスポーツ選手などもキャンペーンに参加したこともあり、注目を集めました。
当初はアドボカシーという言葉自体の認知度は低かったものの、この活動を通じて、弱い立場にある人々の声を代弁し支援するという姿勢が徐々に広がっていきました。
アドボカシーが行われている分野
アドボカシーが行われているのは、主に以下の5つの分野です。
- 福祉・介護
- 医療・看護
- 子ども関連
- 企業活動
- 社会活動
それぞれの分野において、アドボカシーがどのように行われているかを解説します。
■福祉・介護
福祉や介護の現場では、自らの意思をうまく伝えられない高齢者や障がい者、認知症の方などが数多く存在します。福祉・介護の現場におけるアドボカシーとは、そうした人々の代わりに、援助者が本人の立場に立って意思や権利を伝え、必要な支援につなげることを指します。
また、サービス利用者が置かれている状況の問題点を見つけ出し、適切なサービスへの橋渡しをすることで解決する仕組み作りも、福祉・介護の現場におけるアドボカシーに求められる役割です。そのためアドボカシーは、ソーシャルワーカーに期待される、重要な援助技術と位置づけられています。
■医療・看護
医療や看護の分野でも、アドボカシーは重要な役割を果たします。病気や障がいにより、自分の意見や希望を十分に伝えられない患者に代わり、看護師や医療従事者がその意思をくみ取り、最善のケアや治療につなげる働きが求められているためです。
たとえば、患者が持つ適切な医療を受ける権利や病院や医師などを選択する権利は、看護者がその希望を伝えることで、守られます。近年では、倫理的な価値観を重視する医療の現場で、アドボカシーの視点がよりいっそう重視されつつあります。
■子ども関連
子どもを取り巻く環境にも、アドボカシーは欠かせません。子どもは本来、「子どもの権利条約」によって意見表明の自由や保護を受ける権利が認められていますが、現実にはその声が社会に届きにくい立場に置かれがちです。
児童虐待の相談件数が増加している実態からも、その深刻さがうかがえます。こうした背景から、子どもの思いや希望を代弁し、支援につなげるアドボカシーの重要性が高まっています。児童虐待のほかにも児童労働や児童ポルノなどから子どもを守るために、国や自治体をはじめすべての人が、アドボカシーを実践する立場の「子どもアドボケイト」として行動する必要があるといえるでしょう。
■企業活動
企業活動のなかでもアドボカシーは重要な戦略として活用されており、とくに注目されているのが、マーケティングに取り入れることで、顧客との信頼関係を構築する手法です。
また、企業におけるアドボカシーは、顧客のみに使用する言葉ではなく、組織内部に対しても使われることがポイントです。従業員が自社の商品・サービスを支持することで、内側から外に向けてブランドを提唱し、やがて社外へと広がっていきます。
■社会活動
環境問題や医療・介護、教育格差、災害支援、ジェンダーの不平等などの課題に市民が主体的に取り組む活動のなかで用いられるのが、「市民社会アドボカシー」です。
個人の声が届きにくい状況でも、NPOや市民団体、地域ネットワークなどと連携して行動することで、政策提言や社会の意識改革につなげる力が生まれます。アドボカシーは、政治や経済、社会を変革する原動力となるのはもちろん、市民社会を強化するために欠かせない活動といえます。
アドボカシーが行われている形態
アドボカシーは、主に以下の5つの形態で行われているといえるでしょう。
- 政策提言
- 権利擁護
- ロビー活動
- キャンペーン・イベント
- マーケティング
それぞれの内容を解説します。
■政策提言
政策提言とは、特定の課題を周知したうえで、解決のための政策立案や既存案の見直しなどを政府に提案することであり、アドボカシーの代表的な手法です。
たとえば、2021年に制定された重要土地等調査規制法では、市民の権利制限につながるとの懸念から、国際NGOが政府に対し法案の撤回を求める運動を展開しました。このように、アドボカシーは、社会のルールそのものに働きかける重要な役割も果たします。
■権利擁護
権利擁護とは、自らの意思を十分に伝えることが難しい人に代わり、その人が本来持つ権利を守り、必要な支援へとつなげる行為を指します。
たとえば、介護や医療の現場で、高齢者や障がいのある方が不便や不安を感じていても、それを口にできないケースは少なくありません。そのようなとき、介護士や看護師などが本人の思いをくみ取り、声を上げる役割を担うことがアドボカシーの活動です。
また、児童養護施設などで暮らす子どもたちの悩みを受け止め、解決に向けて支援することも、権利擁護の一例です。
■ロビー活動
ロビー活動(ロビイング)とは、政治家や行政機関に対して働きかけ、特定の課題について理解や支援を求める行動を指します。この言葉は、もともとアメリカの議会で議員と院外者が面会した「ロビー(控室)」に由来しています。
企業や業界団体が自身の利益を守るために行うロビー活動とは異なり、アドボカシーにおけるロビイングは、公共の利益を目的としている点が特徴です。
■キャンペーン・イベント
市民に向けたキャンペーンやイベントの開催も、アドボカシーの活動形態の1つです。たとえば、街頭での啓発活動やチャリティイベント、SNSを活用した情報発信などが該当します。
政策提言やロビー活動のように直接的に行政へ働きかける方法と違い、一般の方に対して社会課題への関心を促し、共感を広げて世論を形成することを目的としています。
■マーケティング
アドボカシー・マーケティングとは、顧客の立場に寄り添い、信頼を重視した関係構築を通じて企業の価値を高めるマーケティング手法です。
単なる商品販売にとどまらず、顧客の声を積極的に取り入れ、商品やサービスの改善につなげていく姿勢が特徴です。
たとえば、利用者の不満や要望を製品開発に反映することで、満足度の向上と企業への支持を同時に獲得できます。また、顧客との信頼関係が築かれることで、SNSや口コミを通じた自発的な広報効果も期待でき、企業の評判やブランド力の向上にもつながると考えられます。







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