
免疫を鍛えるべきは大人と思われてきたが、6月17日、キリンビバレッジから子ども向けのプラズマ乳酸菌入り飲料が発売された。商品キャラクターは小学館の漫画雑誌『月刊 コロコロコミック』編集部とコラボ開発という力の入れようだ。
コロナ禍で子どもたちの免疫が低下している?
プラズマ乳酸菌をご存知だろうか? キリングループが2010年に世界で初めて発見した免疫の“司令細胞”を活性化する乳酸菌だ。
人体には外部から病原体になる細菌やウイルスが侵入してくると、それらを退治するための防御システムが備わっている。その主役が免疫細胞で、その細胞たちを司るのが「プラズマサイトイド樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell。以下pDC)」だ。キリングループが発見した乳酸菌はpDCを活性化することから、「プラズマ乳酸菌」と名づけられた。
プラズマ乳酸菌を使用した飲料は2012年に発売され、2017年にはキリングループから「iMUSE」が発売されている。2020年には免疫ケアを謳った機能性表示食品に認められ、その後、市場は拡大している。その免疫ケア市場に子ども向けの「キリン つよいぞ!ムテキッズ」が登場した。
「キリン つよいぞ!ムテキッズ」はヨーグルトテイスト。1パック(125ml)あたりプラズマ乳酸菌が500億個、鉄分1.5mg含む。ちなみに「キリンiMUSE」500mi入りに含まれるプラズマ乳酸菌は1,000億個。125ml(紙容器)3本パック 330円(税込)。本州(東北を除く)・四国のイオングループ内一部企業・エリアで発売。(C) すけまる/小学館 (C) KIRIN ムテキッズプロジェクト
それにしても、子どもに免疫ケアが必要なのか!? と素朴な疑問が沸く。キリンビバレッジマーケティング部の遠藤楓さんによると、子どもの免疫ケアが注目されてきた理由のひとつがコロナ禍の影響だ。2020年の春から数年、極端に外出の機会が減った影響で、子ども時代に感染するべき菌やウイルスに感染せず、免疫が十分についていないことが心配される。
商品化の背景には少子化や共働き世帯の増加もある。親が子どもの健康にかける関心は高まる一方であり、さらに子ども一人当たりにかけるお金も上がっているそうだ。
そして共働き世帯の増加により、育児に関わる時間の効率化、短縮化が進む。しかし子どもにはバランスのとれた食事を与えたい。「飲料に対しておいしさだけでなく栄養価が求められています。また、水筒に麦茶を詰めて持たせるより飲みきりサイズの飲料を渡すほうが簡単です。手軽でおいしく摂取できる栄養補助ニーズが高まっているのです」(前出・遠藤さん)
こうした時代背景の中、キリングループは子ども専用プラズマ乳酸菌入り飲料の発売を機に、「今後、子ども向け飲料のナンバーワンブランドを目出す」としている。
とはいえ、世の中、少子化が続く。先日、2024年の子どもの出生数が70万人を割ったと報道されたばかり。2025年4月1日時点での15歳未満の子ども人口は前年比35万人減の1,366万人と減少の一途を辿る。そんな時代に、子どもの飲料市場は広がるのだろうか? という疑問に対しては、「今後はさらに、親にも子ども自身にも、健康のために飲料を選ぶという行動が広がっていくと予想されます。子ども人口が減っても市場拡大が見込めます」(キリンビバレッジ)。
乳幼児飲料市場の状況。2024年の子どもの人口は2020年比93%だが、飲料の市場規模は2020年比104%と増加した。
キャラクターが漫画と乳酸菌飲料で連動しながら活躍するという仕掛け
注目してほしいのは、「キリン つよいぞ!ムテキッズ」のパッケージだ。4種類のキャラクターは、小学館の漫画雑誌『月刊 コロコロコミック』編集部と共同開発したものだ。また、6月発売の『月刊コロコロコミック』7月号から、漫画「つよいぞ!ムテキッズ」の連載がスタートしている。
人気キャラクターが商品パッケージに登場する限定品やプレミアムグッズはよく見かけるが、キャラクターが漫画と商品で同時発生するのは珍しい。
キリンビバレッジマーケティング部小西裕太さんは、「コロコロさんは子どもの“好き”を知り尽くし、子どもの心をつかむプロ。保育園や学童保育などで『コロコロコミック』には親しんでいるお子さんが多いことも魅力でした。キャラクター開発には1年以上かけて取り組みました」と話す。
キャラクターは4人。サッカー選手、パティシエ、エンジニア、ダンサーと、今どきの子どもの憧れの的が選ばれている。
「今後も子どもたちの憧れの的になるキャラクターが登場する予定です。『ムテキッズ』のキャラクターと漫画で子どもの夢を後押ししていきたい」(前出・小西さん)
なるほど、ムテキッズのキャラクターを見ていれば、現代の子どもの憧れや興味が垣間見えるかもしれない。ムテキッズの活躍は子ども向け飲料市場だけでなく、漫画業界でも注目だ。
「キリン つよいぞ!ムテキッズ」発表会の記念撮影。キリンビバレッジマーケティング部長の鈴木郁真さん(左)、遠藤楓さん(右)とムテキッズたち。
取材・文/佐藤恵菜