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宅配便業界3位の日本郵便に許可取消命令…これから起こり得る悲劇のシナリオ

2025.06.22

2025年6月5日、国土交通省は、日本郵便に対し、「一般貨物自動車運送事業」の許可取り消し方針を通知した。これにより「ゆうパック」の配送遅延といった物流網が混乱するリスクがある。

配達員の飲酒チェックなどの「点呼」が適切に行われていなかったのが許可取り消しの理由だが、なぜそこまでの事態となってしまったのか。

背景には、ガバナンスやコンプライアンスといった企業統治の根深い課題が浮かび上がる。

日本郵便の是非はさておき、この事例を教訓にして組織での不祥事防止をしたい。

ビジネスパーソンとして知っておくべき今回の事象の詳細や、背後にある課題について一緒に考えてみよう。

何が起きたのか? 日本郵便の行政処分の内容まとめ

出典:大和ホールディングス

日本郵便は、大和運輸、佐川急便に次いで、宅配便市場の業界3位。大手企業として物流業界への影響は大きい

出典:日本郵便

(1) 処分内容:一般貨物自動車運送事業の許可の取り消し。5年間の事業運営と許可再取得の禁止。処分の段階としては最も重い行政処分であり、大手業者としては異例中の異例である。
(2) 処分理由:義務付けられた点呼(運転者安全確認)を組織的に行なわずまた記録を偽装した。日本郵便の内部調査対象3,188局のうち、2,391局(75%)で点呼が不適切だった。(上掲プレスリリース)
(3) 法的根拠:貨物自動車運送事業法第33条による
(4) 対象資産:約2500台のトラックやワンボックスカー。

これらの車両は、個人宅への配達を行なう車両ではなく、各郵便局から地域の配送拠点(ハブ)への輸送や、配送拠点間での輸送を行なう車両である。日本郵便は、「郵便物の配送不能が起きたり、ゆうパックが廃止されたりすることはない」と発表しているが、影響の全容は未知数だ。尚個人宅への配達を行なう車両は、今回の処分対象外で、同社は約25,000台の軽トラック等の車両を保有している。

一般貨物自動車運送事業とは?

出典:北海道トラック協会

不特定多数の荷主から依頼を受け、有償で貨物を運送する事業のこと。この事業を行なうには国土交通大臣の許可が必要となっている。

なぜ、不適切な点呼や記録の偽装が起きたのか?物流の2024年問題の影響?それとも……

日本郵便の2025年4月23日付リリースによれば、発生原因は、(1)プロ意識の欠如、(2)ガバナンスの不足、(3)職場のマネジメント課題、(4)点呼方法のマニュアル誤りの4点をあげている。

また、再発防止策は、この原因に手を打つ形で、意識改革やガバナンス強化、点呼のデジタル化をあげている。

原因や再発防止策は、本当にこれらで足りているのだろうか。

ちょうど、「物流の2024年問題」の渦中で、人出不足にある中、コスト削減や時間的制約に起因した「業務効率化」のプレッシャーが、不適切な点呼や記録の偽装を発生させたともいえそうだ。

「物流の2024年問題」とは、働き方改革関連法に基づき、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働時間に年間960時間の上限が設けられ、これにより物流業界全体で起こる様々な問題の総称である。

ドライバーの労働時間減少により輸送能力が低下し、また、国土交通省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によれば、労働人口そのもの減少により、2030年度には輸送能力が約34%不足する可能性がある。

しかし、物流の2024年問題に直面しているのは日本郵便だけではなく業界全体である。大手物流企業のヤマト運輸や佐川急便では、不適切な点呼や記録の偽装が起きていない。

違いはやはり、完全な民間企業として競争を勝ち抜いてきた出自があるヤマトや佐川に対して、旧国営企業の文化や意識が根強く残っている点だ。

つまり、「守るべきもの」ではなく、時には「形式を整えればよいもの」と捉えがちな甘えや特権意識的な視点が、経営層や現場に残っていたと考えるのが自然だし、この根強い文化を変えていかねば、類似の問題は今後も起こり続ける。

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